コクシジオイデス症
概要
コクシジオイデス症は、コクシジオイデス属の真菌を病原体とする感染症である。主な感染経路は乾燥した土壌中の真菌胞子を吸入する経気道感染である。発熱や咳嗽、胸痛、頭痛、関節痛などの症状を呈し、重症化すると真菌が皮膚や骨、髄膜まで播種して髄膜炎や骨病変を起こす。
病原体
原因真菌はコクシジオイデス属の真菌である Coccidioides immitis および C. posadasii である。乾燥した土壌に生息し、分節型分生子という胞子が感染源となる。
疫学
流行地域は米国南西部、メキシコ西部の半砂漠地帯であり、中南米でも報告されている。
日本国内で報告された症例の大半は米国への渡航歴があり、国内感染が疑われる症例は報告されていない。
感染経路
主な感染経路は、土埃として舞い上がった土壌中の胞子を吸入する経気道感染である。ヒトからヒトへの直接的な感染はない。
臨床像
潜伏期間は1週間から3週間程度(通常1週間から2週間)。
急性肺コクシジオイデス症では発熱、咳嗽、胸痛、関節痛、倦怠感など様々な症状が現れる。
慢性肺コクシジオイデス症は感染者の5%から10%程度が移行する病型で、咳や微熱が数か月続き、肺に結節や空洞が形成される。
感染者の約0.5%は播種性コクシジオイデス症に移行し、皮膚、骨、および髄膜に真菌が広がり、髄膜炎や骨病変などの重篤な病態を引き起こす。
免疫不全や妊娠後期などでは播種性コクシジオイデス症への移行や重症化リスクが高い。
病原体診断
喀痰、気管支洗浄液、肺又は皮膚の病理組織からの鏡検による病原体の検出、分離・同定、遺伝子の検出、血清学的検査による。
治療
抗真菌薬による治療が行われる。
予防法・ワクチン
流行地域では粉塵を吸い込まない対策が重要である。特に、免疫不全者は土埃の生じる場所を避ける。
国内で承認されたワクチンはない。
法的取り扱い
感染症法における、四類感染症に定められている。
