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IDWR 2025年第49号<注目すべき感染症> インフルエンザ

IDWRchumoku.gif 注目すべき感染症 注意:PDF版よりピックアップして掲載しています。

インフルエンザ 2025年第1~49週(2025年12月10日現在)

 インフルエンザは、インフルエンザウイルスを原因病原体とする急性の呼吸器感染症で、世界中で流行がみられる。主な感染経路は、咳、くしゃみ等により発生する飛沫による感染(飛沫感染)であるが、物の表面等に付着した飛沫に触れた手指を介した接触感染でも伝播する。症状としては、発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻汁・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常の感冒と比べて全身症状が強いことが特徴であるが、1週間前後の経過で軽快することが多い。症状のみで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との鑑別は困難である。

 2025年第15週より急性呼吸器感染症(ARI)サーベイランスが開始されたことに伴い、インフルエンザの発生状況は、従来のインフルエンザ/COVID-19定点医療機関(全国約5,000カ所)から、全国約3,000カ所の急性呼吸器感染症(ARI)定点医療機関(小児科定点約2,000カ所、内科定点約1,000カ所)からの届出により把握することとなった。そのため、過去シーズンとの比較に際しては、データの解釈に一定の注意を要する。

 わが国ではインフルエンザは冬季に流行が見られ、定点当たり報告数でみると、2022/23シーズン(シーズン:第36週~翌年第35週)では2023年第6週(12.91)、2023/24シーズンでは2023年第49週(33.72)、そして2024/25シーズンでは2024年第52週(64.39)でそれぞれピークに達した。2025/26シーズンにおいては、例年より早い第39週に全国の定点当たり報告数が1.00を超え、第47週には51.12に達した。しかし、第49週時点では38.51(患者報告数148,314)であり、2週連続の減少となった(インフルエンザの年別・週別発生状況:https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/jp/graph/weekly/01flu.html)。

 なお、2025年第49週(2025年12月1~7日)の都道府県別の定点当たり報告数は、福岡県(65.56)、宮崎県(62.54)、長野県(57.04)、愛知県(53.37)、大分県(52.91)、埼玉県(50.82)、長崎県(48.73)、熊本県(48.17)、鹿児島県(48.12)、山口県(48.08)、新潟県(47.09)、京都府(46.55)、愛媛県(46.35)、岡山県(45.92)、栃木県(42.81)、三重県(41.87)、石川県(40.91)、山梨県(40.89)、山形県(40.79)、香川県(40.53)、福井県(40.33)、奈良県(39.48)、静岡県(39.29)、岐阜県(38.98)、島根県(38.80)、茨城県(38.36)、岩手県(38.24)、滋賀県(38.10)、富山県(37.73)、兵庫県(37.47)、千葉県(37.08)、佐賀県(36.63)、広島県(35.50)、青森県(35.25)、群馬県(34.44)、神奈川県(34.33)、徳島県(33.55)、鳥取県(33.48)、高知県(33.08)、福島県(32.02)、宮城県(30.27)、北海道(29.08)、大阪府(27.08)、東京都(25.17)、和歌山県(24.62)、秋田県(20.68)、沖縄県(18.07)の順となっている。全国47都道府県中、15都道府県では前週の報告数よりも増加し、32都道府県では前週の報告数よりも減少した。また、2025年第36~9週の定点医療機関からの累積報告数の男女比は、10歳未満の年齢群では1.11:1、10~9歳の年齢群では1.23:1と男性に多いが、20~9歳の年齢群では1:1.32、60歳以上の年齢群では1:1.20と女性に多かった。なお、60歳以上では男女人口差の影響もある点に留意が必要であるが、20歳未満では男性が多く、20歳以上では女性が多い傾向は、例年と同様であった。

 インフルエンザ入院サーベイランス(全国約500カ所の基幹定点医療機関が週毎に報告するインフルエンザによる入院患者数、重症例の推移を反映する)においては、2025年第36週以降、概ね増加傾向であったが、第48週から第49週にかけては減少した(2,263例→1,951例)。年齢群別の内訳としては、1歳未満(107例)、1~歳(322例)、5~歳(281例)、10代(142例)、20代(36例)、30代(30例)、40代(32例)、50代(61例)、60代(132例)、70代(283例)、80歳以上(525例)であった。また、2025年12月10日現在、今シーズンのインフルエンザによる入院患者の累積報告数9,924例のうち、10歳未満が4,073例、70歳以上が3,593例であった(インフルエンザの発生状況:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou.html)。昨シーズン同時期と比較すると、報告された入院例のうち10歳未満が占める割合は増加し(27.1%→41.0%)、70歳以上が占める割合は減少(47.5%→36.2%)していた。

 病原体サーベイランス〔IASR 速報グラフ ウイルス(インフルエンザウイルス):https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/graph/iasrgv/index.html〕によると、2025年12月10日現在、2025/26シーズンのインフルエンザウイルス分離・検出報告数は733例で、AH1pdm09が72例、AH3亜型が628例、B型が33例(ビクトリア系統28例、系統不明5例)であった。また、直近5週間(2025 年第45 ~ 49 週)では296 例で、AH3 亜型が284 例(96%)、B 型が8 例(3%)、AH1pdm09が4例(1%)の順であった。詳細は感染症情報提供サイト「インフルエンザ疫学情報速報」(https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/article/influenza/article.html)を参照されたい。

 インフルエンザ脳症(5類感染症全数把握対象疾患である急性脳炎の届出のうち、病型の病原体としてインフルエンザウイルスの記載があったもの)は、2022/23 シーズンで44 例、2023/24シーズンで191例、2024/25シーズンで182例であった。2025年第36~49週にかけては88例報告されており、うち、10例が死亡例であった。また、検出されたインフルエンザウイルスはA型81例(92%)、血清型の未記載7例(8%)であった(2025年12月10日現在)。

 感染症法に基づくサーベイランス以外でインフルエンザの流行状況を示唆する情報として、全国の保育所・幼稚園、小学校、中学校、高等学校におけるインフルエンザ様症状の患者による休校数、学年閉鎖数、学級閉鎖数を集計する学校サーベイランス〔インフルエンザ様疾患発生報告(学校欠席者数):https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/jp/inful/school/flulike.html〕と、国立病院機構140病院において医師がインフルエンザを疑い、インフルエンザ迅速抗原検査を実施した検査件数と検査陽性数が報告されることにより、検査陽性率が把握できる「国立病院機構におけるインフルエンザ全国感染動向」(https://nho.hosp.go.jp/cnt1-1_0000202504.html)がある。

 学校サーベイランスでは、2025年第36~49週までのインフルエンザ様症状の患者による休校数、学年閉鎖数、学級閉鎖数の累積は、休校1,011件、学年閉鎖9,190件、学級閉鎖27,197件となり(2025年12月12日現在)、昨シーズン同時期における累積の休校54件、学年閉鎖746件、学級閉鎖2,850件を大きく上回った。「国立病院機構におけるインフルエンザ全国感染動向」においても同様の動向であった。直近の2025年11月1~15日に関して、前年同時期の結果と比較すると、検査件数は3,000件ほど多く(6,418件→9,519件)、検査陽性件数も約10倍であり(121件→1,199件)、検査陽性率も大きく上回っていた(1.9%→12.6%)。なお、ARI病原体サーベイランスにおいても、インフルエンザウイルスA型の陽性率は第39週以降一貫して上昇しており、国立病院機構のデータと同様の傾向が全国的にも確認されている(ARIサーベイランス週報:https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idss/content/teiten_ARI/index.html)。

 また、COVID-19については、2025年は直近で、第34週(定点当たり報告数8.73)をピークに第49週まで概ね減少傾向であるが、今後の動向の注視が重要である(ARIサーベイランス週報:https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idss/content/teiten_ARI/index.html)。

 インフルエンザを含む呼吸器感染症への個人の予防策として、マスクの適切な着用を含む咳エチケット、手指衛生の徹底、適切な換気の実施等が推奨される。医療・福祉施設へのウイルスの持ち込みを防ぐことや、ワクチンの接種を検討することも重要である。なお、2025/26シーズンは、A型2亜型とB型ビクトリア系統による3価のインフルエンザワクチンが製造されており(インフルエンザワクチン株:https://id-info.jihs.go.jp/diseases/a/influenza/040/atpcs002.html)、65歳以上の高齢者、又は60~64歳で心臓、腎臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される者、あるいはヒト免疫不全ウイルス(HIV)により免疫機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な者は、予防接種法上の定期接種の対象となっている(令和7年度 今冬の急性呼吸器感染症(ARI)総合対策:https://www.mhlw.go.jp/stf/index2025.html)。2025/26シーズンを通したインフルエンザワクチンの供給量は、約5,293万回分が見込まれている(2025/26シーズンの季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの供給等について:https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001551207.pdf)。

 世界保健機関(WHO)によると、諸外国においても、インフルエンザの流行ならびにインフルエンザウイルスA型(H3N2)の陽性率の増加が確認されている(WHO Seasonal influenza - Global situation:https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2025-DON586)。

 インフルエンザの今後の発生動向について、引き続き包括的に監視していくことが重要である。インフルエンザの感染症発生動向調査等に関する詳細な情報と最新の状況については、以下を参照いただきたい(引用日付2025年12月10日):



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