コンテンツにジャンプ
国立健康危機管理研究機構
感染症情報提供サイト
言語切り替え English

トップページ > サーベイランス > 病原微生物検出情報(IASR) > IASR特集記事 > 東京都内のインフルエンザ病原体定点医療機関から搬入された臨床検体におけるインフルエンザウイルスおよびSARS-CoV-2の検出状況(2022年度)

東京都内のインフルエンザ病原体定点医療機関から搬入された臨床検体におけるインフルエンザウイルスおよびSARS-CoV-2の検出状況(2022年度)

公開日:2023年11月24日

(IASR Vol.44 p168-169:2023年11月号

季節性インフルエンザウイルスは、冬季を中心に流行する急性呼吸器疾患の原因となる病原体の1つである。2020年に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが始まって以降、東京都では2020/21、2021/22シーズンのインフルエンザの患者はほとんど報告されなかった。しかしながら、COVID-19対策の様々な規制緩和もあり、人々の移動が活発になるにつれてインフルエンザ患者の発生も報告されるようになった1)。2022/23シーズンに入ると、3シーズンぶりにインフルエンザの発生・流行が報告され、陽性数と検査陽性率がともに増加し、東京都では2023年2月2日に「流行注意報」を発出した。

東京都健康安全研究センター(以下、当センター)では、インフルエンザとCOVID-19の同時流行を懸念し、2022年度に感染症発生動向調査事業の一環として、東京都内のインフルエンザ病原体定点医療機関から搬入された臨床検体すべてについて、インフルエンザ等の病原体検査に加え、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)検査を実施した。なお、インフルエンザ病原体定点医療機関からの臨床検体の提出は、迅速診断キットによりインフルエンザウイルスの抗原が検出されたもののみならず、検出されないものも含んでいる。また、インフルエンザ病原体定点医療機関でのSARS-CoV-2検査の実施については、明らかではない。

2022年4月1日~2023年3月31日の期間に、都内のインフルエンザ病原体定点医療機関から当センターに搬入された臨床検体(咽頭ぬぐい液または鼻咽頭ぬぐい液)146件を対象とした。real-time RT-PCR法またはconventional PCR法を用い、インフルエンザウイルス、SARS-CoV-2、ライノウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルスを対象に、遺伝子の検出を試みた。さらに、2022年5~10月に搬入された検体については、上記の遺伝子検査に加えてFilmArray呼吸器パネル 2.1(ビオメリュー・ジャパン)を用いて網羅的病原体検索を行った。なお、インフルエンザ迅速診断キットを用いた検査の実施の有無とその結果については、検査票に記載された情報を参考にした。

2022年4月~2023年3月のインフルエンザウイルスおよびSARS-CoV-2検出状況を月別に示した(図1)。インフルエンザの検出状況をみると、2022年9月13日に採取された検体から2022/23シーズン初、かつ3年ぶりのインフルエンザウイルスが検出された〔A(H3N2)〕。11月にA(H3N2)が1件検出されたのち、12月に入ると検体数は18件と増加し、うち16件でA(H3N2)が検出された。2023年1月にはA(H1N1)pdm09が2件、およびB/Victoria系統1件も検出され、検体搬入数、インフルエンザウイルス検出数、検出率ともに最大となり、流行のピークを迎えてから3月末までインフルエンザウイルスの検出率は高かった。

一方、同時期に都内で行われた検査におけるSARS-CoV-2検出率(月平均)は8月、12月にピークがあったが2)、本調査ではSARS-CoV-2は4月、7月、9月、11月にそれぞれ1件ずつ、翌年1月には3件検出され、年度を通して検出されており、インフルエンザのような変動性はみられなかった。調査当時、COVID-19は新型インフルエンザ等感染症の位置付けであり、インフルエンザ病原体定点医療機関に対しCOVID-19患者検体の収集を依頼しておらず、流行状況から鑑みても、SARS-CoV-2陽性検体が搬入されていなかった可能性は高い。

インフルエンザウイルスおよびSARS-CoV-2の検出状況をに示した。臨床検体146件のうち、インフルエンザウイルスが単独で検出された検体は103件(70.5%)であった。その内訳として、A(H1N1)pdm09が2件、A(H3N2)が97件、B/Victoria系統が4件であり、B/山形系統は検出されなかった。一方、SARS-CoV-2が単独で検出された検体は5件(3.4%)であった。また、インフルエンザウイルスのA(H3N2)とSARS-CoV-2が同時に検出された検体が2件あった。

インフルエンザおよびSARS-CoV-2以外に検出された呼吸器疾患起因ウイルスの検出状況を図2に示した。ライノウイルスが年間を通して検出され、コクサッキーウイルスA群6型が1件、アデノウイルス2型が1件検出された。FilmArray呼吸器パネル 2.1による網羅的検索を行った2022年5~10月に搬入された検体では、その他に、ライノウイルス/エンテロウイルス2件、ヒトメタニューモウイルス3件、パラインフルエンザウイルス1型2件、重複感染が2件(RSウイルスとライノウイルス/エンテロウイルス: 1件、RSウイルスとヒトメタニューモウイルス: 1件)みられた。

当センターに搬入された臨床検体146件のうち、インフルエンザ迅速診断キットによる検査が実施された検体は124件(84.9%)であり、迅速検査が実施されなかった検体は22件(15.1%)であった。迅速検査陽性となった検体99件(67.8%)のうち、遺伝子検査によりインフルエンザウイルスが96件検出され、2件からインフルエンザウイルスとSARS-CoV-2が検出された。迅速検査陰性検体24件(16.4%)では、インフルエンザウイルスが4件検出され、迅速検査で判定不能であった1件(0.7%)からSARS-CoV-2が検出された。また、迅速検査が実施されなかった22件(15.1%)では、インフルエンザウイルスは3件、SARS-CoV-2は4件で検出された。

本調査の結果により、2022年度の感染症発生動向調査事業において、インフエンザ病原体定点医療機関から収集された検体ではSARS-CoV-2陽性検体が少なかったことが明らかになった。2022年度のCOVID-19は新型インフルエンザ等感染症に位置付けられており、インフルエンザ病原体定点医療機関から搬入された検体については、最初からサンプルバイアスがかかっていた可能性が高い。2023年5月8日より、COVID-19の位置付けが5類定点把握疾患に変更され、インフルエンザ/COVID-19患者定点医療機関として、従来のインフルエンザ患者定点医療機関でCOVID-19のモニタリングを行っている。SARS-CoV-2の動向を把握するためには、インフルエンザ/COVID-19病原体定点医療機関で新型コロナウイルス検体(迅速診断キット陽性例を含む)として集める必要性が示唆される。

参考文献

  1. 東京都感染症情報センター、WEB感染症発生動向調査
    https://survey.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/epidinfo/weeklychart.do(外部サイトにリンクします)
  2. 東京都福祉保健局、東京都 新型コロナウイルス感染症検査の陽性率・検査人数
    https://catalog.data.metro.tokyo.lg.jp/dataset/t000055d0000000384

東京都健康安全研究センター
黒木絢士郎 根岸あかね 藤原卓士 三宅啓文 長島真美 貞升健志

PDF・Word・Excelなどのファイルを閲覧するには、ソフトウェアが必要な場合があります。
詳細は「ファイルの閲覧方法」を確認してください。