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新規抗真菌薬イサブコナゾールと期待される開発中の抗真菌薬

公開日:2024年2月27日

(IASR Vol45 p27-29:2024年2月号

はじめに

深在性真菌症に対してわが国で使用できる抗真菌薬は作用機序別に4種10薬剤程度にすぎない。多彩な機序の抗菌薬に比較して、その選択肢は限られる。本稿では、最も新しい抗真菌薬のイサブコナゾール(2023年上市)および、国内外で開発中の注目される新規抗真菌薬について概説する。

1)イサブコナゾール(Isavuconazole:ISCZ)

イサブコナゾール(ISCZ)は、クリプトコックス症やアスペルギルス症、ムーコル症に対して治療適応を有するアゾール系抗真菌薬である。カンジダ属に対するin vitroの感受性は良好であったが、侵襲性カンジダ症を対象としたカスポファンギンとの比較試験において非劣性が証明できなかったため、カンジダ症には治療適応を有していない。本薬は侵襲性糸状菌感染症と慢性肺アスペルギルス症の治療に期待される。

血液疾患で最も多い糸状菌感染症は侵襲性アスペルギルス症で、次にムーコル症が挙げられる。侵襲性アスペルギルス症に対しては従来、ボリコナゾール(VRCZ)が第一推奨薬、その代替薬としてアムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)が推奨されていた1)。一方、ムーコル症の治療にはL-AMBが推奨されていたが、L-AMBは使用時の副作用等が懸念される。また、臨床上、両者の鑑別は難しく、両者をカバーする安全性の高い抗真菌薬の登場が期待されていた。国際共同で実施された侵襲性糸状菌感染症を対象としたISCZとVRCZの有効性と安全性を比較した臨床試験(SCURE試験)では、42日目までの全死亡率は、ISCZ群19%(48/258例)、VRCZ群20%(52/258例)で非劣性が示された。また、有害事象は、ほとんどの患者(ISCZ群96%、VRCZ群98%、p=0.122)で認められたものの、肝胆道系障害(9% vs 16%、p=0.016)や眼障害(15% vs 27%、p=0.002)、皮膚または皮下組織障害(33% vs 42%、p=0.037)の頻度はISCZ群の方が低く、安全性に優れることが示唆された2)。また、腎機能障害を有する侵襲性真菌症(ムーコル症、クリプトコックス症を含む)患者を対象に実施されたVITAL試験(国際共同、非盲検、非対照試験)では、全例をISCZ群に割り付けて、その有効性および安全性が評価された。その結果、主要評価項目である42日目の有効率はmITT-Aspergillus集団で29.2%(7/24)、mITT-Mucorales集団で31.4%(11/35)であった。さらに、本試験でムーコル症としてISCZの投与を受けた患者(21例)と、過去の研究(Fungiscope Registry Database)に登録されたムーコル症でアムホテリシンBの投与を受けた患者(33例)をマッチさせたときの、Kaplan-Meier生存曲線はほぼ同様であった。これらの結果は、ムーコル症に対してISCZはアムホテリシンBと同様に治療薬として期待できることを示唆している。

米国感染症学会(IDSA)ガイドライン2016では、侵襲性アスペルギルス症の治療にVRCZによる一次治療が推奨(強い推奨:質の高いエビデンス)されているが、その代替薬としてL-AMBとともにISCZ(強い推奨:中等度の質のエビデンス)が挙げられている3)。また欧州のECIL-6ガイドラインにおいても、侵襲性アスペルギルス症に対してISCZはVRCZと同じ推奨度やエビデンスレベルが付与されている4)。一方、ムーコル症に対する欧州ガイドラインでは、L-AMBの高用量が強い推奨度で挙げられているが、腎障害がある場合や一次治療が無効な場合の選択肢としてISCZが推奨されている5)。また、慢性肺アスペルギルス症に対してわが国で実施された第3相比較試験では、投与終了時の有効率はISCZ 82.7%(43/52)、VRCZ 77.8%(21/27)と同程度であった。また、全体の有害事象はISCZ 90.4%(47/52)、VRCZ 92.5%(25/27)と同程度であったが、羞明や視力障害の有害事象はVRCZでそれぞれ、25.9%(7/27)、14.8%(4/27)みられたものの、ISCZでは1件も認められなかった6)。ISCZには注射薬と経口薬があり、入院および外来の糸状菌感染症の治療に期待される。

2)開発中の抗真菌薬

臨床開発の段階へ進んでいる新規作用機序を含む抗真菌薬が複数ある()。本稿では、開発中の2つの抗真菌薬について最近の知見を記す。

Rezafungin

Rezafunginはカンジダ血症および侵襲性カンジダ症の治療薬、または血液・骨髄移植後のカンジダ属、アスペルギルス属、ニューモシスチス属による侵襲性真菌症の予防薬として開発中の週1回静脈内投与の次世代のキャンディン系抗真菌薬である。カンジダ血症および侵襲性カンジダ症患者におけるRezafungin週1回静脈内投与群(1週目400mg、その後週1回200mg、合計2-4回投与)とカスポファンギン(CPFG)投与群(1日目70mg負荷投与、その後1日50mg投与)の有効性および安全性を比較することを目的に、多施設共同二重盲検二重ダミー無作為化第3相試験(ReSTORE試験)が実施された。その結果、主要エンドポイントである14日目の改善率〔Rezafungin群59%(55/93)、CPFG群61%(57/94)〕および30日目の全死亡率〔Rezafungin群24%(22/93)、CPFG群21%(20/94)〕において、RezafunginはCPFGに比べて非劣性が示された。また治療に起因する有害事象や重篤な有害事象は認められなかった7)

脂質ナノ結晶(LNC)経口アムホテリシンB

初期に開発された抗真菌薬であるアムホテリシンBデオキシコール酸は投与時の副反応や腎機能障害等の副作用が多かったが、L-AMBが開発され、その副反応も軽減している。一方、その経口薬であるファンギゾンシロップは経口投与しても消化管からはほとんど吸収されないために深在性真菌症の治療には使用されなかった。新規の脂質ベースのドラッグデリバリーシステムを利用したLNCアムホテリシンBはアムホテリシンB、カルシウム、および大豆由来の天然リン脂質であるホスファチジルセリンの3つの成分で構成されている。LNCを投与すると、標的細胞(例:マクロファージ)に取り込まれて、感染部位へ送達されるが、LNC薬物は細胞内に捕捉され、細胞内カルシウム濃度が低いとナノ結晶が開口し、薬物が細胞内に放出される。LNCアムホテリシンBはナノ結晶粒子内または標的細胞内に固定されているため、アムホテリシンBの全身性副作用の軽減が期待される。HIV関連クリプトコックス脳髄膜炎に対するLNCアムホテリシンB+5-FCと静脈内投与アムホテリシンB+5-FCのランダム化臨床試験において、静脈内投与アムホテリシンB群と比較して、LNCアムホテリシンB群では真菌学的効果や生存率は同程度で、有害事象は少なかったと報告されており8)、今後の開発が期待される。

参考文献

  1. 深在性真菌症ガイドライン作成委員会, 深在性真菌症診断・治療ガイドライン2007, 協和企画, 2007
  2. Maertens JA, et al., Lancet 387: 760-769, 2016
  3. Patterson TF, et al, Clin Infect Dis 63: e1-e60, 2016
  4. Tissot F, et al., Haematologica 102: 433-444, 2017
  5. Cornely OA, et al., Lancet Infect Dis 19: e405-e421, 2019
  6. Kohno S, et al., J Infect Chemother 29: 163-170, 2023
  7. Thompson GR, et al., Lancet 401: 49-59, 2023
  8. Boulware DR, et al., Clin infect Dis 77: 1659-1667, 2023

大阪公立大学大学院医学研究科臨床感染制御学
掛屋 弘

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