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感染性胃腸炎

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(IDWR 2003年第11号)

感染性胃腸炎(Infectious gastroenteritis)という診断名は、多種多様の原因によるものを包含する症候群であり、旧感染症発生動向調査ではウイルスまたは細菌による感染性胃腸炎を一括したものであるとの記載があり、特に病原体分離により実態を明らかにすることが望まれるとのただし書きが付いている。また、旧調査では乳幼児、特に6カ月から18カ月くらいの月齢のものを、特にロタウイルスによるものをサーベイする目的で乳児嘔吐下痢症として別の枠で発生動向調査を行っていたが、このなかには、小型球形ウイルス(small round structured virus;SRSV)によるものも多数包含されており、また感染性胃腸炎の範疇でもロタウイルス性のものが多く報告されている
という事実から、感染症法施行後、これらが一括されて調査対象となっている。すなわち、臨床上の診断名よりはサーベイランス上の症候群名という色彩が強い。

疫学

感染性胃腸炎という概念は、欧米でのInfectious diarrheaという概念に当てはまるが、この概念は基本的に鑑別診断をすすめる上での出発地点であり、起因病原体別に、あるいは、散発、アウトブレイク、食品媒介感染といったその発生状況などから分類される。本疾患は、サーベイランスのための疾患概念であるが、多種多様な病原体の関与が想定され、一定の疫学パターンをとらないことが予想される。しかしながら、過去のデータからすると、例年初冬から増加し始め12月頃に一度ピークができた後、春にもう一つなだらかな山ができ、その後初夏までだらだらと続き、年によってはもう一度小さなピークができた後、減少していくという流行パターンをとっている。ウイルス性、特にSRSVによる流行が12月のピークを形成し、その後春のピークはロタウイルスによって形成され、腸炎ビブリオなど細菌性のものやいわゆる食中毒によるものが夏期の原因になっている。

すなわち、地域での散発、流行疾患として、あるいは食品媒介感染症の一部を捉えているものと考えられる。報告数から考えるとウイルス性の報告が多いため、罹患年齢は幼児及び学童期が中心となっている。

病原体

多くの細菌、ウイルス、寄生虫が本疾患の起因病原体となりうる。細菌性のものでは腸炎ビブリオ、病原性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクタなど、ウイルス性のものではSRSV、ロタウイルス、腸管アデノウイルスなどがみられる。寄生虫ではクリプトスポリジウム、アメーバ、ランブル鞭毛虫などがあげられる。

感染様式は、地域での散発、流行疾患としては、感染患者からの糞口感染、食品媒介感染症としては、汚染された水、食品からの感染である。

臨床症状

原因となる病原体、あるいは感染様式、感染菌量、宿主の状態により異なるが、発熱、下痢、悪心、嘔吐、腹痛などが見られる。当初発熱が先行し、嘔吐、下痢など腹部症状が遅れて出現することもある。多種多様な病原体によりおこるため、また、食中毒、外科的疾患、炎症性腸疾患などを鑑別するためにも、症状、所見、経過、便性状、腸管外症状、患者背景、季節性、海外渡航歴、ペットの飼育などを参考にして確定診断につなげる。

検査所見では特異的なものは見あたらないが、一般に細菌感染症では白血球数、赤沈、CRPなどの増加が見られる。糞便の肉眼観察、顕微鏡による観察は、膿球(白血球)、カンピロバクタ、寄生虫などの確認に有用である。糞便の細菌培養、ウイルス分離、便中抗原検出などが病原体診断のために行われる。

病原診断

病原体診断は、本疾患の治療、拡大防止を行う上で重要である。患者の糞便より、細菌培養(細菌)、ウイルス分離(ウイルス)、直接検鏡(カンピロバクタ、寄生虫)、抗原検出(ロタウイルス、腸管アデノウイルス、EHEC O157抗原、ベロ毒素)、電子顕微鏡(SRSV)、PCR(ノロウイルス:旧称ノーウォーク様ウイルス、サポウイルス:旧称サッポロ様ウイルス)を行うことにより、病原体を推定・同定する。腸管出血性大腸菌では、ベロ毒素やリポ多糖体(LPS)に対する血清抗体を測定することによる血清学的診断も用いられる。

治療・予防

治療は、ウイルス性のものでは対症療法が中心となるが、細菌性、あるいは寄生虫によるものでは病原体特異的な治療を行う必要がある。
種々の病原体に対する特異的な予防方法はなく、食中毒の一般的な予防方法を励行することと、ウイルス性のものに対しては、流行期の手洗いと患者との濃厚な接触を避けることである。いずれの病原体においても院内、家庭内、あるいは集団内での二次感染の防止策を考慮することが肝要である。

また、汚染された水、食品が原因となっているものでは集団食中毒の一部を捉えていることも考慮に入れ、原因を特定するために注意深い問診を行うことが、感染の拡大防止や広域集団発生の早期探知につながる。

感染症法における取り扱い(2012年7月更新)

定点報告対象(5類感染症)であり、指定届出機関(全国約3,000カ所の小児科定点医療機関)は週毎に保健所に届け出なければならない。
届出基準はこちら(外部サイトにリンクします)

学校保健安全法における取り扱い(2012年3月30日現在)

腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフスなどの定められているもの以外の、サルモネラ感染症、カンピロバクター感染症、ロタウイルス感染症、ノロウイルス感染症などは明確には定められていないが、条件によっては、第3種の感染症の「その他の感染症」として、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまでの期間の出席停止の措置が必要と考えられる。

文献

  1. Pickering LK, Cleary TG. Approach to patients with gastrointestinal tract infections and food poisoning. In Textbook of pediatric infectious diseases, 4th ed. WB Saunders,1998. pp567‐601.
  2. Anonymous.小児のウイルス性胃腸炎1993~1998.病原微生物検出情報月報 Vol. 19 No.11(No.225)1998.

(国立感染症研究所感染症情報センター)

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