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IASR 44(10), 2023【特集】HIV/AIDS 2022年

(IASR Vol.44 p151-153:2023年10月号)(2023年10月27日黄色部分訂正)

わが国は、1984年9月にエイズ発生動向調査を開始し、1989年2月~1999年3月はエイズ予防法、1999年4月からは感染症法のもとに施行してきた。診断した医師には全数届出が義務付けられている(届出基準はhttps://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-07.html(外部サイトにリンクします))。本特集の統計は、厚生労働省エイズ動向委員会: 令和4(2022)年エイズ発生動向年報に基づいている(同年報は厚生労働省健康局結核感染症課より公表されている:https://api-net.jfap.or.jp/status/japan/nenpo.html(外部サイトにリンクします))。

届出は、HIV感染者とAIDS患者に分類される(定義は次ページ脚注注)の通り)。1985~2022年の累積報告数(凝固因子製剤による感染例を除く)は、HIV感染者23,863(男性21,249、女性2,614)、AIDS患者10,558(男性9,658、女性900)である(図1)。なお、「血液凝固異常症全国調査」(2022年5月31日現在)によると、血液凝固因子製剤による感染者は累積1,440(死亡者739)である。2022年、世界中で約3,900万人のHIV感染者/AIDS患者がおり、年間約130万人の新規感染者、約63万人の死亡者が出ていると推定されている(UNAIDS FACT SHEET:https://www.unaids.org/en/resources/fact-sheet(外部サイトにリンクします))。

本邦の2022年のHIV/AIDS報告数

2022年の新規報告数は、HIV感染者632(男性609、女性23)、AIDS患者252(男性237、女性15)であった(図2)。HIV感染者およびAIDS患者の年間新規報告数は前年より減少した。HIV感染者とAIDS患者を合わせた新規報告数に占めるAIDS患者の割合は2022年は28.5%であり、2021年(29.8%)より減少したものの、2019年(26.9%)と比較し高い水準であった。HIV感染者632中、日本国籍者は527(男性515、女性12)、外国国籍者は105(男性94、女性11)、AIDS患者252中、日本国籍者は208(男性202、女性6)、外国国籍者は44(男性35、女性9)であった。日本国籍男性のHIV感染者年間新規報告数は2021年に8年ぶりに前年から増加したが、2022年は再び前年より減少した。日本国籍男性のAIDS患者新規報告数は2年連続で前年より減少した。外国国籍男性と外国国籍女性について、2022年のHIV感染者年間新規報告数、AIDS患者年間新規報告数ともに前年より減少した。日本国籍女性について、2022年のHIV感染者年間新規報告数、AIDS患者年間新規報告数ともに前年より増加した。

HIV感染者新規報告において、男性同性間性的接触(両性間性的接触を含む)が全体の70.1%(443/632)〔日本国籍男性HIV感染者の中での同性間性的接触の割合は74.8%(385/515)(図3)〕で、その大多数は20~40代であった(図4)。これに対し男性の異性間性的接触による感染は全体の12.8%(81/632)、日本国籍男性HIV感染者の中での異性間性的接触の割合は12.4%(64/515)であった。日本国籍女性HIV感染者12のうち、全例が異性間性的接触であった。

母子感染は外国国籍男性のHIV感染者に1件、静注薬物使用は外国国籍男性のAIDS患者に1件報告された。

HIV感染者の推定感染地域

1992年までは海外での感染が主であったが、それ以降は国内感染が大部分である。2022年のHIV感染者の推定感染地域は、国内感染が全体の83.5%(528/632)、日本国籍者の87.7%(462/527)であった。

報告地(医師により届出のあった地)

地域別では、東京都を含む関東・甲信越(HIV感染者316、AIDS患者113)、近畿(HIV感染者102、AIDS患者32)、九州(HIV感染者78、AIDS患者45)、東海(HIV感染者67、AIDS患者27)に多い。都道府県の人口10万対では、HIV感染者は東京都が最も多く、AIDS患者は沖縄県が最も多かった〔 表の脚注を“注)( )内は20201年の報告数”から“注)( )内は2021年の報告数”へ修正しました〕。

診断時のCD4値

2019年から診断時CD4値が発生届の項目に追加され集計が開始された。2022年新規報告のうち、CD4値の記載のあったものはHIV感染者で49.2%(311/632)、AIDS患者で59.5%(150/252)であった。CD4値の記載のあった2022年HIV感染者新規報告のうち、CD4値<200/μLの割合は27.7%(86/311)〔2021年: 28.0%(103/368)〕であった(図5)。

参考情報1:献血者のHIV陽性率

HIV陽性件数および献血10万件当たりHIV陽性件数は近年減少傾向の中で、2020年(献血件数5,024,859件中44件陽性、10万件当たり0.876)は6年ぶりに増加したが、2021年〔献血件数5,086,003件中37件(男性35件、女性2件)陽性、10万件当たり0.727〕、2022年〔献血件数4,994,576件中33件(男性32件、女性1件)陽性、10万件当たり0.661〕は2年連続で減少した(図6)。

参考情報2:自治体が実施したHIV抗体検査

自治体が実施する保健所等におけるHIV抗体検査実施件数は、2020年(68,998件)、2021年(58,172件)に2019年(142,260件)の半数以下に大きく減少し、2022年(73,104件)は前年より増加したものの、2019年と比較すると約半数にとどまっている(図7)。陽性件数は2022年269件(2019年437件、2020年290件、2021年293件)、陽性率は2022年0.37%(2019年0.31%、2020年0.42%、2021年0.50%)であった。うち保健所での検査陽性率は2022年0.31%(129/42,006)、自治体が実施する保健所以外での検査における陽性率は2022年0.45%(140/31,098)で、後者での検査の陽性率が高かった。

まとめ

HIV感染者年間新規報告数とAIDS患者年間新規報告数はいずれも前年より減少した。2022年のHIV感染者とAIDS患者を合わせた新規報告数に占めるAIDS患者の割合は28.5%であり、前年より減少したものの2019年の26.9%と比較し高い水準であった。2022年の保健所等における検査件数は、2021年より増加したものの、2019年と比較すると約半数にとどまっている。国内で2020年1月に初めて報告された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行にともない、保健所等でのHIV検査が縮小され、検査機会の減少等の影響で無症状感染者が診断に結び付いていない可能性に十分留意する必要がある(IASR 42: 213-215、2021 HIV/AIDS 2020年)。

HIV感染症は根治はできないものの、適切な治療で血中ウイルス量を抑制することにより、免疫機能を維持・回復し良好な予後を見込むことが可能となり、性交渉による他者への感染を防げることも明らかとなっている。引き続きエイズ予防指針に基づいた予防対策を進め、人権に配慮したうえで、HIV感染者、AIDS患者の早期診断、早期治療のために検査の必要性を広報し、多様な場面での検査機会の提供、および自治体での検査体制をより充実させることが求められる。

注)HIV感染者

感染症法に基づく届出基準に従い「後天性免疫不全症候群」と診断されたもののうち、AIDS指標疾患(届出基準参照)を発症していないもの。

注)AIDS患者

初回報告時にAIDS指標疾患が認められAIDSと診断されたもの(既にHIV感染者として報告されている症例がAIDSと診断された場合には含まれない)。ただし、1999(平成11)年3月31日までのAIDS患者には病状変化によるAIDS患者報告が含まれている。

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