 注目すべき感染症 ◆ 先天性風疹症候群-2012年~2013年第35週現在-
(注)以下、本稿においては、感染症法に基づく感染症発生動向調査から得られた情報を基にまとめている。今後、状況の進展に伴い修正されることもありえるので注意されたい。
先天性風疹症候群(CRS:congenital rubella syndrome)とは、風疹に感受性のある妊娠20週頃までの妊婦が風疹ウイルスに感染し、出生児に白内障、先天性心疾患、難聴等の症状が見られたものである。
2005~2011年まで、CRSの報告は年0~2例で推移していた。2012年には5例、2013年第35週(2013年9月4日現在)までには13例の計18例が報告されている(表)。ここでは2012年以降の18例について述べる。報告都道府県としては、東京都8例、愛知県2例、大阪府2例、兵庫県2例で、埼玉県、千葉県、神奈川県、香川県からはそれぞれ1例ずつであった。性別は男性11例、女性7例で、母親の風疹ワクチン接種歴は、なし9例、不明8例、あり1例であった。母親の妊娠中の風疹発症は、あり11例、不明4例、なし3例であった。発症を認めた11例のうちの10例において発症時の妊娠週数の記載があり、その中央値は11.5週(5~17週)であった。
 |  | | 表. 先天性風疹症候群の報告一覧(2012年第1週~2013年第35週) | 図. 感染症発生動向調査に報告された風疹とCRS患者数の推移(2012年第1週~2013年第35週) | |
CRSの検査室診断は、PCR法のみによるものが3例、血清IgM抗体のみによるものが9例、PCR法と血清IgM抗体によるものが6例であった。3徴として知られる白内障、先天性心疾患、難聴の主な症状については、白内障・先天性心疾患・難聴の3徴合併(1例)、先天性心疾患・難聴の2徴合併(1例)、白内障のみ(1例)、先天性心疾患のみ(11例)、難聴のみ(4例)となっていた。他の症状としては、色素性網膜症(1例)、紫斑(7例)、脾腫(2例)、小頭症(3例)、精神発達遅滞(1例)、X線透過性の骨病変(1例)、生後24時間以内に出現した黄疸(3例)が認められた例があった(重複含む)。先天性心疾患の内訳として複数認められたものは、動脈管開存症、肺動脈狭窄症であった。
過去の報告からも、風疹の流行があるとCRS発生が増加することが知られている(先天性風疹症候群とは:http://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/429-crs-intro.html)。2011年から始まった風疹の流行は2013年第19~22週にピークを迎えた(図)。妊婦が風疹に罹患してからCRS児が出生するには、20~30週程度の時間差が生じるため、CRSの報告は今後、増加する可能性がある。
なお、風疹では不顕性感染が約15~30%程度あることから、妊婦が風疹ウイルス感染に気付かずに経過している場合がある。また、CRSにおいて最も多い難聴などの症状は出生直後には把握されにくいことにより、乳児期のしばらくの期間、CRSの症状把握を積極的に行われなければ診断が遅れ、患児に対する適切な療育支援の開始が遅れる可能性がある。さらに、CRSにおいては、鼻咽頭、尿から、数カ月にわたって風疹ウイルスが排泄されていることがあることから、周りにいる感受性者への対応についても考慮する必要がある。
具体的に、CRSを確実に診断するためには、妊娠初期に風疹ウイルスに感染した母より出生した新生児を対象とした確認、および乳児健診~1歳半健診時に児の症状を丁寧に確認することで早期診断に繋げることが出来ると考えられ、患児の成長発達にも良い効果が得られるのではないかと期待される。今後は、患児に対する医療・公衆衛生両面の望ましい療育支援のあり方について議論を深め実施していくとともに、予防として、妊娠を希望する女性への予防接種と、そのパートナーとなる男性への情報提供と風疹の予防啓発が重要である。
国立感染症研究所感染症疫学センター 伊東宏明 山岸拓也 中島一敏 砂川富正 松井珠乃 多屋馨子 大石和徳
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