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カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(carbapenem-resistant Enterobacterales: CRE)病原体サーベイランス, 2021年

公開日:2023年8月30日

(IASR Vol.44 p130-131:2023年8月号

カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)病原体サーベイランスは、通知(健感発0328第4号、2017年3月28日)に基づき実施されている。感染症発生動向調査事業年報によると、2021年第1~53週のCRE感染症の発生動向調査届出(患者報告)数は2,066例であった。本稿では、病原体検出情報システムに登録された検体採取日が2021年1月1日~12月31日の1,441株(2023年3月10日現在)の概要を示す。1,441株のうち、1,395株(96.8%)にはCRE感染症の発生動向調査届出患者由来であることを示す発生動向報告IDの記載があり、CRE感染症届出患者1,383名由来と考えられた。なお、残る46株(3.2%)には発生動向報告IDの記載がないため、保菌例など臨床的な届出基準を満たさない患者由来株が含まれる可能性があるほか、同一患者分離株の判別が困難なため、分離患者数は明確ではない。

1,441株の分離検体は、尿(n=394、27.3%)、血液・髄液(n=346、24.0%)、呼吸器検体(n=267、18.5%)、腹腔内検体(n=143、9.9%)、皮膚・軟部組織検体(n=93、6.5%)、穿刺液(n=82、5.7%)の順に多く、2020年CRE病原体サーベイランス1)とおおむね同様であった。菌種は、Klebsiella aerogenes(n=591、41.0%)、Enterobacter cloacae complex(n=370、25.7%)、Klebsiella pneumoniae(n=167、11.6%)、Escherichia coli(n=97、6.7%)、Serratia marcescens(n=54、3.7%)、Klebsiella oxytoca(n=27、1.9%)の順に多かった。上位5菌種の順は2017年以降変わっていない。最も多いK. aerogenesの割合は2017年の31.9%から年々増加していたが1)、2021年は41.0%と2020年の43.4%よりも微減した。

各検査実施数と陽性数をに示す。1,441株のうち、いずれかのカルバペネマーゼ遺伝子陽性株は217株(15.1%)であった。CRE病原体サーベイランス開始以降の各年の割合は、2018年17.6%2)、2019年16.5%3)、2020年17.4%1)であり、2021年は最も低い値となった。カルバペネマーゼ遺伝子陽性217株における、カルバペネマーゼ遺伝子型内訳は、IMP型189株(87.1%)、NDM型16株(7.4%)、KPC型2株(0.9%)、OXA-48型2株(0.9%)であった。その他の遺伝子型として、GES型5株(塩基配列決定による遺伝子型別報告内訳GES-5、n=3;GES-24、n=2)、IMI型1株、KHM型1株、FRI型1株が報告された。

IMP型陽性189株の菌種内訳は、全国ではE. cloacae complex(n=62、32.8%)、K. pneumoniae(n=57、30.2%)、E. coli(n=32、16.9%)、K. oxytoca(n=16、8.5%)の順に多かった。ブロック別では、関東甲信静はE. cloacae complex(51.7%、30/58)、近畿はK. pneumoniae(35.2%、25/71)がそれぞれ最も多かった。IMP型陽性株の68.3%にあたる21道府県からの129株では、IMP型カルバペネマーゼ遺伝子の塩基配列決定がなされた。IMP-1は18道府県の68株で、すべての地域より報告があった。IMP-6は6府県からの59株であり、うち53株が近畿、5株が東海北陸、1株は九州からの報告であった。その他の型として、関東甲信静よりIMP-11とIMP-60がそれぞれ1株ずつ報告された。以上のIMP型検出株の菌種や地域特性は、2017年以降1-4)、大きな変化はみられていない。

海外型カルバペネマーゼ遺伝子であるNDM型、KPC型、OXA-48型陽性株はあわせて20株(カルバペネマーゼ遺伝子陽性株の9.2%)であり、全報告株数(n=1,441)の1.4%を占め、2020年の1.7%1)よりわずかに減少した。20株のうち19株(95.0%)は海外渡航歴のない患者より分離され、この割合は2020年の78.3%1)に比べてさらに増加した。海外渡航歴のない患者から分離された海外型カルバペネマーゼ遺伝子陽性19株の遺伝子型内訳は、NDM型16株(NDM-1、n=4;NDM-5、n=11;NDM-7、n=1)、KPC型1株、OXA-48型2株であった。これらの株の菌種内訳は、NDM-1はK. oxytoca 3株およびProteus mirabilis 1株、NDM-5はE. coli 9株、Citrobacter freundii 1株、Citrobacter sp. 1株、NDM-7はCitrobacter koseri 1株、KPC型はK. pneumoniae 1株、OXA-48型はE. coli 2株であった。海外渡航歴のある患者からは、KPC型陽性K. pneumoniae 1株が報告された。

病原体検出情報システムに登録された1,441株を、CRE感染症届出患者数2,066例で除した値を報告率とすると69.7%となり、2020年の70.6%1)とおおむね同等であったが、77.1%であった2019年3)の水準には戻っていない。2021年のブロック別報告率は北海道東北新潟89.5%、関東甲信静65.9%、東海北陸28.1%、近畿74.3%、中国四国80.1%、九州沖縄78.2%であった。いずれのブロックも2019年の報告率3)には達していないが、北海道東北新潟、中国四国、九州沖縄ブロックでは2020年の報告率1)より上昇した。一方で、関東甲信静、東海北陸、近畿ブロックでは2020年よりさらに低下し、東海北陸ブロックでは2019年報告率に比べると16%の低下となった。都道府県別にみると、47都道府県のうち29府県(61.7%)では2021年の報告率が2020年より上昇したが、16都府県では2019年に比べて2021年の報告率が10%以上低いままであった。また、報告率が50%未満の都道府県数は、2019年4、2020年7、2021年には8となった。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応があった2020年および2021年でも、全国の報告率は約70%が維持されていたが、一部の自治体では病原体サーベイランスの実施が中断もしくは部分的な実施のみとなっていると考えられる。カルバペネマーゼ遺伝子保有状況やその推移などを正確に把握するためには、全国的かつ継続的なサーベイランスの実施が必要であり、COVID-19流行を機に実施困難となっている自治体への働きかけおよび支援が必要と考えられた。

参考文献

  1. IASR 43: 215-216, 2022
  2. IASR 40: 157-158, 2019
  3. IASR 42: 123-124, 2021
  4. IASR 39: 162-163, 2018

国立感染症研究所
薬剤耐性研究センター

感染症疫学センター

全国地方衛生研究所

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