 注目すべき感染症 ◆ 麻しん 2013年第48週~2014年第4週の輸入例の増加
麻しんの2014年第1~4週(2013年12月30日~2014年1月26日に診断されたもの)の累積報告数は46例であり(麻しん速報グラフ第4週:https://www0.niid.go.jp/niid/idsc/idwr/diseases/measles/measles2014/meas14-04.pdf)、昨年同時期より大きく増加している。2014年の麻しんウイルスの遺伝子型は16例で報告されている(2014年2月3日現在)。詳細は「麻疹ウイルス分離・検出状況:http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-measles.html」などを参考にしていただきたい。
2013年第48週~2014年第4週(2013年11月25日~2014年1月26日)に診断された麻しん(2014年2月3日現在)は61例であり、前年同時期の26例よりも倍増した。性別では男性32例、女性29例であり、平均年齢は17.0歳(中央値15歳、5カ月~60歳)であった。遺伝子型別が判明したものが24例含まれ、B3型22例、D8型1例、D9型1例であった(図)。
この間の都道府県別の報告数は京都府21例、愛知県8例、神奈川県7例、東京都5例、岡山県3例、埼玉県、千葉県、兵庫県、広島県、福岡県各2例、新潟県、静岡県、三重県、滋賀県、大阪府、山口県、宮崎県各1例であった。感染地域は国内が37例(61%)であり、国外が24例(39%:フィリピン17例、スリランカ2例、インドネシア2例、グアム1例、インド1例、オーストラリア1例)と報告され、フィリピンが最多であった。ワクチン接種歴別報告数では、61例中接種歴のない、または不明の症例が52例(85%)であった。
2013年末から2014年初頭の発生動向で特記すべきこととして、輸入例の増加が続いていることが挙げられる。感染地として海外が推定されていた症例の、2013年第1~47週の週当たり平均報告数は0.32例であったが、2013年第48週~2014年第4週では2.7例に増加した。
麻しんは、年齢にかかわらず命に関わる重篤な感染症である。また、特異的な治療法はないものの、予防接種で予防可能な感染症である。我が国は2012年までの麻しん排除を国としての目標に掲げ、2007~2008年頃の10代を中心とする患者発生の状況から約97%の減少を達成し、2015年の麻しん排除認定の取得を次の目標としている。今後も輸入例の動向を注意深く監視すると共に、輸入例からの国内二次感染等に対する警戒が重要である。そのためには、「一例出たらすぐ対応」の原則に則った迅速な疫学調査の実施が鍵であるとともに、感受性者、特に定期接種(1歳、小学校就学前1年間)対象者における麻しん含有ワクチン(原則として麻しん風しん混合ワクチン)接種の徹底が必要である。
さらに、海外渡航歴のある、あるいは関連している症例が増加しており、感染性がある期間に航空機に搭乗していたと考えられた症例も複数報告されている*。医療機関においては、発熱・発疹者に対する聞き取りにおいては、渡航歴や麻しん様患者との接触歴、予防接種歴などの確認を慎重に行うことが望まれる。
海外への渡航者は、自分のワクチン接種歴を確認の上、必要なワクチン接種を行い、持ち込まないことが大切である。また、麻しんの疑われる体調不良があった場合は、二次感染防止のため、麻しんの疑いがあることを予め医療機関に伝えた上で受診することが望ましい。
麻しんのこれまでの発生状況や疾患の説明は、http://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ma/measles.html をご参照ください。
* 欧州疾病対策センター(ECDC)は「航空機内での麻疹伝播に関するリスク評価ガイドライン(抄訳)」を公表している。(http://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/disease/measles/pdf/20140205/koukuuki.pdf)
国立感染症研究所感染症疫学センター 高橋琢理 砂川富正 木下一美 加納和彦 伊東宏明 中島一敏 新井 智 佐藤 弘 多屋馨子 大石和徳
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