トキソプラズマ症
概要
トキソプラズマ症は、Toxoplasma gondiiを病原体とする感染症である。主な感染経路は、経口感染および経胎盤感染である。発熱やリンパ節腫脹などの症状を呈す。胎児や免疫不全者などでは、脳炎や網脈絡膜炎などの重篤な症状を引き起こし、死に至ることがある。
病原体
トキソプラズマ症の病原体は、Toxoplasma gondiiという原虫である。ネコ科動物を終宿主とし、その他の哺乳類や鳥類などの温血動物を中間宿主として生活環が維持されている。
疫学
世界では、人口の三分の一以上が既に感染していると言われており、特にブラジル、ドイツ、フランス、インドネシアなどで感染率が高い。
日本では概ね10%程度の感染率であると推定されている。
感染経路
主な感染経路は、終宿主であるネコ科動物の糞便とともに排出されたオーシストの摂取による経口感染および、中間宿主であるその他の哺乳動物、鳥類の中枢神経系、筋肉内に形成された組織シストの摂取による経口感染と、初感染母体から児への経胎盤感染である。組織シストによる感染として輸血や臓器移植での感染も報告されている。
臨床像
潜伏期間は通常数日から1週間程度。
多くは無症状または軽いインフルエンザ様症状で、発熱・リンパ節腫脹・筋肉痛がみられる。トキソプラズマは一度感染すると二度と排除することができず生涯感染が続くので、抗体陽性率=感染率となる。
感染者の免疫不全状態などで、潜伏感染していたトキソプラズマが再活性化して、後天性トキソプラズマ症が引き起こされると、脳炎や網脈絡膜炎などの重篤な症状を引き起こし、死に至ることがある。
また、未感染の妊婦が妊娠中に初感染した場合、トキソプラズマが胎児へと移行し先天性トキソプラズマ症となることがある。死産、流産、あるいは胎児に網脈絡膜炎、脳内石灰化、水頭症などの重篤な症状を引きおこすことがある。
病原体診断
血清学的検査または病原体の遺伝子検出による。
治療
先天性及び後天性トキソプラズマ症では抗原虫薬による治療が行われる。
予防法・ワクチン
肉や貝類は中心部まで十分過熱し、生水の摂取を避ける。 猫の糞や土に触れる場合、手袋の着用や作業後の手洗いが重要である。
国内で承認されたワクチンはない。
法的取り扱い
感染症法、学校保健安全法では定められていない。
