腸管出血性大腸菌感染症
更新日 (last updated):2025年6月26日
概要
腸管出血性大腸菌感染症はベロ毒素を産生する大腸菌を病原体とする感染症である。主な感染経路は経口感染である。腹痛、水様便、血便などの症状を呈し、重症化すると溶血性尿毒症症候群や脳症などの合併症を伴い、死亡することがある。
病原体
原因菌は、腸管出血性大腸菌(EHEC;Enterohemorrhagic Escherichia coli)と呼ばれる、ベロ毒素(志賀毒素とも呼ばれる)を産生する大腸菌である。日本では、患者などから検出される血清型としてはO157がもっとも多く、O26とO111が次に多い。
疫学
世界中で報告があり、北米や欧州、豪州でも集団発生例がある。日本では、病原体に汚染された給食や仕出し弁当、十分に加熱されていない牛肉の喫食により、大規模な集団感染事例も報告されている。発生時期は夏季に多い傾向にある。
感染経路
主な感染経路は、病原体に汚染された食品を摂取することによる経口感染である。また、ヒトからヒトへの糞口感染による二次感染も問題となる。
臨床像
潜伏期間は通常3から5日程度。激しい腹痛と水様便に続き、血便が出現する。溶血性尿毒症症候群(HUS;Hemolytic Uremic Syndrome)や脳症などの重篤な合併症を伴い、死亡することがある。
病原体診断
分離・同定した菌からの毒素の検出または毒素遺伝子の検出、患者の便からの毒素の検出、血清学的検査による。
治療
対症療法が中心である。
予防法・ワクチン
食品の十分な加熱、食品の調理後の速やかな摂取、手洗いの徹底が有効である。
承認されたワクチンはない。
法的取り扱い
感染症法では三類感染症に定められている。
学校保健安全法では第三種感染症に定められている。
関連情報
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- 腸管出血性大腸菌感染症 発生動向調査
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