麻疹の抗体保有状況―2020年度感染症流行予測調査(暫定結果)

麻疹の抗体保有状況―2020年度感染症流行予測調査(暫定結果)
(IASR Vol. 42 p181-182: 2021年9月号)
はじめに
感染症流行予測調査における麻疹の感受性調査(抗体保有状況調査)は, 1978年度に開始後, ほぼ毎年実施されてきた。国民の抗体保有状況を把握することで, 効果的な予防接種施策の立案ならびに麻疹排除状態の維持に役立てることを目的としており, 乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層における予防接種状況, ならびに抗体保有状況について調査を行っている。
麻疹の予防接種は1966年から任意接種として始まり, 1978年10月には予防接種法に基づく定期接種となった。当時の定期接種対象年齢は, 生後12か月以上72か月未満であった。1989年4月~1993年4月の4年間は, 麻疹の定期接種の際に, 麻しんワクチンあるいは麻しんおたふくかぜ風しん混合(MMR)ワクチンの選択が可能となった。1995年度から定期接種対象年齢が生後12か月以上90か月未満に変更となり, 2006年度から麻しん風しん混合(MR)ワクチンが導入され, 接種対象年齢, 第1期(生後12か月以上24か月未満), 第2期(5歳以上7歳未満で小学校就学前1年間の者)の2回接種となった。2008~2012年度の5年間は, 10代への免疫強化を目的として第3期(中学1年生), 第4期(高校3年生相当年齢の者), の定期接種が実施された。
2020年度は, わが国における麻疹排除認定(2015年3月)から5年後の調査となり, 抗体保有状況調査は, 今後の麻疹対策および麻疹排除の維持を継続していくうえで重要である。
調査対象
2020年度の麻疹感受性調査は18道府県で実施され, 麻疹のゼラチン粒子凝集(PA)抗体価は各道府県衛生研究所において測定された。なお, 本調査の採血時期は, 原則として毎年7~9月であり, 2020年度は3,828名の抗体価が報告された。
抗体保有状況
2020年度の年齢/年齢群別麻疹抗体保有状況を示す(図1)。1:16以上のPA抗体保有率は, 全体で96.3%(3,685/3,828名)であった。年齢群別にみると, 0~5か月(62.5%), 6~11か月(19.0%), 1歳(69.8%), 10歳(93.3%), 17歳(92.3%), 19歳(93.9%), 20歳(94.7%), 41歳(92.3%), 65歳(90.0%), 66歳(93.8%), 68歳(91.7%)以外では95%以上の高い抗体保有率であった。また, 麻疹あるいは修飾麻疹の発症予防の目安とされるPA抗体価1:128以上についてみると, 全体で85.3%(3,267/3,828名)の抗体保有率であった。
2006年度から15年間の1歳児麻疹PA抗体保有率(1:16以上)を示す(図2)。2020年度の1歳児の抗体保有率は69.8%で, 2019年度の81.6%から11.8ポイント減少した。
まとめ
2020年度の2歳以上麻疹PA抗体保有率は, 一部の年齢(10, 17, 19, 20, 41, 65, 66, 68歳)でわずかに95%を下回っていたものの, おおむね95%以上の高い抗体保有率を維持していた。2020年以降の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行で, 定期接種(1歳と小学校入学前1年間の2回接種)の一時的な接種控えが発生し1), 厚生労働省2)ならびに日本小児科学会1)では予防接種を遅らせないように積極的な勧奨を行っていた。しかしながら, 2019年度81.6%であった1歳児の麻疹PA抗体保有率(抗体価1:16以上)は, 2020年度調査では69.8%と, 11.8ポイント低下していた。
また, すべての年齢層にPA抗体価1:128未満の低い抗体価の者が存在することから, 国内における麻疹の排除状態を維持するためには, 引き続き高い抗体保有率を維持するとともに, 接種控えを解消して, 定期接種対象者における高い予防接種率・抗体保有率の維持が重要である。
参考文献
- 公益社団法人日本小児科学会:新型コロナウイルス感染症流行時における小児への予防接種について
http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=345(2021年8月7日アクセス) - 厚生労働省:遅らせないで!子どもの予防接種と乳幼児健診
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11592.html(2021年8月7日アクセス)