IDWR 2014年第27号<注目すべき感染症> 腸管出血性大腸菌感染症
注目すべき感染症 注意:PDF版よりピックアップして掲載しています。
◆ 腸管出血性大腸菌感染症(2014年7月9日現在)
2014年の腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症報告数は、第14~16週に食中毒の発生が影響し、一時的に増加がみられた。その後は毎週50例未満の報告が続いたが、第24週から再び50例を超えて増加し始めた。第25週に急増し、それ以降例年を上回る報告数(第25週139例、第26週164例、第27週151例)であった(図1)。本年第27週までの累積報告数1,024例は、直近5年間(2009~2013年)の各年同週までの累積報告数と比較して、2013年に次いで2番目に少ない報告数である(2009年1,034例、2010年1,330例、2011年1,318例、2012年1,048例、2013年906例)。一方、患者(有症者)に絞った累積報告数は731例であり、2011年、2010年に次いで3番目に多い(2009年670例、2010年830例、2011年894例、2012年651例、2013年646例)。
第1~27週の累積報告数を都道府県別にみると、東京都(130例)が最も多く、次いで埼玉県(97例)、神奈川県(81例)、福島県(53例)、大阪府(43例)の順であった(本号19ページ「27週のデータ」参照)。特に、東京都、埼玉県、神奈川県の上位3都県は、第24週以降毎週10~25例前後の報告が続いている〔速報グラフ(PDF)2014年第27週「都道府県別腸管出血性大腸菌感染症週別報告状況」参照;https://www0.niid.go.jp/niid/idsc/idwr/diseases/ehec/ehec2014/27wEHEC.pdf〕。第24週以降、上位3都県から報告されたEHEC(O血清群と毒素型)はO157 VT1・VT2が多数を占めているが、現在までのところ施設内集団発生等の報告はない。一方、その他の地域では、第26週に千葉県の介護施設(O157 VT1・VT2)、第27週に千葉県の高校(O157 VT1・VT2)から集団発生の報告があった。
性別では男性が469例(46%)、女性が555例(54%)で、年齢群別では0~9歳253例(25%;うち5歳未満135例)、10~19歳168例(16%)、20~29歳145例(14%)の順であった。
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EHEC感染症の重篤な合併症である溶血性尿毒症症候群(HUS)の発症は、第27週までに累積29例(男性14例、女性15例)が報告されていた。直近5年間の同週までの累積報告数と比較すると、ユッケを原因とした食中毒によりHUS発症例が増加した2011年(http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-vol33/2064-iasr-387.html)に次いで2010年と並び2番目に多い報告数であった(2009年18例、2010年29例、2011年56例、2012年23例、2013年16例)(図2)。年齢群別では0~4歳が15例で最も多く、次いで5~9歳6例、10~14歳4例と小児が多数を占めた。
EHEC感染症の死亡は1例(40代男性、HUS未発症)報告された。
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EHEC感染症が多発する夏季は、食肉の十分な加熱処理、調理器具の十分な洗浄や手洗いの励行などを行うことにより、食中毒の予防を徹底する。特に、低年齢の小児はEHEC感染とその後のHUS発症のリスクが高く、徹底した感染予防が重要である。また、ヒトからヒトへの二次感染を予防するための注意も必要である。毎年保育施設における集団発生が多くみられており、日ごろからの注意として、オムツ交換時の手洗い、園児に対する排便後・食事前の手洗い指導の徹底が重要である。また、簡易プールなどの衛生管理にも注意を払う必要がある。さらに、過去には動物とのふれあい体験での感染と推定される事例も報告されており、動物との接触後の充分な手洗いや消毒が必要である。
(補)菌の検出状況については、
(グラフ)http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr/510-surveillance/iasr/graphs/1524-iasrgb.html
(集計表)http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr/511-surveillance/iasr/tables/1525-iasrb.html
をご参照ください(自動更新)。
国立感染症研究所 感染症疫学センター
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