ダニ媒介脳炎
更新日 (last updated):2025年5月23日
概要
ダニ媒介脳炎は、ダニ媒介脳炎ウイルスを病原体とする感染症である。主にダニ刺咬によって感染し、発熱、頭痛などで発症し、髄膜脳炎に進行する。ヨーロッパ・アジアに広く分布し、日本では極東亜型のウイルスによるダニ媒介脳炎が報告されている。
病原体
原因ウイルスであるダニ媒介脳炎ウイルスは、フラビウイルス科オルソフラビウイルス属に属する1本鎖プラス鎖RNAウイルスである。
疫学
ダニ媒介脳炎ウイルスは極東亜型、シベリア亜型、ヨーロッパ亜型に分類される。ヨーロッパ亜型は中欧を中心とした欧州諸国、シベリア亜型はシベリアから北欧、極東亜型は日本から中国、モンゴル、シベリアに分布している。近年ダニ媒介脳炎の報告数はいずれの地域でも増加傾向にある。日本では1993年に北海道南部において患者が初めて発生し、現在も北海道において流行が認められる。
感染経路
感染経路は主にウイルスを保有したマダニに咬まれることによる。媒介マダニの種類は地域により異なり、日本ではヤマトマダニやシュルツェマダニが関与している。また、ダニ媒介脳炎ウイルスに感染したヤギ、ウシおよびヒツジ等の反芻獣の生乳および乳製品の摂取による経口感染も欧州から報告されている。
臨床像
感染者の70%から98%は発症せず無症状である。潜伏期間は2から28日間で、発熱、頭痛などで発症し髄膜脳炎へ進行する。重症例では上肢などの麻痺や意識障害を呈するが、重症度は亜型によって異なる。極東亜型は致命率が高く、回復後も重篤な神経症状を残すことがある。
病原体診断
血液や髄液からのウイルスの分離、ウイルス遺伝子の検出、血清学的検査などによる。
治療
特異的な治療法はなく、対症療法が中心である。
予防法・ワクチン
マダニに刺されないために忌避剤の使用や肌の露出を避けるといった対策が推奨される。また、感染したヤギやウシ等の生乳を摂取した場合、感染する可能性があることから、生乳や加熱処理されていない乳製品の喫食は避けるべきである。ダニ媒介脳炎ワクチンが有効であり、日本では2024年に承認された。
法的取り扱い
感染症法では四類感染症に定められている。
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