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尿中抗原検査により診断し得たLegionella longbeachaeによるレジオネラ肺炎の1例

公開日:2024年7月31日
(IASR Vol. 45 p117-118: 2024年7月号)

はじめに

腐葉土が主な感染源とされるLegionella longbeachaeによるレジオネラ症は、 本邦においては稀である。本菌による症例の多くは培養法やPCR法により診断されるが、 2022年神戸市における事例では、 尿中レジオネラ抗原検査〔リボテスト(R)レジオネラ(極東製薬工業)〕により診断された1)。患者喀痰の培養によって、 用いた3種の選択分離培地のうちMWY培地のみからL. longbeachae serogroup 1を分離した。また同菌は、 患者が潜伏期間に水やりを行っていた公園の花壇の土からも分離された。本事例の患者株を用いて、 リボテスト(R)レジオネラに対する反応性および各選択分離培地における発育性の違いを検証した。さらに、 感染源調査によって分離された土壌由来株との同一性を全ゲノム解析により調べたので報告する。

方法

リボテスト(R)レジオネラに対する反応性評価は、 109CFU/mLに調整した菌液と、 その10倍・100倍希釈液を用いて、 キット添付文書にしたがい実施した。試験当たりの抗原濃度としては、 108CFU/test, 107CFU/test, 106CFU/testに相当する。菌株の発育性の違いはMiles and Misra法により、 選択培地であるGVPC培地(関東化学)、 MWY培地(関東化学)、 WYOα培地(栄研化学)、 非選択分離培地であるBCYEα培地(関東化学)に対して評価した。土壌由来株は、 潜伏期間中に患者が水やりを行っていた花壇の土から、 アメーバ共培養法により分離した。菌株間の関連性を調べるために、 MiSeq(Illumina)を用いて全ゲノム配列を取得した。L. longbeachae NSW150株(Accession no.: NC_013861.1)をリファレンスとして、 Leeらの方法2)を基にsingle-nucleotide variant(SNV)解析を実施した。

結果・考察

抗原濃度107CFU/test以上でリボテスト(R)レジオネラ陽性となり(図1)、 四宮らの報告3)と同程度の検出感度であった。したがって、 診断時の患者尿中には107CFU/test以上の抗原が含まれていたと推定された。抗原濃度103CFU/test以上で陽性になるL. pneumophilaと比較すると、 L. longbeachaeの検出感度は著しく劣るが、 リボテスト(R)レジオネラでの診断も可能となることが示唆された。

選択分離培地における発育性は、 MWY培地、 GVPC培地、 WYOα培地の順に良かった(図2)。各培地に含まれる選択剤の種類や量の違いが、 L. longbeachaeの発育に影響を与えている可能性があり、 L. longbeachaeによるレジオネラ症を疑う際には、 適した培地を使用する必要があると考えられた。

全ゲノムによるSNVs解析により患者由来株と土壌由来株間のSNVsは約400個であったことから、 明確な遺伝的関連性は認められなかった。届出から2カ月後に環境調査を実施したため、 患者が感染した土壌環境とは異なっていた可能性も考えられた。

本症例は、 本邦では稀なL. longbeachaeによるレジオネラ症の診断・検査・分子疫学的解析に関する基礎データであり、 今後さらなる知見の蓄積が求められる。

参考文献

  1. 池成拓哉ら、 日本臨床微生物学会雑誌 34: 214-221, 2024
  2. Lee K, et al., Emerg Infect Dis 27: 1509-1512, 2021
  3. Shinomiya S, et al., Ther Adv Infect Dis 10: 1-5, 2023

神戸市健康科学研究所感染症部
小松頌子 田中 忍 中西典子

神戸市立西神戸医療センター  
池成拓哉 池町真実 徳重康介 多田公英 二村絢子
大戸美穂 中野茉生 小池千裕 竹川啓史

神戸市立医療センター西市民病院
松岡 佑

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