劇症型溶血性レンザ球菌感染症(STSS)
概要
劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS:streptococcal toxic shock syndrome)は、通常無菌的な部位にβ 溶血性のレンサ球菌(A群、B群、C群、G群など)の毒素産生株が侵入することで発症する感染症である。感染経路は不明な症例が多い。突然発症する例が多く、急激に進行し、ショック状態から死に至ることがある。致命率は30から40%である。
小児が多く罹患するA群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)とは区別される。
病原体
原因菌はβ溶血性を示すレンサ球菌である。A群溶血性レンサ球菌(主にStreptococcus pyogenes)が主な原因菌である。その他、B群(主にS. agalactiae)、C及びG群(主にS. dysgalactiae subsp. equisimilis)の溶血性レンサ球菌なども原因菌となる。
疫学
1987年に米国で最初に報告され、欧州やアジアでも報告がある。
日本国内では通年で全国から報告がある。
感染経路
感染経路が不明な症例が多く、感染症発生動向調査においては、推定感染経路として接触感染・創傷感染の記載がある届出が多くみられている。
臨床像
重篤な基礎疾患を持っていないにもかかわらず突然発症する例が多く、四肢の疼痛、腫脹、発熱、血圧低下が初期症状である。発症後数十時間以内には軟部組織壊死や多臓器不全へ進展し、死に至ることがある。ショック症状に加えて肝不全、腎不全、急性呼吸器窮迫症候群、播種性血管内凝固症候群、軟部組織炎、全身性紅斑性発疹、中枢神経症状のうち2つ以上を伴う場合にSTSSとして届出の対象となる。致命率は30から40%である。
病原体診断
血液などの無菌的部位からの菌の分離・同定による。
治療
初発時のショックへの対応が重要であり、輸液、人工呼吸、透析などの集中治療が必要である。さらに、迅速な感染源の外科的切除(デブリドマン) と抗菌薬による治療が行われる。
予防法・ワクチン
手洗いや咳エチケットなどの基本的な感染予防策、傷口を清潔に保つよう徹底することが重要である。
国内で承認されたワクチンはない。
法的取り扱い
感染症法における、五類感染症の全数把握対象疾患に定められている。
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