オロプーシェ熱
更新日 (last updated):2025年5月23日
概要
オロプーシェ熱はオロプーシェウイルスによって引き起こされる節足動物媒介性の急性熱性疾患である。主にヌカカ(Culicoides paraensis)に刺されることで感染する。症状は軽症例が多く、後遺症も少ない。
病原体
オロプーシェウイルスはブニヤウイルス目ペリブニヤウイルス科オルソブニヤウイルス属の1本鎖マイナス鎖RNAウイルスである。
疫学
1955年にトリニダード・トバゴで初めて分離・確認され、以降中南米各地で流行しており、欧米でも輸入例が確認されている。
感染経路
主にヌカカに刺されることによりヒトに感染する。ネッタイイエカからもウイルスが分離されている。都市型と森林型の感染環があり、都市型サイクルでは主にヒトと媒介昆虫間でウイルスが循環している。森林型サイクルについては不明な点も多いが、ナマケモノやマーモセット、齧歯類等の動物と媒介昆虫間での感染環の存在が示唆されている。
臨床像
潜伏期間は3から12日間程度(通常4から8日)。発熱、頭痛、倦怠感、関節痛、筋肉痛などの症状が数日続き、多くは7日以内に回復する。約6割の患者が、寛解後に再度同様の症状を発症する。まれに髄膜炎や脳炎を発症し重症化することがあり、死亡例も報告されている。
病原体診断
血清や髄液からのウイルスの分離、ウイルス遺伝子の検出、血清学的検査などによる。
治療
特異的な治療法はなく、対症療法が中心である。
予防法・ワクチン
媒介昆虫からの吸血を避けることが重要である。忌避剤の使用や肌の露出を避けるといった対策が推奨される。承認されたワクチンはない。
法的取り扱い
感染症法、学校保健安全法では定められていない。