腸管出血性大腸菌によるアウトブレイク調査レポート, 2022年―米国
公開日:2023年5月26日
(IASR Vol.44 p80-81:2023年5月号)
米国疾病予防管理センター(CDC)は、2022年に米国の複数州にまたがり発生した腸管出血性大腸菌(EHEC)の広域アウトブレイク3事例の疫学調査概要をホームページ上に掲載した。いずれも食品媒介と結論付けられ、冷凍ファラフェルが原因の事例、牛ひき肉が原因の事例、原因食品不明の事例であった。このうち2事例からは溶血性尿毒症症候群(HUS)の症例が報告されたが、死亡者の報告はなかった。これら3事例の疫学調査の概要は以下のとおりである。
1.冷凍ファラフェル(中東に由来する豆のコロッケ様の料理)によるO121事例
本事例は、2022年10月6日にCDC、複数州の公衆衛生部局と規制部局および米国食品医薬品局(FDA)がEHEC O121感染による複数州にまたがるアウトブレイク調査(疫学調査、遡り調査、食品と環境調査)として情報収集をした。これらの調査結果からスーパーマーケットALDIストアで販売されていたEarth Grownブランドの冷凍ファラフェルに関連するEHEC O121による広域事例としてCDCのホームページに掲載された。2022年12月1日時点で、6州から24人の患者が報告された。患者は2022年7月13日~10月24日に発症し、年齢中央値は30歳(範囲:1歳未満-71歳)で女性が74%であった。情報が得られた22人中5人が入院し、1人がHUSを発症した。なお、死亡例の報告はなかった。受診せずに回復した人や検査を受けていない人が多くいることから、本アウトブレイクの実際の患者数は報告された数よりかなり多く、報告された6州以外にも患者が存在する可能性がある。
州および地方自治体の公衆衛生部局が実施した聞き取り調査で18人中15人(83%)が発症前1週間までにALDIストアで買い物をしたと回答した。ALDIストアで買い物をした15人中14人(93%)がALDIストアで購入したEarth Grownブランドの冷凍ファラフェルの喫食歴を有していた。
患者検体から分離された菌株の全ゲノム解析(WGS)の結果、これらの菌株は遺伝子配列的に近縁な株であることが判明し、共通食材由来によるアウトブレイクであることが示唆された。また、2022年10月7日、ミシガン州関連部局は、患者宅から収去したEarth Grownブランドの冷凍ファラフェルから検出された菌株の全ゲノム解析を行い、患者検体から検出された菌株と遺伝子配列的に近縁な株であることが判明し、患者が冷凍ファラフェルを喫食したことによって発症した可能性が高いことが示唆された。
公衆衛生対策として、2022年10月7日にCuisine Innovations社(ニュージャージー州)は冷凍ファラフェルのリコールを行い、CDCはリコールされた特定のロット番号の冷凍ファラフェルの喫食、販売、提供をしないよう周知した。
2.牛ひき肉によるO157:H7事例
本事例は、2022年9月14日に、CDC、複数州の公衆衛生部局と規制部局および米国農務省食品安全検査局(USDA-FSIS)が調査(疫学調査、遡り調査、食品と環境調査)した、複数州にまたがるEHEC O157:H7のアウトブレイク事例である。HelloFresh社製のミールキット(食材宅配サービス)として販売された数種類の牛ひき肉に関連したEHEC O157:H7の広域事例として、CDCのホームページに掲載され、2022年10月28日時点でアウトブレイクは終息した。
2022年10月28日時点で、6州からEHEC O157:H7に感染した7人の患者が報告された。患者は2022年6月8日~8月17日に発症し、年齢中央値は25歳(範囲:17-69歳)で、女性が43%であった。6人が入院し、HUS発症例および死亡例の報告はなかった。受診せずに回復した人や検査を受けていない人が多くいることから、本アウトブレイクの実際の患者数は報告された数よりかなり多く、報告された6州以外にも患者が存在する可能性がある。
州や地域の公衆衛生担当者は、患者に対して発症1週間前に喫食した食品の聞き取り調査を行い、調査を受けた6人全員(100%)がHelloFreshミールキットの牛ひき肉を食べたと回答した。USDA-FSISが実施した遡り調査により、複数の患者に配達されたHelloFreshミールキットの牛ひき肉がM46841の施設で製造されていたことが判明した。
患者検体から分離された菌株のWGSの結果、これらの菌株は遺伝子配列的に近縁の株であることが判明し、共通食材由来によるアウトブレイクの可能性が示唆された。
CDCは、2022年7月2日~21日に配達されたHelloFreshミールキットの牛ひき肉でUSDAの検査済み印の内側に「EST.46841」と表示があり、パッケージの側面に「EST#46841 L1 22 155」または「EST#46841 L5 22 155」と表示されたものは食べないように国民へ向けて周知をした。
3.原因食品不明のO157:H7事例
本事例は、2022年8月17日にCDC、複数州の公衆衛生部局と規制部局、FDAおよびUSDA-FSISが調査(疫学調査、遡り調査、食品と環境調査)を実施したが原因食品を特定できなかった、複数州にまたがるEHEC O157:H7によるアウトブレイク事例である。EHEC O157:H7の広域事例として、CDCのホームページにおいて2022年8月17日に第1報が報告され、2022年10月4日時点でアウトブレイクは終息した。
6州から109人の患者が確認され、その発症日は2022年7月26日~8月17日であった。患者の年齢中央値は22歳(範囲:1-94歳)で、男性が55%であった。情報が得られた97人のうち、52人が入院し、13人がHUSを発症したが、死亡者は報告されなかった。
受診せずに回復した人や検査を受けていない人が多くいることから、本アウトブレイクの実際の患者数は報告された数よりかなり多く、報告された6州以外にも患者が存在している可能性がある。
州や地域の公衆衛生担当者が、発症する前の1週間に食べた食品について聞き取り調査を行い、詳細な食歴がわかった82人のうち、68人(83%)がWendy’sで食事をしたと回答した。患者が食事をしたWendy’sは、インディアナ州、ケンタッキー州、ミシガン州、ニュージャージー州、オハイオ州、ペンシルベニア州にあった。Wendy’sで食べたものについて詳しい情報を持っていた68人のうち、46人(68%)がハンバーガーやサンドイッチに添えられていたロメインレタスを食べていた。
分離された菌株のWGSの結果、患者から分離された菌株は遺伝子配列的にごく近縁の菌株であると示され、共通の食材からの感染が示唆された。
一方、いくつかの食品が検査されたが、患者から分離された菌と類似の菌株は検出されなかった。
2022年8月19日にWendy’sは、患者が喫食したハンバーガーやサンドイッチに使用されていたロメインレタスを公衆衛生対策として廃棄した。
CDCはアウトブレイクの発生中にEHEC感染症様症状がある場合には医療機関への連絡を行うよう周知した。
出典
Reports of E.coli Outbreak Investigations from 2022
https://www.cdc.gov/ecoli/2022-outbreaks.html(外部サイトにリンクします)
抄訳担当
国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース
越湖允也 千葉紘子 大沼 恵
実地疫学研究センター
八幡裕一郎 砂川富正