IASR 43(10), 2022【特集】HIV/AIDS 2021年
公開日:2022年10月25日
(IASR Vol.43 p221-223;2022年10月号)
わが国は、1984年9月にエイズ発生動向調査を開始し、1989年2月~1999年3月はエイズ予防法、1999年4月からは感染症法の下に施行してきた。診断した医師には全数届出が義務付けられている(届出基準:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-07.html(外部サイトにリンクします))。本特集の届出患者の統計は、厚生労働省エイズ動向委員会:令和3(2021)年エイズ発生動向年報に基づいている(同年報は厚生労働省健康局結核感染症課より公表されている:http://api-net.jfap.or.jp/status/japan/nenpo.html(外部サイトにリンクします))。
届出は、HIV感染者とAIDS患者に分類される(定義は次ページ脚注(注)の通り)。1985~2021年の累積報告数(凝固因子製剤による感染例を除く)は、HIV感染者23,231(男性20,640、女性2,591)、AIDS患者10,306(男性9,421、女性885)である(図1)。なお、「血液凝固異常症全国調査」(2021年5月31日現在)によると、血液凝固因子製剤による感染者は累積1、440(死亡者732)である。2021年、世界中で約3,840万人のHIV感染者/AIDS患者がおり、年間約150万人の新規感染者、約65万人の死亡者が出ていると推定されている(UNAIDS FACT SHEET 2022:https://www.unaids.org/en/resources/fact-sheet(外部サイトにリンクします))。
本邦の2021年のHIV感染者・AIDS患者新規報告
2021年の新規報告数は、HIV感染者742(男性712、女性30)、AIDS患者315(男性300、女性15)であった(図2)。HIV感染者およびAIDS患者の年間新規報告数は近年減少傾向となっていた中で、HIV感染者年間新規報告数は2020年に前年から153件減と大きく減少し、2021年は前年から8件減少した。AIDS患者年間新規報告数は、2020年に4年ぶりに前年より増加したが、2021年は再び前年から減少した。HIV感染者とAIDS患者を合わせた新規報告数に占めるAIDS患者の割合は2021年は29.8%であり、2020年(31.5%)より減少したものの、2019年(26.9%)と比較し高い水準であった。HIV感染者742中、日本国籍者は624(男性614、女性10)、外国国籍者は118(男性98、女性20)であった。日本国籍男性のHIV感染者年間新規報告数は2020年に前年から過去最大の減少となったが、2021年は8年ぶりに前年から増加した。また、AIDS患者年間新規報告数において、日本国籍男性は2020年に7年ぶりに前年より増加したが、2021年は再び前年より減少した。外国国籍男性については、2021年にHIV感染者、AIDS患者ともに前年より減少した。日本国籍女性のHIV感染者年間新規報告数およびAIDS患者年間新規報告数は2021年に大きく減少し、1990年前後の水準となった。
HIV感染者の中では、男性同性間性的接触(両性間性的接触を含む)による感染が全体の71.6%(531/742)〔日本国籍男性HIV感染者の中での同性間性的接触の割合は75.6%(464/614)(図3)〕で、その大多数は20~40代であった(図4)。これに対し男性の異性間性的接触による感染は全体の9.8%(73/742)、日本国籍男性HIV感染者の中での異性間性的接触の割合は9.8%(60/614)であった。日本国籍女性HIV感染者10のうち、異性間性的接触が7、その他不明が3であった。
母子感染は日本国籍男性のHIV感染者に1件、静注薬物使用は日本国籍男性のAIDS患者に1件報告された。
HIV感染者の推定感染地域
1992年までは海外での感染が主であったが、それ以降は国内感染が大部分である。2021年のHIV感染者の推定感染地域は、国内感染が全HIV感染者の81.7%(606/742)、日本国籍者の87.7%(547/624)であった。
報告地(医師により届出のあった地)
東京都を含む関東・甲信越(HIV感染者397、AIDS患者136)、近畿(HIV感染者121、AIDS患者38)、東海(HIV感染者83、AIDS患者45)、九州(HIV感染者71、AIDS患者52)に多い。人口10万対では、HIV感染者は東京都が最も多く、AIDS患者は沖縄県が最も多かった(表)。
診断時のCD4値
2019年から診断時CD4値が発生届に追加され集計が開始された。2021年新規報告のうちCD4値の記載のあったものはHIV感染者で49.6%(368/742)、AIDS患者で66.3%(209/315)であった。CD4値の記載のあった2021年HIV感染者新規報告のうち、CD4値<200/μLの割合は28.0%(103/368)〔2020年:28.2%(107/379)〕であった(図5)。
参考情報1:献血者のHIV陽性率
HIV陽性件数および献血10万件当たりHIV陽性件数は、近年減少傾向の中で2020年(献血件数5,024、859件中44件陽性、10万件当たり0.876)は6年ぶりに増加したが、2021年は、献血件数5,086,003件中陽性者37件(男性35件、女性2件)、献血10万件当たり0.727(男性0.983、女性0.203)であり、2020年と比較し減少した(図6)。
参考情報2:自治体が実施したHIV抗体検査
自治体が実施する保健所等におけるHIV抗体検査実施件数は、2020年(68、998件)に2019年(142、260件)の半数以下に大きく減少し、2021年(58、172件)は前年からさらに減少した(図7)。陽性件数は2021年293件(2020年290件)、陽性率は2021年0.50%(2020年0.42%)であった。うち保健所での検査陽性率は2021年0.33%(112/34、212)、自治体が実施する保健所以外での検査における陽性率は2021年0.76%(181/23、960)で、後者での検査の陽性率が高かった。
まとめ
HIV感染者年間新規報告数とAIDS患者年間新規報告数はいずれも近年減少傾向となっていた中で、HIV感染者年間新規報告数は、2020年は前年から153件減と大きく減少し、2021年は前年から8件の減少となった。AIDS患者年間新規報告数は2020年に4年ぶりに前年より増加したが、2021年は再び前年より減少した。保健所等における検査・相談件数が2020年に前年の半数以下に減少し、2021年もさらに前年より減少しており、国内で2020年1月に初めて報告された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行にともない、保健所等でのHIV検査が縮小され、検査機会の減少等の影響で無症状感染者が診断に結び付いていない可能性に十分留意する必要がある(IASR 42:213-215,2021)。
HIV感染症は根治はできないものの、適切な治療で血中ウイルス量を抑制することにより、免疫機能を維持・回復し良好な予後を見込むことが可能となり、性交渉による他者への感染を防げることも明らかとなっている。引き続きエイズ予防指針に基づいた予防対策を進め、人権に配慮したうえで、HIV感染者、AIDS患者の早期診断、早期治療のために検査の必要性を広報し、多様な場面での検査機会の提供、および自治体での検査体制をより充実させることが求められる。
(注)HIV感染者
感染症法に基づく届出基準に従い「後天性免疫不全症候群」と診断されたもののうち、AIDS指標疾患(届出基準参照)を発症していないもの。
(注)AIDS患者
初回報告時にAIDS指標疾患が認められAIDSと診断されたもの(既にHIV感染者として報告されている症例がAIDSと診断された場合には含まれない)。ただし、1999(平成11)年3月31日までのAIDS患者には病状変化によるAIDS患者報告が含まれている。