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レジオネラ肺炎の臨床的特徴

公開日:2024年7月31日
(IASR Vol. 45 p110-111: 2024年7月号)

診断・検査と患者への対応

1. レジオネラ肺炎を疑う臨床的特徴

レジオネラ肺炎の臨床症状は、 軽い咳、 微熱程度のものから意識障害をともなう劇症肺炎まで多彩であり、 臨床症状だけから本症を診断することはできない。通常、 潜伏期間は2~10日と長い。病初期においては発熱、 全身倦怠感、 筋肉痛、 食欲不振などの非特異的症状から始まり、 次第に咳嗽、 喀痰、 胸痛などの呼吸器症状が全面に出てくる。レジオネラ肺炎患者にしばしばみられる症状として、 頭痛、 傾眠、 昏睡、 脳炎症状などの精神神経症状があり、 本菌肺炎を疑った場合には意識レベルの変化を注意して観察する必要がある。身体所見としては、 肺野におけるラ音、 胸部X線における肺炎の存在に加え、 相対的徐脈、 低血圧などもしばしばみられる。胸部X線所見として本症に特徴的なものはないが、 多発性陰影、 胸水貯留を示す頻度が高く、 膿胸へと進展する症例もある。Sakaiらはレジオネラ肺炎患者のHRCT画像の解析を行い、 その特徴について報告している(図11)。検査値所見としては、 軽度の肝機能障害を示す症例が多く、 CPK上昇、 低Na血症、 低P血症、 尿潜血などもみられる。また、 胸部X線所見に比し低酸素血症が強いことが多く、 重症例においては急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、 播種性血管内凝固(DIC)、 多臓器不全(MOF)へと進展する頻度が高い。

2. 確定診断法

確定診断には、 まず臨床サイドが本症を疑うことが第一であり、 そのうえで以下に示す検査を行う。

  1. 塗抹・培養検査: 検体中のレジオネラはグラム染色では染色されにくい。逆にグラム染色では優位な細菌が観察されず、 ヒメネス染色あるいはアクリジンオレンジ染色などで細胞内増殖を示す細菌が観察された場合には、 レジオネラを強く疑う。本菌の培養には、 BCYEα培地やWYO培地といった特殊培地の使用が不可欠であり、 通常4~7日で乳白色大小不同のコロニーが観察される(図2)。
  2. 血清抗体価測定: 間接蛍光抗体法(IFA)、 酵素抗体法(ELISA)などの他に、 デンカ株式会社によってマイクロプレートを用いた凝集法が開発されている。重症症例、 免疫不全宿主においては有意な抗体価上昇がみられないことがあることから注意する必要がある。
  3. 尿中抗原検出: レジオネラ肺炎患者においては尿中に多量の菌体抗原が排出されることから、 患者尿を用いた免疫クロマトグラフィー法による診断が可能である。特別な機器を必要とせず、 約15分で結果が判定できる。本検査は、 レジオネラ肺炎の中のLegionella pneumophila血清群1の診断法として開発されたが、 最近になってレジオネラ属を広く診断することができる可能性のある検査法が利用可能となっている。
  4. 遺伝子診断: L. pneumophila、 あるいはレジオネラ属に特異的なプライマーによるPCR法を用いた遺伝子診断が可能となっている。本法の感度・特異度は良好であるが、 キット化されているLAMP法も含め、 現在のところ一般施設で実施できる検査法とはなっていない。また、 症例によっては疑陰性を示すものもあることから、 可能な限り上記検査法を併用して実施することが望ましい。

3. 患者への対応

本症を疑った場合には、 速やかに抗菌薬療法(後述)を開始するとともに、 集団発生の可能性がある場合には感染源の特定を試みる。具体的には、 潜伏期間内あるいは発症後に患者周囲に同様な臨床症状を示す者がいないかに注意するとともに、 感染源としての可能性の高い施設・設備への接触(冷却塔、 温泉、 循環式浴槽など)の有無を確認する。入院患者にレジオネラ肺炎がみられた場合には、 病棟内水系を介した院内感染の可能性が高いことから、 院内環境調査を含め慎重に対応する必要がある。本菌のヒトからヒトへの感染は確認されておらず、 したがって本症患者を隔離する必要はない。

具体的な治療法

1. 治療方針の立て方

本症の進展は早く、 適切な抗菌薬療法が遅れると、 しばしば重篤化する。本菌は細胞内増殖性細菌であることから、 その有効性を左右する因子として抗菌薬の細胞内移行性が重要となる。マクロライド系、 ニューキノロン系抗菌薬、 リファンピシンなどの薬剤は細胞内移行性が良好で、 in vitro抗菌効果も高い。最近の診断法・抗菌薬療法の進歩にともない、 その予後は改善してきているものの、 免疫不全宿主における致命率は10%を超えており、 決して満足できるものではない。

2. 薬物療法

マクロライド系、 ニューキノロン系抗菌薬、 リファンピシンが第一選択となり、 次いでST合剤、 クロラムフェニコール、 テトラサイクリン系抗菌薬が有効である。軽症に対してはマクロライド剤あるいはニューキノロン剤の単剤投与が行われるが、 中等症~重症例においてはこれら薬剤の併用療法、 あるいはリファンピシンの併用が行われる。最近報告された21論文のマクロライド剤とニューキノロン剤の比較において、 レジオネラ肺炎に対する両剤の有効性に関して有意な違いはみられなかったことが報告されている2)

話題: 細胞内におけるレジオネラの増殖機構(図33)

最近になって、 レジオネラ属細菌の細胞内増殖機構に関して新しい知見が報告されている。本菌がマクロファージなどの貪食細胞に取り込まれると、 ファゴゾーム内でレジオネラは4型の分泌機構と呼ばれる装置を用いて宿主細胞内に病原因子を注入する。一方、 この過程でレジオネラの菌体成分の1つである鞭毛抗原も細胞内に侵入することになる。生体細胞は、 この鞭毛抗原をNAIP分子などで認識しているようであり、 生体にとって有利なオートファジーあるいはパイロトーシスと呼ばれる病態が誘導される。一方、 レジオネラは自身の増殖ののちアポトーシスによって感染細胞を死滅させようとする。菌の増殖とアポトーシスが進むのか、 オートファジー・パイロトーシスで菌の増殖が止められるのか、 感染細胞におけるレジオネラと宿主のせめぎ合いのメカニズムが解明されつつある。

本話題の引用元であるレジオネラ症防止指針(第5版)が2024年7月に発行されており、 本症の防止対策に関しては、 こちらを参考としていただければ幸いである。

参考文献

  1. Sakai F, et al., J Comput Assist Tomogr 31: 125-131, 2007
  2. Jasper AS, et al., Clin Infect Dis 72: 1979-1989, 2021
  3. 公益財団法人 日本建築衛生管理教育センター、 第5版レジオネラ症防止指針、 2024年

東邦大学医学部微生物学
舘田一博

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