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2022年の日本の伝播性薬剤耐性HIVの動向

公開日:2023年10月26日

(IASR Vol.44 p159-160:2023年10月号)(2024年6月6日黄色部分修正)

抗HIV治療歴のないHIV感染者において、薬剤耐性変異をもつHIVが検出される場合があり、これらの伝播性薬剤耐性および治療前薬剤耐性の動向は、初回推奨抗HIV療法の選択や予防投与の選択に必要な基礎情報である。

全国の医療機関の協力のもと、2003年から研究班において新規未治療HIV感染者の伝播性薬剤耐性の動向調査を行っており1)、2022年(1~12月)は364例の新規登録例を解析した。これは、この期間にエイズ発生動向調査で報告されたHIV感染者とAIDS患者の合計を分母とすると、約41.1%に相当する。

2022年新規登録例のサブタイプ・CRF(circulating recombinant form)は、B: 79.3%、CRF01_AE: 10.1%、CRF07_BC: 2.2%、C: 2.0%、GまたはCRF02_AG: 1.4%、A: 0.3%、その他: 4.7%であった。

本邦での新規未治療HIV感染者の伝播性薬剤耐性変異の動向を(図、黄色マーカー部分を5.8→8.4へ修正)に示す。サーベイランスのための伝播性薬剤耐性変異のリストは、プロテアーゼ阻害薬(PI)、核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)、非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)については2009年2)に、インテグラーゼ阻害薬(INSTI)については2019年3)に世界保健機関(WHO)のワーキンググループにより作成されたリストに従った。

(図、黄色マーカー部分を5.8→8.4へ修正)にはNRTI、NNRTI、PI、INSTIの4つのクラスの伝播性薬剤耐性変異の動向を、それぞれをパターン分けして示した。4クラスのいずれかの伝播性薬剤耐性変異を保有する率は2022年は10.4%(38/364)であり、4年ぶりに10%を超えた。

2022年の薬剤クラス別内訳では、NRTI 6.3%(23/364)、NNRTI 1.1%(4/364)、PI 1.9%(7/364)、INSTI 1.7%(6/363)であり、INSTIに対する伝播性薬剤耐性変異保有率は過去最大となった。2022年新規未治療HIV感染者に検出された伝播性薬剤耐性変異の内訳を表1に示す。インテグラーゼ E138Kは6件に検出され、過去最多であった。インテグラーゼ E138Kは本邦で伝播クラスタを形成している。NRTIのラミブジン(3TC)やエムトリシタビン(FTC)に対する耐性変異であるM184Vは2020年以降毎年3件以上検出され、2022年も3件検出されており、注意が必要である。比較的古い世代のPIに対する耐性変異のM46I/L、NRTIのジドブジン(AZT)等に対する耐性変異の復帰変異であるT215C/D/E/S/I/V(T215X)などは本邦で複数の伝播クラスタを形成して定着している。その他、表1にリストされていないpolymorphic mutationも含めたminor mutationを表2に示す。

国内流行株の動向の変化とともに、抗HIV薬の曝露前予防内服(PrEP)の普及や抗HIV薬の使用動向等の影響を受け、本邦の薬剤耐性動向は変化していく可能性があり、引き続き注視する必要がある。

本研究は日本医療研究開発機構 エイズ対策実用化研究事業「国内流行HIV及びその薬剤耐性株の長期的動向把握に関する研究」により行われた。

参考文献

  1. 薬剤耐性HIVインフォメーションセンター
    https://www.hiv-resistance.jp/(外部サイトにリンクします)
  2. Bennett DE, et al., PLoS ONE, e4724, 2009
  3. Tzou PL, et al., J Antimicrob Chemother 75: 170-182, 2020
  4. Stanford University, HIVDB Algorithm Version 9.0
    https://hivdb.stanford.edu/page/algorithm-updates/(外部サイトにリンクします)

国立感染症研究所エイズ研究センター
菊地 正

薬剤耐性HIV調査ネットワーク

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