中東呼吸器症候群(MERS)
更新日 (last updated):2025年6月26日
概要
中東呼吸器症候群(MERS:Middle East Respiratory Syndrome)はMERSコロナウイルスを病原体とする重症呼吸器感染症である。主な感染経路は、自然宿主であるヒトコブラクダとの接触、ラクダの未加熱肉・未殺菌乳の摂取や、患者との接触などにより感染する。発熱、咳、息切れなどの症状を呈し、重症化すると急速に肺炎に進行し、多臓器不全や敗血症性ショックを伴い、死亡することがある。
病原体
MERSコロナウイルスはコロナウイルス科ベータコロナウイルス属に属する1本鎖RNAウイルスで、自然宿主はヒトコブラクダとされる。
疫学
2012年9月に初めて確認されて以降、サウジアラビアやアラブ首長国連邦など中東地域で広く発生しており、海外では中東地域への渡航者を介した流行も報告されている。日本においては患者の報告はない。
感染経路
主な感染経路は飛沫感染や接触感染である。自然宿主であるヒトコブラクダ(特に幼若ラクダ) との接触、ラクダの未加熱肉・未殺菌乳の摂取や、患者との接触などにより感染する。
臨床像
潜伏期間は2から14日間(通常5日程度)。主な症状は、発熱、咳、息切れなどで、重症化すると急速に肺炎に進行し、多臓器不全や敗血症性ショックを伴い死亡することがある。
病原体診断
ウイルスの分離・同定、ウイルス遺伝子検出による。
治療
特異的な治療法はなく、対症療法が中心である。
予防法・ワクチン
流行地域でのヒトコブラクダとの接触、ラクダの未加熱肉・未殺菌乳の摂取や、患者との接触を避ける。手洗いや咳エチケットなどが有効である。
承認されたワクチンはない。
法的取り扱い
感染症法では二類感染症に定められている。