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エキノコックス症

更新日 (last updated):2025年10月2日

概要

エキノコックス症は、エキノコックス属条虫の幼虫を病原体とする感染症である。寄生する条虫種により、多包条虫による多包虫症と、単包条虫による単包虫症に分かれる。主な感染経路は、感染したキツネやイヌなどの糞便中の虫卵を経口摂取することによる。長期間無症状で経過後肝腫大、黄疸、肝機能障害を起こす。多包虫症ではさらに進行すると多臓器浸潤、胆道閉塞などを起こす。

病原体

エキノコックス症の原因寄生虫は、エキノコックス属の条虫(多包条虫・単包条虫)の幼虫である。自然界ではキツネやイヌを成虫の寄生する終宿主とし、多包条虫は野ネズミ、単包条虫はヒツジやヤギを幼虫の寄生する中間宿主として生活環が維持されている。

疫学

多包条虫は北半球の寒冷地に広く分布している。日本国内では北海道を中心に年間20から30例程度が報告されている。

単包条虫は地中海周辺から中東を中心に、世界中の牧羊が盛んな地域に広く分布している。日本国内では年間0から2例程度の輸入例と推測される報告がされている。

感染経路

主な感染経路は、終宿主であるキツネやイヌの腸管内で成虫が産卵した虫卵が糞便中に排出され、それに汚染された水や、キツネやイヌに触れた手を介して経口摂取することによる。ヒトからヒトへの感染や、幼虫が寄生した肉の摂取による感染は確認されていない。

臨床像

潜伏期間は数年から十数年程度。

単包虫症では嚢胞の増大により肝腫大や腹痛、肝機能障害、胆道閉塞による黄疸などを呈する。

多包虫症では単包虫症と同様の症状に加え、進行すると周辺臓器への浸潤、脳転移による意識障害やけいれんを起こすことがある。

病原体診断

臨床診断に加え、抗体検査による。最終的な病原体診断は手術により摘出された寄生臓器からの包虫の検出による。

治療

寄生部位の外科的切除による治療が行われる。多包虫症の進行例では術後に抗寄生虫薬による治療を併用する。

予防法・ワクチン

流行地域では生水の使用を避ける。野生動物に触れないようにし、触れた場合は手洗いを徹底する。

国内で承認されたワクチンはない。

法的取り扱い

感染症法における四類感染症に定められている。

関連情報

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