A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
概要
A群溶血性レンサ球菌感染症は、A群β溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)を病原体とする感染症である。主な感染経路は飛沫感染および接触感染である。咽頭炎や膿痂疹、猩紅熱、劇症型溶血性レンサ球菌感染症など多様な疾患を引き起こす。
病原体
原因菌はA群β溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)である。A群β溶血性レンサ球菌はグラム陽性の球菌で、様々な毒素や酵素を分泌し、多様な症状の原因となる。
疫学
咽頭炎は学童に多く、冬季と、春から初夏の、2つの流行のピークがある。家庭や学校での集団感染が多い。一方で劇症型溶血性レンサ球菌感染症は成人に多い。
感染経路
感染経路は、主に飛沫感染・接触感染である。急性期が最も感染性が高く、集団生活での感染が問題となる。
臨床像
咽頭炎の潜伏期間は2から5日であり、発熱、咽頭痛、倦怠感、嘔吐などの症状を呈する。猩紅熱では特徴的な紅斑やいちご舌、落屑がみられる。急性糸球体腎炎やリウマチ熱などの合併症を呈することがある。 突発的かつ急速に多臓器不全に進行する劇症型溶血性レンサ球菌感染症を起こすことがある。
病原体診断
診断は、感染部位からの病原体の分離による。咽頭炎では咽頭ぬぐい液を用いた迅速診断キットも有用である。
治療
ペニシリン系抗菌薬、マクロライド系抗菌薬による治療が行われる。
予防法・ワクチン
患者との濃厚接触を避けることが最も重要である。手洗いや咳エチケットが有効である。承認されたワクチンはない。
法的取り扱い
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、感染症法では五類感染症の小児科定点把握対象疾患に定められている。劇症型溶血性レンサ球菌感染症は感染症法では五類感染症の全数把握対象疾患に定められている(劇症型溶血性レンサ球菌感染症は β 溶血を起こす溶血性レンサ球菌による感染症が報告対象であり、A群以外も含まれる)。 学校保健安全法では、条件によっては第三種感染症の「その他の感染症」に定められている。
病原体検出マニュアル
関連情報
無し
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更新日(last updated):2025年4月28日
最終確認日(last reviewed):2025年4月28日