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先天梅毒診療の手引き 2023

公開日:2023年12月25日

(IASR Vol.44 p197-198:2023年12月号

近年の梅毒罹患数は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行期にも減少に転ずることはなく、女性では20~30代に集積することから、先天梅毒(congenital syphilis:CS)の増加が懸念される。日本では、2022年にベンジルペニシリンベンザチンが適応承認を受けるなど、梅毒診療のアップデートがある。このような現状から、小児感染症学会員を中心に先天梅毒診療の手引き作成委員会が結成され、エキスパートオピニオンによる診療の手引きが作成、公開された1)

先天梅毒は、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidumT. pallidum、以下、TP)が、胎盤を通過して母体から胎児に感染する多臓器の慢性感染症である。無治療の母体からの母子感染のリスクは、早期梅毒第1期、早期梅毒第2期、早期潜伏期、後期潜伏期それぞれ、約70-100%、約70%、約40%、約10%とされ、早期顕症梅毒(1期、2期)の時期が最も感染力が高い。また感染時期が妊娠の後期ほど胎児への感染率が高くなる。妊婦の梅毒感染例は、妊娠の有無が感染症発生動向調査の届出項目になった2019年以降、毎年200例前後(全女性症例の7-9%)届出されており、先天梅毒の年間報告数も20例前後届出されている。米国では、2020年には2012年以前の約7倍(年間2,000例以上)の報告数となっている。

本手引きでは、診療の要点と流れが分かりやすいように診療フローチャートを作成し、診療現場での利便性に配慮した。疾患の背景を記載したBackground Questionと、5つのClinical Question(CQ)に対する推奨と解説から構成される。本稿では、「先天梅毒フローチャート(評価・治療・フォロー)」()およびCQ・推奨を紹介する。各推奨に対する解説や参考資料は、日本小児感染症学会のホームページで公開されている本ガイドラインを参照ください。

「先天梅毒診療の手引き 2023」CQと推奨

CQ1:先天梅毒を疑う契機となる臨床所見は何か?

推奨:母体の感染歴があれば疑いは明らかである。一方で出生した時点では、先天梅毒患者の6割以上は無症候あるいは所見が軽微であり、先天感染症に共通する症状や所見である胎内発育不全などから、TORCH症候群の1つとして積極的に除外する必要がある。出生後は乳児期早期に症状が徐々に顕在化するため、先天梅毒に比較的特徴的な所見である皮膚病変や鼻炎、貧血や血小板減少をもって疑う必要がある。このように、臨床症状や所見のみから先天梅毒を診断することは困難なこともあるが、最終的な診断は母体および児の臨床経過に加え検査所見を踏まえ、総合的に早期に判断することが重要である。

CQ2:先天梅毒の検査は何があるか?

推奨:病変から直接同定する方法と、血清抗体価を測定し間接的に同定する方法がある。血清抗体価は非特異的検査(rapid plasma reagin:RPR)と梅毒特異的検査(TP hemagglutination:TPHA、TP latex agglutination:TPLA、fluorescent treponemal antibody absorption:FTA-ABS)がある。母体と児のRPRを比較するとき、治療効果判定目的にRPRを連続測定する場合には必ず同じ検査試薬を用いた検査方法を使用すべきである。

CQ3:先天梅毒の治療適応はどのように判断するか?

推奨:児の先天梅毒を疑う身体所見の有無、児のRPRと出産時の母体のRPRの値の比較、母体の梅毒の感染歴と治療歴を考慮し判断する。

CQ4:先天梅毒児に対する有効な治療は何か?

推奨:ベンジルペニシリンカリウム(ペニシリンGカリウム®)の10日間静注あるいはベンジルペニシリンベンザチン(ステルイズ®)の単回筋注を行う。

CQ5:先天梅毒児のフォローアップに必要な項目は何か?(感染対策を含めて)

推奨:

  • 生後2、4、6、12か月に成長・発達や病変ごとの評価を行う
  • 血清学的検査は陰性になるまで2~3カ月ごとに評価する
  • 出生時に児RPR陰性の場合、生後3か月で再検し、陰性であればフォローを終了する
  • RPRが生後6~12か月でも上昇する場合や低下しない場合には、髄液を含めた再評価を行い、ベンジルペニシリンカリウム(ペニシリンGカリウム®)による10日間の治療を検討する

参考文献

  1. 先天梅毒診療の手引き 2023
    https://www.jspid.jp/wp-content/uploads/2023/12/sentensei_baidoku_3.pdf(外部サイトにリンクします)(PDF:893 KB)

作成委員会
伊藤嘉規 池上千晶 石和田稔彦 伊藤健太
岩谷壮太 尾内一信 川名 敬 清水博之
新庄正宜 竹内典子 津川 毅 船木孝則
古市宗弘 星野 直 三鴨廣繁 宮入 烈
森内浩幸 森岡一朗 山岸拓也 山岸由佳
森 雅亮(委員長)

日本小児感染症学会

日本新生児成育医学会

日本小児感染症学会ガイドライン作成委員会

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