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国立健康危機管理研究機構
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デング熱の臨床症状と診療

公開日:2024年8月29日

(IASR Vol. 45 p135-136: 2024年8月号)

はじめに

デング熱は、 デングウイルス(Dengue virus: DENV)の感染によって生じる感染症である。DENVは、 フラビウイルス科、 フラビウイルス属に分類されるウイルスであり、 1-4型の4つの血清型からなる1)。また、 蚊によって媒介される節足動物媒介性ウイルスの1つであり、 主な媒介蚊はネッタイシマカ(Aedes aegypti)およびヒトスジシマカ(Aedes albopictus)である。なお、 Dengue virusの“Deng”は、 タンザニアのザンジバルで使われていたスワヒリ語で“Ki-dinga pepo”という「よろめく」、 「ふらつく」といった意味の言葉が語源となっている2)

臨床症状

DENV感染者の約60-80%は無症候性感染であるとされ3)、 デング熱は3~7日(最大2~14日)の潜伏期間を経て、 突然の発熱で発症する。臨床経過は発熱期、 重症期、 回復期の3つの段階が知られている。

発熱期では発熱の他、 頭痛、 嘔吐、 関節痛、 筋肉痛、 倦怠感、 後眼窩痛、 結膜充血、 紅斑等がみられ、 腹痛、 下痢といった非特異的な消化器症状をともなうこともある。これらの症状は、 通常2~7日程度続く。小児では、 発熱が唯一の症状である場合も多い。検査所見では、 一般的に白血球減少、 血小板減少、 肝逸脱酵素の上昇を認め、 CRPの上昇は軽度であることが多い3)。多くのデング熱患者では、 解熱後そのまま回復するが、 病態が悪化する経過を認めることがあり、 これが重症期にあたる。重症化のリスク因子としては、 妊婦、 乳幼児、 高齢者、 糖尿病、 腎不全、 などが知られている4)。また、 2回目以降の感染では、 既存の抗体が異なる血清型のウイルスに対してうまく働かず、 感染したウイルスの増殖を助長する「抗体依存性感染増強(ADE)」により重症化リスクが高まることがあるとされる。このため、 特にデング熱の既往歴がある患者は、 再感染時に注意が必要となる5)

重症期は、 発症3~7日目に体温が38.0℃以下に低下する時期に認められる。毛細血管透過性亢進による血漿漏出が起こり、 血管内脱水によりヘマトクリット値が上昇し、 胸水や腹水の合併症を認めることもある。血漿漏出は通常24~48時間続き、 初期には脈圧の低下を認め、 病態が進行すると、 時には血圧低下によるショック状態となり、 死に至ることもある。ショックに至る前には重症化サイン()が先行することから、 病態の変化を注意深く観察することが重要となる。その他、 重症デング熱では、 血小板減少による出血傾向、 臓器障害をきたすこともある。この重症期は通常24~36時間続き、 その後回復期へと移行する。

回復期では2~3日間かけて血管外漏出液が徐々に吸収され、 全身状態は改善に向かう。また、 この時期に、 紅斑の中に正常な皮膚をともなう特徴的な皮膚所見(white island in the sea of red)を認めることがある。

診断

デング熱の診断は、 血清検体でのデングウイルス抗原定性〔デングウイルス非構造タンパク(NS1)抗原(ELISA法)〕または、 全血または血清検体でのデングウイルス抗原および抗体同時測定定性(デングウイルスIgM抗体・NS1抗原)(イムノクロマト法)を用いて行う。一方で、 上記検査は国立感染症研究所(感染研)が作成した「蚊媒介感染症の診療ガイドライン(第5.1版)」に基づきデング熱を疑う患者のうち、 集中治療に対応できる特定の保険医療機関において、 入院を要すると考えられる場合にのみ保険適応となる1,6)。これらに該当しない医療機関の場合は、 最寄りの保健所に相談のうえ、 全血・血清・血漿検体を地方衛生研究所または感染研に送付し、 ウイルスの遺伝子、 IgM抗体等の検出等の検査を依頼することができる。

NS1抗原は2回目以降の感染では感度が低下するが、 初感染では症状発現後7日間は核酸増幅検査と同等の感度を示す。デングIgM抗体は発症後4日目~約12週後まで検出が可能である。デング熱は、 感染症法で4類感染症全数届出疾患の分類であり、 診断した医師は直ちに最寄りの保健所へ届出を行う必要がある。

治療

デング熱に対する有効な抗ウイルス薬はなく、 治療の基本は、 輸液療法や解熱鎮痛薬の投与などの支持療法である。解熱鎮痛薬はアセトアミノフェンを使用し、 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は出血傾向を助長する危険があるため使用を避ける。経口での水分摂取が可能かつ尿量が確保できており、 重症化サインがない場合は、 外来での経過観察も可能である。診察と血算の評価を連日行い、 重症化サインの出現がないか注意深く評価を継続する。重症化サインを認める、 または経口摂取ができない場合、 重症化リスクが高い患者は入院での管理が必要となる。その場合は、 細胞外液の輸液を中心とした支持療法を行う。輸液はバイタルサインやヘマトクリット値をモニタリングしながら投与量を調整する。血小板減少による出血傾向や大量出血がみられる場合には、 適宜、 濃厚赤血球輸血や血小板輸血を検討する。回復期には、 過剰な輸液による肺水腫や心不全等に十分注意する。

参考文献

  1. 国立感染症研究所, 蚊媒介感染症の診療ガイドライン(第5.1版)(PDF:2,023KB), 2023
  2. Christie J, Br Med J 1: 577-579, 1872
  3. Kutsuna S, et al., Am J Trop Med Hyg 90: 444-448, 2014
  4. WHO, Dengue guidelines for diagnosis, treatment, prevention and control, 2009
  5. Waggoner JJ, et al., J Infect Dis 221: 1846-1854, 2020
  6. 矢冨 裕, 平成28年6月より適用の新規保険収載検査項目の解説, Rinsho Byori 64: 871, 2016
    https://www.jslm.org/books/journal/dt/6407.pdf(外部サイトにリンクします)(PDF:210KB)

国立国際医療研究センター病院国際感染症センター
久保赳人 氏家無限 大曲貴夫

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