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アデノウイルス流行性角結膜炎の届出基準の変更

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アデノウイルス流行性角結膜炎の届出基準の変更

(IASR Vol. 42 p71-72: 2021年4月号)

 
はじめに

 流行性角結膜炎(EKC)はヒトアデノウイルスD種によって引き起こされる, 眼科領域で最も頻度の高い感染症の1つである。感染力が非常に強く, しばしば院内感染や職場内感染, 家族内感染などで大流行になることがある。厚生労働省の感染症サーベイランス事業では定点報告対象疾患に指定されており, 全国約700カ所の眼科定点医療機関から週単位で患者発生の届出がされる。日本眼感染症学会は筆者も含めたワーキンググループを組成して届出基準を検討し, 2020年から新基準の運用が開始された。

変更点

 「感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について」は, 定義, 臨床的特徴, 届出基準, 届出のために必要な臨床症状, の各項目から構成されており, 下記のように変更を加えた。従来の届出基準(図1)と新たな届出基準(図2)を示す。

(1)定義

 分子遺伝学の進歩により, 原因となるアデノウイルスのゲノム解析が進んだ。従来19型とされていたものは正確には19a型であり, 現在は64型とも記載される。さらに53, 54, 56型が新たに同定され, 新型アデノウイルスと呼ばれる。いずれもD種に分類され, これらの知見を追記するとともに, E種の4型を削除した。

(2)臨床的特徴

 臨床的には急性濾胞性結膜炎を呈し, 角膜上皮下浸潤などの角膜病変がみられることもある。感染力が強く, しばしば大流行を起こすため, 臨床的特徴に「感染性が大変強く, 家庭内感染や院内感染を起こすことが多い」と明記された。

(3)届出基準と臨床症状

 従来は, 上記臨床的特徴を有してかつ「重症な急性濾胞性結膜炎」, 「角膜点状上皮下混濁」, 「耳前リンパ節腫脹・圧痛」のうち2つ以上を届出基準としていたが, 次のように改められた。

 (1)「急性濾胞性結膜炎」は必要条件である「臨床的特徴」に記載されているので, 「臨床症状」からは削除した。

 (2)家族内感染が多いため, 同居家族等がすでに確定診断されていて臨床的特徴が一致すれば診断はほぼ確実と考えられ, 「家族にEKC患者がいること」を加えた。

 (3)臨床像の詳細な解析により, 偽膜形成や結膜出血点は特異性が高いことが明らかになってきたため, これらを加えた。

 (4)免疫クロマトグラフィー法による迅速診断キットが臨床現場に広く普及し, その特異度はほぼ100%である。また, PCR法によるアデノウイルスDNAの検出も, もちろん確定診断に十分な根拠である。そこで新たに「届出のために必要な検査所見」を設け, 「迅速診断キットによるアデノウイルス抗原の検出」と「PCR法によるアデノウイルス遺伝子の検出」を加えた。

 急性濾胞性結膜炎の臨床症状があり, これら必要な臨床症状または検査所見が1つ以上該当すれば, 確定診断に至ったと判断して届出対象とした。

おわりに

 アデノウイルスは多くの感染症を起こすだけでなく, 健常者からも分離同定されるため, 遺伝子の組換えにより将来も新しい型が生まれると予想される。そして遺伝子変異が起きるたびに大流行が繰り返されるであろう。いまだに特効薬はなく, 今後も発生状況を的確に監視して速やかに感染拡大ルートを遮断することが重要である。


 
北海道医療大学眼科
北海道大学眼科  
 北市伸義

 

 

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