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デング熱の海外流行状況

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デング熱の海外流行状況

(IASR Vol. 36 p. 46-47: 2015年3月号)

デング熱は蚊媒介感染症であり、主に熱帯および亜熱帯地域でみられる()。近年、都市部やその周辺で感染が増加しており、国際的な公衆衛生上の問題となっている。デング熱の発生率は世界的に最近数十年で急激な増加を示しており、現在、世界人口の40%以上、つまり25億人以上に感染リスクがあるとされている。また、世界で毎年5,000万人~1億人がデング熱に感染しているとの試算も出されている。1970年以前の重症デング熱流行域は9カ国のみであったが、サーベイランス体制の強化もあり、今や100カ国以上に及んでいる。デング熱は、アフリカ大陸、東地中海地域の他、特にアメリカ大陸、東南アジア、西太平洋地域では深刻な状況である1)。以下、各地域の情報を示す(報告数はいずれも2014年累積数で、2015年1月12日時点)。

西太平洋地域2)
中国では、2014年7月頃より広東省で流行し始め、45,171人の患者が報告されている。これは過去最多であった1995年の5,300人を大きく超える数字である。台湾においても同様に南部を中心に2013年の853人を大きく超える15,765人が報告されている3)。マレーシアでは103,610人と2013年の同時期に比べて約2.5倍増加、一方、フィリピンでは90,503人と近年に比べて半分程度に減少した。シンガポールでは17,992人と2013年と同程度、例年より多い報告数である。カンボジアでは3,543人と2008年以降一番少ない報告数であり、ラオスでは1,695人と大流行した昨年に比べ減少し、例年と同程度、ベトナムでは17,766人と例年に比べ40%程度少なく推移している。総じてメコン地域では例年に比べて報告数が少ない傾向にあった。オーストラリアでは1,434人と例年同様の傾向を示しており、クイーンズランド州では1型デング熱がみられている4)。太平洋諸島では10年以上発生がなかったデングウイルス3型がみられており、フランス領ポリネシアでは1型デング熱がみられている。その他、フィジーやソロモン諸島、ツバル、クック諸島等でデング熱の流行がみられている1)

南東アジア地域
タイでは全国的に患者がみられ、77県から22,873人が報告されている5)。これは例年と同程度の報告数であった6)。インドでは36,486人であり、近年増加傾向であるが、2014年は2013年の半分程度であった7)。スリランカでは46,000人以上と、過去5年で最も多い報告数であった8)

アメリカ大陸9)
2013年には米国フロリダ州で患者が発生し、南米においても患者が増加した。2014年の報告数は北米・中米・メキシコでは284,052人と、2013年より少ないものの2012年と同程度である。その他に、アンデス地域では244,840人、その他の南米では592,198人、ヒスパニック系カリブ海地域では13,295人、その他のカリブ海地域では9,963人となっている。

ヨーロッパ10)
ヨーロッパはデング熱の常在地ではないが、2010年にはフランスとクロアチアで地域内伝播が確認され、2012年にはポルトガル領マデイラ諸島で地域内アウトブレイクが発生した。2014年にもフランスのプロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域で計4例の地域内伝播が確認された。

アフリカ
アフリカでは、データが乏しく、限られている西サハラ、モロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビアを除くすべての地域で、媒介蚊であるネッタイシマカの存在が確認されている。34カ国でデング熱が確認され、そのうち22カ国で渡航歴のない症例が確認されている。また、血清型は4つの型すべてが循環している11)

最後に
近年、デング熱は世界的な広がりをみせており、2014年には日本においてもデング熱の国内発生例が報告された。今後、日本から流行地への旅行者だけでなく、流行地から日本への旅行者増加も見込まれており、デング熱の世界的な流行状況を注視することが重要である。

 
参考文献

 

国立感染症研究所
実地疫学専門家養成コース 加藤博史
感染症疫学センター 山岸拓也 有馬雄三

 

 

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