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IASR 39(6), 2018【特集】無菌性髄膜炎患者からのウイルスの検出、2017年末現在

公開日:2018年6月19日

(IASR Vol.39 p89-91:2018年6月号

無菌性髄膜炎は、急性に発症する発熱、頭痛、嘔吐が主な症状として知られるが、項部硬直、ケルニッヒ徴候などの髄膜刺激徴候を認めることもある。ただし、新生児や乳児ではこれらの症状が明らかでないことも多い。細菌性髄膜炎との鑑別は臨床的に極めて重要であり、髄液から細菌が検出されないことに加えて、髄液検査における髄液初圧、細胞数と分画、髄液糖/血糖比、蛋白量等が鑑別に用いられる。無菌性髄膜炎は多様な病原体がその原因となり、ウイルス性ではエンテロウイルスが最も多く、次にムンプスウイルスが多いとされる。ヒトから検出されるエンテロウイルスは4つのspecies(Enterovirus A~D)に分類されるが、無菌性髄膜炎患者からの検出頻度が高いのはEnterovirus B(エコーウイルス、コクサッキーウイルスB群等)で、次にEnterovirus A〔エンテロウイルスA71(EV-A71)等〕である。

感染症法に基づく感染症発生動向調査(NESID)では、無菌性髄膜炎は5類感染症として、全国約500の基幹定点(病床数300以上の医療機関;http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000203400.pdf(外部サイトにリンクします)(PDF:337KB)が届出に必要な臨床症状や検査所見を持つ患者を毎週報告している(届出基準:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-40.htmlkansenshou11/01-05-40.html(外部サイトにリンクします))。地方衛生研究所(地衛研)は、定点医療機関等で採取された検体(髄液、便、咽頭ぬぐい液など)からの無菌性髄膜炎の病原体の分離・検出、同定を行い、その陽性結果を報告している。本特集では無菌性髄膜炎患者の発生動向と、エンテロウイルスを中心とするウイルスの動向について述べる。

患者発生状況

図1に2009~2017年の週別定点当たりの無菌性髄膜炎報告数を示す。日本では毎年夏を中心に無菌性髄膜炎の流行が報告されている。都道府県別の定点当たりの報告数は地域により差があった(参考図)。無菌性髄膜炎患者の年齢分布は0歳が最も多く、2009~2011年は10歳未満が半数以上を占めたが、2012年以降は10歳以上の報告割合が増加した(図2)。

エンテロウイルスの分離・検出

2012~2017年にはエコーウイルス(E)、コクサッキーウイルスB群(CV-B)などのエンテロウイルスが、原因病原体の56~84%を占めた(図3)。

2009~2017年に無菌性髄膜炎患者から分離・検出されたウイルスの年別分離・検出数をに示す。これらのうちCV-B5およびE-6は報告が多く、9年間にそれぞれ計344例および計548例が分離・検出された(本号6、 89ページ)。E-30による全国規模の無菌性髄膜炎の流行は、1983年〔IASR 4(10):1, 1983〕、1989~1991年(IASR 12: 163, 1991&13: 155, 1992)、1997~1998年(IASR 19: 174-175, 1998)が知られるが、2017年には北海道で、E-30を原因とする無菌性髄膜炎の地域流行が報告された(本号3ページ)。E-9による地域的な流行も報告された(本号5ページ)。手足口病の病原体として3~4年ごとに全国的な流行を引き起こすEV-A71は中枢神経疾患に関与する頻度が高いことが知られており、2013年と2017年にはそれぞれ43例および30例の無菌性髄膜炎患者からEV-A71が検出された。手足口病の流行期にEV-A71が検出された場合には、無菌性髄膜炎を含む中枢神経疾患の発生に注意を払う必要がある(本号6ページ)。

また、病原微生物検出情報に届けられた2012~2017年のE-30、E-18、E-6、CV-B5、EV-A71検出例の年齢分布およびこれらのウイルスが分離・検出された患者における無菌性髄膜炎患者の占める割合を図4に示す。ウイルスの型によってこれらの分布は異なっていた。E-6およびE-30では小児や成人の髄膜炎患者からも検出され、CV-B5とEV-A71は主に月齢の若い乳児から検出された(IASR 38:204-205,2017)。

2009~2017年に無菌性髄膜炎と診断された患者から分離・検出されたエンテロウイルスは、髄液、糞便、および咽頭ぬぐい液からが多かった(参考表)。特に分離・検出が多かったEnterovirus Bに属するE-6、E-18、E-30、およびCV-B5では、髄液が74~80%、糞便が20~43%であった。対照的にEnterovirus Aに属するEV-A71が分離・検出された無菌性髄膜炎患者の検体は、髄液が21%、糞便が63%であった。無菌性髄膜炎では、髄液のみならず、糞便、咽頭ぬぐい液など複数の検体を検査することが重要である。最近、多くのエンテロウイルスが臨床検体からの直接的PCR検出および塩基配列決定により同定されている(本号10ページ参考表)。

エンテロウイルス以外の無菌性髄膜炎起因ウイルス

図3、本号68911ページ):無菌性髄膜炎患者から検出されるエンテロウイルス以外のウイルスとしては、ムンプスウイルス(12%)、ライノウイルス(5.8%)、パレコウイルス3型(2.4%)などが多かった(各カッコ内%は2009~2017年の全報告数に占める割合、)。ライノウイルスは主に咽頭ぬぐい液から検出されており、無菌性髄膜炎発症との関連が不明確な症例が多い。ムンプス流行年にはムンプス髄膜炎が多く発生した(IASR 37:185-186, 2016)〔NESID基幹病院定点に報告された確認可能な2016年ムンプス髄膜炎35例の年齢中央値6歳(範囲2-36歳)〕。ムンプスはワクチンで予防可能な疾患であるが、おたふくかぜワクチンは日本では任意接種であり、接種率は30%程度と低く(感染症流行予測調査事業より:おたふくかぜ予防接種状況2016)、ムンプスのコントロールには不十分であったことが分かる。

おわりに

無菌性髄膜炎には流行性疾患の側面があり、病原体によって対策や注意点が異なることから、病原体の同定は重要である。平時から患者発生動向の把握と病原体サーベイランスの両方を強化しておくことが重要である。すべての基幹定点病院は、感染症発生動向調査における無菌性髄膜炎の病原体定点である。医療機関で髄膜炎の集団発生等が探知された場合には、感染症法に基づいた積極的疫学調査として病原体検索を行うことが望ましい。無菌性髄膜炎の病原体を直接的に検出(PCR、分離等)するために発症早期の髄液、便、咽頭ぬぐい液の検体採取が必要であり、特に新生児では血液検体も合わせて採取することが重要であることを強調したい。

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