新潟県におけるサポウイルスと他の下痢症ウイルスの同時検出に向けた取り組み
(IASR Vol. 45 p208-209: 2024年12月号)
ウイルス性下痢症の病原体はサポウイルス(SaV)以外に、ノロウイルス(NoV)、アストロウイルス(AstV)、アデノウイルス(AdV)、ロタウイルス(RV)などが挙げられる。これら複数のウイルスの検索に用いるPCRは、各ウイルスをそれぞれ単項目で測定すると1検体当たりのテスト数が増え、その結果、試薬調製や電気泳動の確認作業量が増加し、判定までに多くの時間が必要となる。当所では以前、上記下痢症ウイルスの検出プライマーを混合したマルチプレックスPCR法を採用していた。
しかし、近年普及してきたreal-time PCRの導入により電気泳動が不要となり、多数の検体をリアルタイムにモニターし、解析することが可能となった。中でもインターカレーター法は、プローブの設計や準備が不要であり、既存のプライマーを用いて容易に行うことができることから、当所では2011年から、感染症発生動向調査および食中毒疑いを除く胃腸炎集団事例検査でインターカレーター法を用いている。この手法は近年の測定機器や検査試薬の性能向上により、反応時間および融解曲線解析時間が短縮され、ルーチンワークとして多数の検体を迅速に処理することが可能となっている。
現在、当所の感染性胃腸炎の検査は田澤らの報告1)に準じて、SaV、NoV、AstV、AdV、RVの5種類のウイルス検索を同時に行っており、必要に応じてパレコウイルス(PeV)やエンテロウイルスを追加している。表に当所で使用しているプライマーを示す。反応試薬は非特異反応が比較的少ないTaKaRaバイオ社のTB Green® Fast qPCR MixとQuantstudio real-time PCRシステムを使用し、1時間程度で結果を得ている。インターカレーター法は非特異反応がみられる場合もあるが、融解曲線分析において陽性対照と検体のTm値が近似する場合は、必要に応じてPCR増幅産物を電気泳動し、判断している。PCR陽性の場合は、PCR増幅産物を精製し、シーケンス解析を行い塩基配列を決定する。得られた塩基配列は、系統樹解析またはオンライン解析ツールにより、遺伝子型を判定している。
図に現行の検査手法を用いて実施した検査結果として、2011~2023年に新潟県で実施した感染症発生動向調査等におけるSaVの検出状況を示す。上記期間中に搬入された感染性胃腸炎の検体数は3,072検体で、うち1,890検体(61.5%)から下痢症ウイルスが検出された。陽性検体のうち132検体(7.0%)からSaVが検出された。検出されたSaV遺伝子型別の割合は、G1.1が39.4%(n=52)で最も多く、次いでG2.1とG2.3がそれぞれ9.8%(n=13)、SaV(型別不能)が8.3%(n=11)、G2.5が3.0%(n=4)、G1.2が1.5%(n=2)、G1.3が0.8%(n=1)の順であった。下痢症ウイルスの同時検索では、複数のウイルスが検出されることがあり、100検体で下痢症ウイルスの混合感染が認められた。そのうち17検体からSaVと他の下痢症ウイルスが同時に検出され、内訳はSaVとPeVが5検体、SaVとAstVおよびSaVとRVがそれぞれ4検体、SaVとAdVが3検体、SaVとNoVが1検体であった。
新潟県内の感染症発生動向調査等において、様々な遺伝子型のSaVが検出されていることが分かった。現在サポウイルス検出に用いているSLV5317/SLV5749プライマーは、特定の遺伝子型の検出ができないことが報告されている6)ことから、今後さらに検出率を向上させるために新たなプライマーを導入し、感染状況把握に努めたい。
参考文献
- 田澤 崇ら, 新潟県保健環境科学研究所年報 第28巻: 73-76, 2013
- Hainian Y, et al., J Virol Methods 114: 37-44, 2003
- Hainian Y, et al., JJA Inf D 78: 699-709, 2004
- Sakon N, et al., J Med Virol 61: 125-131, 2000
- 池田周平ら, 広島県立総合技術研究所保健環境センター研究報告 No.24: 23-26, 2016
- Oka T, et al., Arch Virol 165: 2335-2340, 2020
新潟県保健環境科学研究所
政二香理 高野 結 青木順子 田澤 崇 昆 美也子
新潟大学大学院医歯学総合研究科国際保健学分野
田村 務