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初回供血者および検診受検者集団におけるHBs抗原陽性率の状況

公開日:2023年3月30日

(IASR Vol.44 p35-36:2023年3月号

本稿では、厚生科学研究費補助金 肝炎等克服政策研究事業「全国規模の肝炎ウイルス感染状況の把握及びウイルス性肝炎eliminationに向けた方策の確立に資する疫学研究」(研究代表者:田中純子)において実施した、統一した測定系および判定基準により検査が行われている初回供血者集団および肝炎ウイルス検査受検者集団を対象とした大規模疫学研究資料に基づき、年齢階級別のHBs抗原陽性率の動向について疫学的視点から紹介したい。

1.初回供血者集団におけるHBs抗原陽性率

本研究班では、日本赤十字社の協力のもと、1995~2021年の全初回供血者を5期(【BD-a】:1995~2000年3,485,648人、【BD-b】:2001~2006年3,748,422人、【BD-c】:2007~2011年2,720,727人、【BD-d】:2012~2016年2,054,566人、【BD-e】:2017~2021年1,751,210人)に区切り、それぞれの期で年齢別にHBs抗原陽性率を算出している。なお、日本赤十字社血液センターにおけるHBs抗原スクリーニングの検査法は、2007年までは凝集法(R-PHA、日赤製)、2008~2019年7月はCLEIA法(化学発光酵素免疫法、ルミパルスプレストHBs Ag-N、富士レビオ)、2019年8月以降はCLIA法(化学発光免疫測定法、Abbott Architect、アボット)により行われている。初回供血者集団におけるHBs抗原陽性率を図1に示す。HBs抗原陽性率は、1995~2000年【BD-a】では0.63%、2001~2006年【BD-b】では0.31%、2007~2011年【BD-c】では0.20%、2012~2016年【BD-d】では0.18%、2017~2021年【BD-e】では0.13%をそれぞれ示し、調査時期が近年でより低い値を示している。

2.健康増進事業による検査受検者集団におけるHBs抗原陽性率

2002年からの5年間に老人保健事業の一環として実施された一般住民を対象とした肝炎ウイルス検診は、その後も、健康増進事業による肝炎ウイルス検査として継続されている。本節では、同検査受検者集団におけるHBs抗原陽性率を紹介する。

健康増進事業による異なる2時期の検査受検者(2008~2012年3,566,689人、2013~2017年4,238,000人)を対象としたHBs抗原陽性率は2008~2012年受検者で1.02%、2013~2017年受検者では0.71%であった。さらに、出生年別HBs抗原陽性率を平滑化により算出した結果を図2に示す。若い出生年集団ではHBs抗原陽性率は低い傾向が認められる。また、2時期の比較では、時期が近年である2013~2017年調査でのHBs抗原陽性率が出生年によらず低値を示した。

最後に、2013~2017年の肝炎ウイルス検査受検者集団とほぼ同時期の2012~2016年の初回供血者集団【BD-d】を用いて、出生年・全国8ブロック別に算出したHBs抗原陽性率を前ページ図3に示す。出生年が後年の集団(若年齢集団)ではいずれの地域でもHBs抗原陽性率が低かった。一方、高年齢集団においてはやや地域差がみられた。いずれの地域でも、検査受検者集団のHBs抗原陽性率は初回供血者集団と同程度の値を示している。

おわりに

本稿では、大規模集団におけるHBs抗原陽性率の年齢分布および経年推移を紹介した。わが国でHBV母子感染防止事業が開始された1986年以後に出生した集団のHBs抗原陽性率は低率にとどまり、当事業による感染予防効果が示された。加えて2016年10月より開始された乳児期B型肝炎ワクチン定期接種化により、小児期の水平感染の頻度が低くなり、ウイルス肝炎eliminationに向けて加速されることが期待された。

広島大学大学院医系科学研究科
疫学・疾病制御学
田中純子

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