破傷風
更新日 (last updated):2025年5月23日
概要
破傷風は破傷風菌(Clostridium tetani)の産生する神経毒素によって引き起こされる感染症である。破傷風菌の芽胞が創傷部位から侵入し、神経毒素を産生することで、筋肉のけいれんや硬直が起こり、重症化すると死に至ることがある。
病原体
原因菌は、破傷風菌(Clostridium tetani)である。破傷風菌は芽胞を形成し、土壌などの環境中に広く存在している。破傷風菌は嫌気状態下で発芽・増殖し、神経毒素を産生する。
疫学
日本では戦後、年間1,000例以上の報告があったが、1952年の破傷風トキソイドワクチンの導入、1968年の三種混合ワクチン(DPT)の定期接種化によって報告数は激減した。現在はワクチン接種歴のない高齢者を中心に年間約100例の報告がある。衛生管理が不十分な環境での分娩が原因となる新生児破傷風は日本では1995年以降報告はないが、世界では未だ公衆衛生上の問題となっている国がある。
感染経路
主な感染経路は、外傷から土壌中の芽胞が侵入することによる。
臨床像
潜伏期間は、3から21日(平均10日)で、新生児破傷風の場合は、生後4から14日(平均7日)であることが多い。開口障害、顔面けいれん、嚥下困難などから始まり、呼吸困難や後弓反張に移行する。重篤な場合、呼吸筋の麻痺により窒息死することがある。致命率は10から20%と報告されている。
病原体診断
創部の培養検査は感度、特異度ともに低く、創部から破傷風菌が分離されないことも多いため、細菌学的検査は診断に用いられない。
治療
抗破傷風ヒト免疫グロブリン、抗菌薬による治療を行う。創傷部が確認できれば洗浄し、異物等を取り除く。必要に応じて外科的切除(デブリドマン)を行う。必要に応じて人工呼吸器による呼吸管理や抗けいれん薬による対症療法も行う。
予防法・ワクチン
破傷風トキソイド含有ワクチンが有効であり、現在は五種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)及び二種混合ワクチン(DT)による定期接種が行われる。けがをした場合には、土壌などに汚染された傷を洗浄するほか、ワクチンと免疫グロブリンによる曝露後予防も行われる。
法的取り扱い
感染症法では五類感染症の全数把握対象疾患に定められている。