侵襲性インフルエンザ菌感染症
概要
インフルエンザ菌感染症は、インフルエンザ菌を病原体とする感染症である。主な感染経路は飛沫感染と接触感染である。上気道炎や中耳炎などの症状を呈し(非侵襲性インフルエンザ菌感染症)、重症化すると髄膜炎や敗血症(侵襲性インフルエンザ菌感染症)を起こす。
特にインフルエンザ菌b型(Hib)による感染は乳幼児髄膜炎の原因菌として知られている。
病原体
原因菌はヘモフィルス属のグラム陰性の小型球桿菌であるインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)である。莢膜を持つ有莢膜株と莢膜を持たない無莢膜株に分類される。有莢膜株はaからfの血清型に分類される。
疫学
欧米でのHibによる髄膜炎の罹患率はHibワクチン導入前に5歳未満で高かったが、導入後はほとんど認められなくなった。
日本国内ではHibワクチンが定期接種化される以前の2008年から2010年には、Hibによる髄膜炎の発症頻度は5歳未満小児人口10万人あたり7.5から8.2と報告されていたが、Hibワクチン定期接種化後の2014年には、Hib罹患はほとんど認められなくなった。
Hibワクチン普及後、侵襲性感染症の原因として分離されるインフルエンザ菌は主に無莢膜株である。
感染経路
主な感染経路は飛沫感染と接触感染である。
臨床像
潜伏期間は不明である。発熱のみで感染巣が不明な場合が多いが、血流を介して全身に拡がり、乳幼児では髄膜炎、成人では肺炎に移行することがある。髄膜炎では頭痛、発熱、首の硬直、けいれん、意識障害などがみられる。
病原体診断
髄液や血液などの無菌部位からの菌の分離・同定、遺伝子検出による。
治療
抗菌薬による治療が行われる。
予防法・ワクチン
手洗いや咳エチケットなどの飛沫予防策、接触予防策が有効である。
Hibに対してはHibワクチンが有効であり、乳児期に定期接種として五種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)が用いられている。
法的取り扱い
侵襲性インフルエンザ菌感染症は、感染症法における、五類感染症の全数把握対象疾患に定められている。