IDWR 2012年第16号<速報>細菌性髄膜炎 2006~2011年
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◆ 細菌性髄膜炎 2006~2011年 (2012年4月25日現在) 細菌性髄膜炎は種々の細菌感染による髄膜感染症の総称である。化膿性髄膜炎ともよばれ、通常結核菌による結核性髄膜炎はこの範疇に含めず、ウイルス感染が主体である無菌性髄膜炎と対照をなす。抗菌薬治療の発達した現代においても、発症した際の致命率は高く、また救命できても重篤な後遺症を残すことがあり、原因菌の検出を含めた迅速な診断と適切な治療の早期開始が極めて重要である。 細菌性髄膜炎の発生状況の把握は、1981年7月に開始された感染症サーベイランス事業によって定点医療機関からの報告として開始され、1999年4月の感染症法制定後も感染症法に基づく感染症発生動向調査として、全国約460カ所の基幹定点*から週毎の報告が継続されている (届出基準・届出様式:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01.html)。 今回は2006~2011年の細菌性髄膜炎の報告についてまとめる。なお、髄膜炎菌性髄膜炎は全数届出疾患であり、細菌性髄膜炎の報告には含まれない。 * 基幹定点は、2次医療圏毎に1カ所の患者を300人以上収容する施設を有し内科及び外科を標榜する病院(小児科医療と内科医療を提供しているもの)とされている。基幹定点数は、2006年434、2007年460、2008年463、2009年464、2010年463、2011年471カ所であった。 2006~2011年に全国の基幹定点から報告された細菌性髄膜炎は、2006年350例、2007年383例、2008年408例、2009年464例、2010年487例、2011年558例の合計2,650例であった。この中には、本来、無菌性髄膜炎として報告されるべき病原体名の報告されたものが150例含まれていた(図1)。以下では、これらを除く2,500例を対象とした。 2,500例の週別報告数は1~21例で平均値は8.0例(年毎には2006~2011年の順に、6.6、6.9、7.4、8.6、8.8、9.7例)であった。週別報告数の多少や増減の時期に明らかな季節性はみられなかった(図2)。 年齢群別(0~9歳は1歳毎、10~14歳、15~19歳、20~89歳は10歳毎、90歳以上)報告数では、0歳(671例)が際立って多く、次いで1歳(266例)で、5歳以下に多かった。また20歳以上について10歳毎にみると、60代、70代が多かった(図3)。
起因菌別〔Haemophilus influenzae(インフルエンザ菌。感染症発生動向調査では血清型は報告されていない)、Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)、インフルエンザ菌・肺炎球菌以外の細菌、不明(記載なし及び菌陰性)〕の報告数をみると、不明〔記載なし(1,242例)及び菌陰性(111例)〕が過半数(54.1%)を占めるが、菌名が報告されたものの中では、インフルエンザ菌(385例)、肺炎球菌(318例)が多かった(図1、図3、表)。 年別にみると、インフルエンザ菌は48例(2011年)~83例(2008年)の範囲で、肺炎球菌は46例(2007年)~59例(2006年)の範囲で報告されており、増加ないし減少の傾向は明らかではなかった(図1)。一方、インフルエンザ菌・肺炎球菌以外の細菌は2008年以前には60例未満であったが、2009年から増加傾向がみられ、2011年は106例が報告された(図1)。インフルエンザ菌・肺炎球菌以外の細菌に含まれるものとして、菌名の報告されたものをみると、S. agalactiae(B群レンサ球菌)が82例と最多で、次いでStaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)55例、Listeria monocytogenes(リステリア菌)24例であった(表)。
年齢群別に起因菌をみると、インフルエンザ菌は0歳が最多で5歳までに多く(0~5歳で369例、95.8%)、6歳以上はわずかであった。肺炎球菌は0~3歳で多いがその後は減少し、30歳以降で再び増加して50~70代で多かった(図3)。さらにこれら2つの起因菌について、年齢群別報告数の年次推移をみた(ここでは年齢群を、0歳、1歳、2~5歳、6~14歳、15~64歳、65歳以上の6つの年齢群として図4、図5に示した)。インフルエンザ菌では1歳及び2~5歳が2009年以降、0歳が2011年に減少し、肺炎球菌では2~5歳が2010年以降、0歳が2011年に減少した(図4、図5)。
一方、インフルエンザ菌・肺炎球菌以外の細菌の報告が、報告数の多い年齢群を中心に0歳、6歳、40~80代で20%以上を占めていた(図3)。報告された菌の詳細を、0歳、1~14歳、15歳以上の3つの年齢群に分けてみたところ、0歳(143例)ではS. agalactiae(65例)、Escherichia coli K1(大腸菌K1型莢膜株)(11例)、1~14歳(56例)ではL. monocytogenes(8例)、S. aureus(3例)、S. agalactiae(3例)、15歳以上(245例)ではS. aureus(47例)、L. monocytogenes(15例)、S. agalactiae(14例)の順に多かった。また、Other bacteriaとされた報告が、0歳で25例、1~14歳で24例、15歳以上で78例と、各年齢群ともに相当数を占めていた。これらの中には、起因菌が同定されないままに報告されたものが含まれている可能性もあると考えられる。 細菌性髄膜炎は非常に重篤な感染症であり、適切な治療の選択には起因菌の同定が重要であるが、起因菌が不明な症例の報告が多数認められた。その原因は明らかではないが、検査手法の開発を含めた検討が必要である。また、2010年12月に「子宮頸がん等ワクチン接種緊急事業」の開始に伴い、インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンおよび7価肺炎球菌ワクチン(PCV7)の公費助成による接種が可能となり、さらに現在、定期接種化に向けた検討が行われている。インフルエンザ菌感染症、肺炎球菌感染症については、現在全国約460カ所の基幹定点からの髄膜炎のみの報告に限られているが、髄膜炎以外を含めた侵襲性感染症としてのより正確な発生状況の把握が必要である。 |