IDWR 2017年第1号<注目すべき感染症> 感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は多種多様の原因によるものを包含する症候群名である。その多くにウイルス感染(ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス等)を原因とするものが含まれる。
ノロウイルスによる感染性胃腸炎は、特に冬季に流行する(ノロウイルスの流行 2010/11~2013/14シーズン:http://www.niid.go.jp/niid/ja/id/777-disease-based/na/norovirus/idsc/iasr-topic/4822-tpc413-j.html)。
ノロウイルスはRNAウイルスで、GI~GVIIの遺伝子群(genogroup)に分けられ、GIとGIIが主にヒトに感染する。ノロウイルスの感染経路としては、患者の糞便や嘔吐物からヒトの手指を介した接触感染や、家庭や施設などヒト同士が接触する機会が多いところでのヒトからヒトへの飛沫感染、家庭内調理を含む感染した食品取扱者(無症状病原体保有者を含む)を介して汚染された食品を食した場合、汚染されていた食品や水を摂取した場合などがあり、その感染力は非常に強い。感染から発症に至る潜伏期間は主に24~48時間で、主な症状は吐き気・嘔吐及び下痢である。ノロウイルスは糞便および吐物中に大量に排出され、症状消失後も数週間糞便中への排出が続き、1カ月以上排出が続く事例も報告されている(https://idsc.niid.go.jp/iasr/31/369/dj3694.html)。特に乳幼児や高齢者等では、嘔吐、下痢によって体力を消耗し、脱水症状を引き起こすこともある。現在有効なワクチンはなく、治療法は対症療法となる。
感染症発生動向調査では、感染性胃腸炎は全国約3,000カ所の小児科定点からの報告に基づき、毎週の情報が監視されている。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2016年第41週以降、急速に患者数が増加した。地理的な流行の推移をみると、第41週以降の当初は報告の多くが南・西日本からなされ、その後全国的に多くの報告がなされるに至った。定点当たり報告数の上位5位を都道府県別にみると、第41週は、島根県、熊本県、大分県、広島県、鹿児島県、第44週は、広島県、三重県、島根県、東京都、神奈川県、第47週は、宮城県、山形県、三重県、東京都、埼玉県、第50週は、山形県、宮城県、埼玉県、宮崎県、富山県であった。第50週(2016年12月12~18日)の定点当たり報告数は20.89となり(感染性胃腸炎の年別・週別発生状況:http://www.niid.go.jp/niid/ja/10/2096-weeklygraph/1647-04gastro.html)、2006年以降の過去10年間の報告のうち、1週当たりの定点当たり報告数では2006年の第50週(定点当たり報告数22.81)に次ぐ高い値であった。第50週以降は減少し、2017年第1週(2017年1月2~8日:2017年1月11日現在)では定点当たり報告数は5.31であった。2017年第1週の定点当たり報告数は大分県(15.11)、福井県(12.45)、宮崎県(11.94)、山梨県(10.58)、熊本県(10.42)の順となっており、広島県を除く46都道府県で前週の報告数を下回った。
2016年第41週~2017年第1週の年齢群別割合では4~5歳が22.0%、2~3歳19.8%、6~7歳14.9%、0~1歳14.5%の順となっている。男女別割合では小児(15歳未満)の年齢群において男性が53.8%とやや多かった。
ヒトに由来する感染性胃腸炎ウイルスとして検出された病原体の中では、ノロウイルスGIIが多くを占めた(週別病原体別感染性胃腸炎由来ウイルス、2016&2017年:https://kansen-levelmap.mhlw.go.jp/Byogentai/Pdf/data117j.pdf)。一部の自治体で検出されたノロウイルスの多くがGII.2であるとの報告もあった(千葉市:http://www.niid.go.jp/niid/ja/id/778-disease-based/na/norovirus/idsc/iasr-news/6969-443p04.html、宮城県:http://www.niid.go.jp/niid/ja/id/778-disease-based/na/norovirus/idsc/iasr-news/6921-443p03.html、茨城県・川崎市:http://www.niid.go.jp/niid/ja/id/778-disease-based/na/norovirus/idsc/iasr-news/6988-443p07.html)。 ノロウイルスによる食中毒及び感染症の発生を防止するためには、ノロウイルスに関する正しい知識と予防対策等についての理解が欠かせない。厚生労働省は、「ノロウイルスに関するQ&A」(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/
厚生労働省では食中毒の患者並びに食中毒死者の発生状況を的確に把握し、また複雑な発生状況を解明することを目的として食中毒統計調査を実施し、発生状況について報告を行っている(http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/112-1.html)。調理従事者を介した食品汚染による食中毒を防ぐためには、手洗いや食品取り扱い施設での作業衣や手袋着用などを含めた基本的な衛生管理および調理従事者の健康管理の徹底が望まれる。食中毒の原因を早期に究明し拡大を防止するために、厚生労働省は2016年11月24日に「ノロウイルスによる食中毒の予防及び調査について」(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000143826.pdf)の通知を発出している。
今後の感染性胃腸炎の感染症発生動向調査及びウイルスの推移に関する詳細な情報と最新の状況については、以下を参照いただきたい:
●ノロウイルス感染症とは
国立感染症研究所感染症疫学センター |