HIV郵送検査に関する実態調査と検査精度調査
(IASR Vol. 45 p166-167: 2024年10月号)
目的
現在、 インターネット上にはHIV郵送検査を取り扱うwebサイトが存在し、 検査希望者が検査機関に行くことなしにHIV検査を受検することができる。その検査内容と検査数の動向等を把握するため、 郵送検査会社に対するアンケート調査を行った。また検査精度を調査するため、 郵送検査会社へパネル血漿を用いた検体を郵送して検査を依頼した。
方法
インターネットでHIV郵送検査を取り扱うwebサイトを検索し、 郵送検査を行っていると判明した郵送検査会社に対して、 2005~2023年にかけて毎年アンケート調査を実施した。アンケート送付方法として、 メール、 FAX、 郵便のすべてを用い、 アンケート内容として、 HIV郵送検査数、 陽性数、 判定保留数、 団体検査の割合等について調査を行った。また、 アンケート回答で検査精度調査を希望した郵送検査会社に対し、 結果が既知の血液検体を郵送し、 結果と照合することにより、 2020~2023年にかけて毎年検査精度調査を行った。検体として陽性3例、 陰性2例のパネル血漿で作製した再構成全血を用い、 通常行われる郵送検査と同じ方法で検体を郵送して検査を依頼した。
結果
HIV郵送検査の年次推移を図に示す。年間検査数は、 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の流行が大きな問題となった2020年と2021年を除き、 ほぼ毎年増加しており、 2023年の検査数は153,037件であった。推定団体検査数は、 調査を開始した2012年からほぼ横ばいであった。しかし、 郵送検査数全体に対する推定団体検査数の割合である推定団体検査率は減少傾向にあり、 2023年では年間検査数の32%であった。郵送検査の陽性数は、 2006~2013年まではおよそ200件前後であったが、 2014年から100-150件程度を推移しており、 2023年の陽性数は124件であった。判定保留数は2019年から減少傾向にあり、 2023年の判定保留数は29件であった。
検査申込は主にインターネットによって行われ、 2023年の検査費用は平均4,057円、 検査日数は平均2日であった。検査検体はすべての会社で全血が用いられており、 ランセットで採血し、 濾紙や採血管で保存していた。郵送検査会社で行われる検査は、 化学発光酵素免疫測定(CLEIA)法、 ゼラチン粒子凝集(PA)法、 イムノクロマト(IC)法、 化学発光免疫測定(CLIA)法等の、 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構で販売承認を受けた体外診断用医薬品が用いられていた。検査結果が陽性であった場合、 ほぼすべての郵送検査会社で医療機関での検査を勧めていた。結果通知方法は郵送が中心であったが、 web専用サイトやPC・携帯でのe-mailでも通知している会社も多くみられた。2023年に陽性となった124例のうち、 電話やメール相談で受検者に医療機関を紹介した件数は41例であり、 医療機関での受診が確認できた件数は20例であった。
検査精度調査に参加した郵送検査会社は、 2020年と2021年は6社、 2022年は7社、 2023年は8社であった。その結果は、 2020年、 2022年、 2023年はすべての郵送検査会社で5検体すべての検査結果が一致したが、 2021年の調査では6社中1社で5検体中2例の結果が一致しなかった。
考察
2023年のHIV郵送検査数は153,037件であり、 同年の保健所等検査数106,137件1)と比較し、 約1.4倍であることから、 郵送検査は自発的なHIV検査の中で大きな割合を占めていることが分かった。郵送検査における団体検査は、 主に風俗店を対象としていると思われるが、 その割合は相対的に減少傾向ではあるものの、 郵送検査の中で一定の割合を占めている。
郵送検査で用いられている検査法はスクリーニング検査であるため、 陽性であった場合、 医療機関等で確認検査を受検する必要がある。2023年に郵送検査で陽性となった受検者のうち、 電話やメール相談で医療機関へ紹介された割合は33%であり、 受診を確認できた割合は16%と低かった。郵送検査はほぼすべてが匿名検査であるため、 受検者名の入った紹介状は発行できず、 陽性通知が対面では行われない。そのため陽性となった受検者は、 陽性結果の返却時に記載された医療機関へ自発的に受診しなければならない。その際に郵送検査会社へ受診を報告する義務はないため、 結果的に受診を確認できた割合が低くなっている可能性がある。SNS等を利用した個別対応の医療機関紹介等、 郵送検査におけるすべての陽性者が医療機関へつながるシステムの構築が喫緊の課題である2)。
2021年の検査精度調査で、 結果不一致であった会社に対して検査方法の検討を促した結果、 検査法がIC法からCLEIA法に変更されたことにより、 この会社の2022年の調査では結果一致となった。HIV郵送検査の検査精度調査は、 継続して行う必要があると考えられる。
郵送検査は、 受検者の都合の良い時間と場所で対面することなく検査を受けることができる利点がある一方、 郵送やwebサイトを用いた検査の特性上、 受検者への検査説明、 検査相談、 検査後フォローアップ等が対面で行われないため、 HIV検査に関する十分な情報が伝えにくいという欠点がある。また、 団体受付において検査結果が本人以外の検査依頼者に返されているという問題点もある。今後、 郵送検査会社と協力し、 検査精度管理、 受検者に対する検査相談、 陽性者のフォローアップ等の改善のため、 「HIV郵送検査の在り方について」3)等を活用して、 郵送検査をより信頼できる検査とすることが重要である。
参考文献
- 厚生労働省, エイズ動向委員会 令和5年第4四半期報告, 令和6(2024)年3月26日
- 厚生労働省, 後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針, 平成30(2018)年1月18日
- 木村 哲, 厚生労働科学研究費補助金エイズ対策政策研究事業, 「男性同性間のHIV感染予防対策とその介入効果の評価に関する研究」 平成28(2016)年度 総括研究報告書
須藤弘二 加藤眞吾