アフリカ大陸におけるクレードIによるエムポックスの流行について(第3報)
2025年3月28日時点
国立感染症研究所
概要
- 2022年5月以降、エムポックスが世界的に流行し、2022年7月、世界保健機関(WHO)は国際的な公衆衛生上の緊急事態(Public Health Emergency of International Concern; PHEIC)を宣言した。この流行を起こしたモンキーポックスウイルス(別名 エムポックスウイルス:MPXV)はクレードIIbが主体であったが、その後感染者は減少し、2023年5月に緊急事態に該当しないとされた。
- コンゴ民主共和国(Democratic Republic of the Congo; DRC)では以前よりMPXV クレード Iによるエムポックスの流行が継続しており、2023年に過去最大の感染者数・死亡者数が報告された。クレードIにはIaとIbという2つのサブクレードが確認されており、これらの疫学的様相は異なっている。DRC国内では男女間及び同性間での性的接触、家庭内感染により感染が拡大していると報告されている。
- 2024年7月以降、DRCおよびその東側に位置するウガンダ、ルワンダ、ブルンジ、ケニアでMPXV クレード Ibの国内での流行が報告されており、クレードIaも少数ながらコンゴ共和国、中央アフリカ共和国などDRCの西側、北側諸国から報告されている。欧米諸国、中国、タイなどではDRCやウガンダからの輸入症例と考えられるクレードIb感染事例が報告され、DRC国内と周辺国における感染拡大とアフリカ域外への波及が懸念される状況にある。
- MPXV クレード Iの感染がDRCおよびその周辺国でひろがっていることから、アフリカ地域での感染拡大のリスクは高いと考えられ、発生国への渡航者で散発的に感染者が発生する可能性がある。一方で、アフリカ地域外では流行国への渡航者とその接触者における限局的な発生にとどまっており、アフリカ地域外の国で流行が拡大する可能性は引き続き低いと考えられる。特に日本は欧米諸国と比較して流行国との人流も多くなく、現時点で日本国内に輸入される可能性は低いと考えられる。
- 流行国への渡航者は、性別や性的指向に関わらず、現地でのリスク行動を避けることが求められる。また、MPXV クレード IはMPXV クレード II よりも重症化するリスクが高い可能性が指摘されており、診断、治療体制の整備や疫学調査といったエムポックス対策の継続が必要である。一方で、クレードIbについては従来の報告よりも致命率が低いとの知見が蓄積されてきている。ただし、治療薬やワクチンの有効性に関しては引き続き知見の集積が必要である。