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2022年以降の本邦麻疹届出例における確定例と取り下げ例の比較

公開日:2023年9月27日

(IASR Vol.44 p142-143:2023年9月号

背景

日本は2015年に世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局により麻疹排除の認定を受けた。以降もその状態の維持に努めており、都道府県等は、疑い症例が1例でも発生した際にはPCR検査を含む積極的疫学調査等を実施し、医師により麻疹が否定されたものについては発生届を取り下げている(取り下げ例)。認定後も輸入例が発端となった集団発生事例1)等が複数発生しているが、特に、2023年4月以降の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策としての水際対策の大きな緩和2)にともなう国際的な人の往来の増加の影響により、輸入例の増加が懸念される。

こうした状況を踏まえ、確定例の特徴や取り下げ例との相違点の把握のため、感染症サーベイランスシステムへ登録された直近の国内の麻疹届出例(取り下げ例を含む)をまとめ、確定例と取り下げ例の比較を試みた。

対象と方法

2022年1月1日~2023年6月30日に感染症サーベイランスシステムへ登録された麻疹届出例(取り下げ例含む)を評価対象とした。届出基準の臨床診断例または検査診断例に合致するものを「確定例」、届出後に取り下げとなった症例を「取り下げ例」とし、備考欄の記載を含め、積極的疫学調査の結果、検査診断等の情報を記述した。

結果

対象期間中の確定例はすべて検査診断例で29例、取り下げ例は310例であった。また年別の届出数は2022年は68例、2023年は6月30日までの時点で271例であり、前年同時期(2022年6月30日で38例)の約7倍であった。一方、確定例の割合は2022年と2023年で同程度であった()。

確定例は、取り下げ例と比較して、年齢中央値が高く(確定例34歳、取り下げ例19歳)、ワクチン接種歴なしの割合(確定例24%、取り下げ例13%)と推定感染地域が国外の症例の割合(確定例24%、取り下げ例3%)が高かった。麻疹の3主徴(発熱、発疹、カタル症状)は確定例、取り下げ例ともに80%以上、コプリック斑は取り下げ例の26%において報告されていた。またPCR検査は取り下げ例の91%で実施されていた()。

考察

結果より、2023年は確定例が相次いで発生したこともあり届出数が増加したものの、届け出られた症例のうち、確定例の割合は2022年と同様に低く、医療機関や地方衛生研究所の尽力によりPCR検査を含めた質の高い麻疹サーベイランスが実施されていると考えられた。また2022年以降の国内麻疹の確定例の特徴として、年齢中央値は30代と高く、ワクチン接種歴は国内の第1期・第2期の麻しん含有ワクチン接種率が90%台前半と報告されていることと比較して低いことが明らかとなり、COVID-19流行前の麻疹確定例の特徴3)と同様と考えられた。さらに、確定例と取り下げ例の臨床症状が類似していることから、臨床症状で麻疹を疑った場合は、ワクチン接種歴および海外渡航歴、麻疹患者との接触歴を確認し、麻疹の可能性が高いと考えられる場合は、適切な検体を用いたPCR検査を実施することが診断には重要と考えられた。

今後も海外からの輸入例を契機とした麻疹の流行が懸念されることから、現在、ワクチン接種率の目標値である95%を下回っている4)麻しん含有ワクチンの定期接種だけでなく、海外渡航歴のある体調不良者と接する可能性がある医療従事者や、特に麻疹流行国への渡航者、その他海外渡航歴のある集団と日常的に接触する職業に従事する者についてはワクチンの2回接種の完了を記録で確認しておくことが望ましい。また平時から医療機関、自治体が連携し、麻疹発生時の対応についてガイドライン等を改めて確認し、指針に基づく迅速かつ適切なサーベイランスの維持に努めていくことが必要不可欠である。

謝辞:日頃より麻疹の診療や発生動向調査にご尽力いただいております医療機関や各自治体関係者の皆様に深謝いたします。

参考文献

  1. 小林彩香ら, IASR 38: 48-49, 2017
  2. 今後の水際措置について[令和5(2023)年4月28日 内閣官房]
    https://corona.go.jp/news/pdf/mizugiwataisaku_sochi_20230428.pdf
  3. IASR 40: 49-51, 2019
  4. 国立感染症研究所, 令和3(2021)年度麻しん風しん定期予防接種の実施状況の調査結果について

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