2例の生後2か月未満児の血清からのヒトパレコウイルス検出―岡山県

2例の生後2か月未満児の血清からのヒトパレコウイルス検出―岡山県
(IASR Vol. 37 p.180-181: 2016年9月号)
岡山県倉敷市において, 発熱を来した乳児の血清から単純ヘルペスウイルス(HSV)1型, 同2型, 水痘帯状疱疹ウイルス, エンテロウイルス, パレコウイルスに対するマルチプレックスリアルタイムPCR法(FTD Viral meningitis, Fast-track diagnostics Ltd., Luxembourg; 以下, リアルタイムPCR法)でパレコウイルス(HPeV)に対する陽性反応を認める例が相次いで認められたのでここに報告する。なお, 本検査キットにおいては, ウイルス量の定量はできず, パレコウイルスの型についても判別することはできない。
症例1
生後40日男児。2016年5月20日深夜, 発熱・嘔吐・意識障害・呼吸窮迫・鼻出血を来たし, 受診した。受診時の状態は体温38.2℃, 心拍数180~200/分, 呼吸数60/分, 経皮酸素飽和度88%(室内気), JCS20~30で, 網様皮斑を認めた。新生児敗血症・脳炎脳症を疑い, 入院下に精査加療を開始した。
検査結果は白血球数3,170/μL, CRP 1.1mg/dL; 髄液細胞数0/μL(補正値)であった。
入院時の血清・髄液(採取時に血液混入)のいずれの検体からもリアルタイムPCR法によってHPeV遺伝子が検出された。また, いずれの検体からも有意菌は培養されなかった。
入院後速やかにアシクロビル(ACV), メチルプレドニゾロン(mPSL), アンピシリン(ABPC), セフォタキシム(CTX)による治療が開始された。リアルタイムPCR法でHSVが検出されずHPeVが検出されたことによりACVは入院当日に中止された。また, 免疫グロブリン製剤が150mg/kg/dayで3日間投与された。ABPC, CTXは合計6日間投与された。入院4日目から解熱が続き, 7日目に軽快退院した。
症例2
生後52日男児。2016年6月5日未明より熱感に気づかれ, 同日午前中に受診した。来診時の状態は体温38.3℃, 心拍数200/分で, 網様皮斑を認めた。全身状態は比較的良好であったが, 若齢乳児の高熱であるため, 入院下に精査加療を開始した。
検査結果は白血球数4,950/μL, CRP 0.33mg/dLであった。
入院時の血清からリアルタイムPCR法によってHPeV遺伝子が検出された。
入院後速やかにABPC, CTXによる治療が開始され, 免疫グロブリン製剤が入院翌日から150mg/kg/dayで3日間投与された。ABPC, CTXは合計3日間投与された。入院4日目から解熱が続き, 6日目に軽快退院した。
2例とも, 児の同胞に先行して胃腸症状, 感冒症状が認められていた。
HPeVはエンテロウイルス, ライノウイルスと同じくピコルナウイルス科に分類されるウイルスである。比較的軽症の胃腸炎や上気道炎の原因としても知られ, 学童期の抗体保有率は80%にも上ると報告されている1)。一方でHPeV 3型は3か月未満の乳児において脳炎や敗血症様の症状で発症して時に重症化することも知られている2)。我々の経験した2例も一方は重症感が強く, 他方は軽症であった。
HPeV 3型は2~3年ごとに流行を起こすことが知られており, わが国では2006, 2008, 2011, 2014年に流行が報告されている3-8)。流行時の報告では先行して同居家族に感冒様症状を呈している者が多かったとの報告もある8)。
今回我々が経験した2例でも, 同居家族に胃腸症状, 感冒症状が認められていた。これ故に, エンテロウイルス感染予防と同様に, 手洗いなどの衛生行動やマスク着用による感染対策が望まれる。
HPeV検出数は, エンテロウイルス同様に初夏から報告が増える傾向があるため, 注意を要すると考え, ここに報告する。
参考文献
- 愛知県衛生研究所, ヒトパレコウイルスについて
(2006年12月8日; http://www.pref.aichi.jp/eiseiken/67f/hpev.html) - Shoji K, et al., Pediatr Infect Dis J 32: 233-236, 2013
- 山本美和子ら, IASR 29: 255, 2008
- 戸田昌一ら, IASR 32: 294-295, 2011
- 青木洋子ら, IASR 32: 295-296, 2011
- 成相絵里ら, IASR 35: 200, 2014
- 相澤悠太ら, IASR 35: 220, 2014
- 宮田一平ら, IASR 35: 221, 2014