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IASR 42(10), 2021【特集】HIV/AIDS 2020年

公開日:2021年10月27日

(IASR Vol.42 p213-215:2021年10月号

わが国は、1984年9月にエイズ発生動向調査を開始し、1989年2月~1999年3月はエイズ予防法、1999年4月からは感染症法の下に施行してきた。診断した医師には全数届出が義務付けられている(届出基準:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-07.html(外部サイトにリンクします))。本特集の届出患者の統計は、厚生労働省エイズ動向委員会:令和2(2020)年エイズ発生動向年報に基づいている(同年報は厚生労働省健康局結核感染症課より公表されている:https://api-net.jfap.or.jp/status/japan/nenpo.html(外部サイトにリンクします))。

届出患者は、HIV感染者とAIDS患者に分類される(定義は脚注(注)の通り)。1985~2020年の累積報告数(凝固因子製剤による感染例を除く)は、HIV感染者22,489(男性19,928、女性2,561)、AIDS患者9,991(男性9,121、女性870)である(図1)。なお、「血液凝固異常症全国調査」(2020年5月31日現在)によると、血液凝固因子製剤による感染者は累積1,440(死亡者726)である。2020年、世界中で約3,770万人のHIV感染者/AIDS患者がおり、年間約150万人の新規感染者、約68万人の死亡者が出ていると推定されている(UNAIDS FACT SHEET 2021:https://www.unaids.org/en/resources/fact-sheet(外部サイトにリンクします))。

本邦の2020年のHIV/AIDS報告数

2020年の新規報告数は、HIV感染者750(男性712、女性38)、AIDS患者345(男性328、女性17)であった(図2)。HIV感染者およびAIDS患者の年間新規報告数は近年減少傾向となっていたが、2020年のHIV感染者年間新規報告数は、1999年に感染症法の下での調査となって以降、最大の減少を示すとともに、AIDS患者年間新規報告数は2016年以来4年ぶりに増加した。HIV感染者とAIDS患者を合わせた新規報告数に占めるAIDS患者の割合は、2019年まで3年連続で減少し、2019年は26.9%であったが、2020年は31.5%に増加した。

HIV新規感染者750中、日本国籍者は619(男性598、女性21)、外国国籍者は131(男性114、女性17)で、日本国籍男性は2019年741から2020年598へと過去最大の減少となった。一方で、外国国籍男性は116から114へのわずかな減少にとどまり、外国国籍男性の占める割合が増加した。また、AIDS患者新規報告数において、日本国籍男性は281から282へわずかに増加し、外国国籍男性は37から46へ増加した。外国国籍男性の占める割合の増加は2020年以前からみられる傾向である。

HIV新規感染者の中では、男性同性間性的接触(両性間性的接触を含む)による感染が全体の72.4%(543/750)〔日本国籍男性HIV感染者の中での同性間性的接触の割合は78.1%(467/598)(図3)〕で、その大多数は20~40代であった(図4)。これに対し男性の異性間性的接触による感染は全体の8.7%(65/750)、日本国籍男性HIV感染者の中での異性間性的接触の割合は8.9%(53/598)であった。日本国籍女性HIV感染者21のうち、異性間性的接触が18、その他不明が3であった。HIV感染者中の日本国籍男性の静注薬物使用は、2001年以降2013、2017、2018年を除き、毎年1-5件報告されており、2020年は4件であった。

HIV感染者の推定感染地域

1992年までは海外での感染が主であったが、それ以降は国内感染が大部分である。2020年のHIV新規感染者の推定感染地域は、国内感染が全HIV感染者の79.9%(599/750)、日本国籍者の86.8%(537/619)であった。

報告地(医師により届出のあった地)

報告は東京都を含む関東・甲信越(HIV感染者412、AIDS患者160)、近畿(HIV感染者125、AIDS患者54)、東海(HIV感染者83、AIDS患者45)、九州(HIV感染者67、AIDS患者41)に多い。人口10万対では、HIV感染者およびAIDS患者報告数上位10位に九州の5県が含まれる()。

診断時のCD4値

2019年から診断時CD4値が感染症発生動向調査(NESID)発生届に追加され、集計が開始された。2020年新規届出のうち、CD4値の記載のあったものはHIV感染者で50.5%(379/750)、AIDS患者で68.4%(236/345)であった。CD4値の記載のあった2020年HIV感染者新規届出のうち、CD4値<200/μLの割合は28.2%(107/379)〔2019年:30.9%(142/459)〕で、前年と比較し減少した(図5)。

参考情報1:献血者のHIV陽性率

HIV陽性件数および献血10万件当たり陽性件数は近年減少傾向であったが、2020年は、献血件数5、024、859件中44件(男性41件、女性3件)の陽性者がみられ、献血10万件当たり0.876(男性1.155、女性0.203)であり、2019年〔献血10万件当たり0.782(男性1.057、女性0.074)〕と比較し増加した(図6)。

参考情報2:自治体が実施したHIV抗体検査と相談

自治体が実施する保健所等におけるHIV抗体検査実施件数は、2020年には68、998件で、前年(142、260件)の半数以下に大きく減少した(図7)。陽性件数は290件(2019年437件)、陽性率は0.42%(2019年0.31%)であった。うち保健所での検査陽性率は0.32%(150/46、901)、自治体が実施する保健所以外での検査における陽性率は0.63%(140/22、097)で、後者での検査の陽性率が高かった。また、2020年の相談件数は66、519件で前年(129、695件)の約半数へと大きく減少した。

まとめ

HIV感染者年間新規報告数とAIDS患者年間新規報告数はいずれも近年減少傾向となっていたが、2020年のHIV感染者年間新規報告数は1999年に感染症法の下での調査となって以降、最大の減少を示すとともに、AIDS患者年間新規報告数は2016年以来4年ぶりに増加した。保健所等における検査・相談件数が前年と比較し大きく減少しており、国内で2020年1月に初めて報告された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にともなう検査機会の減少等の影響で、無症状感染者が診断に結び付いていない可能性に十分留意する必要がある。AIDS患者年間新規報告数の4年ぶりの増加については、CD4値が低いHIV感染者における受診機会の遅れを一部反映している可能性がある。

HIV感染症は根治はできないものの、適切な治療で血中ウイルス量を抑制することにより、免疫機能を維持・回復することが可能となり、性交渉による他者への感染を防げることも明らかとなっている。人権に配慮した上で、HIV感染者、AIDS患者の早期診断、早期治療のための検査の必要性をこれまで以上に広報し、エイズ予防指針に基づいた予防対策、相談・検査を受けやすい体制、多様な場面での検査機会の提供、受診しやすい環境の整備等を進める必要がある。

(注)HIV感染者

感染症法に基づく届出基準に従い「後天性免疫不全症候群」と診断されたもののうち、AIDS指標疾患(届出基準参照)を発症していないもの。

(注)AIDS患者

初回報告時にAIDS指標疾患が認められAIDSと診断されたもの(既にHIV感染者として報告されている症例がAIDSと診断された場合は含まれない)。ただし、1999(平成11)年3月31日までのAIDS患者には病状変化によるAIDS患者報告が含まれている。

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