わが国における最近の新登録結核患者概要: 2024年「結核の統計」から
わが国における最近の新登録結核患者概要: 2024年「結核の統計」から
(IASR Vol. 46 p49: 2025年3月号) わが国における新登録結核患者の概要
1. 全体の概要
わが国の人口10万対新登録結核患者数は減少を続け, 2021年に人口10万対10未満の結核低まん延状況となり, 2023年には10,096人で, 人口10万対で8.1となっている(図1)。新登録結核患者数の前年比減少率は, 2002年以降2019年まで2.2%から7.5%で推移していた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行が起こった2020年以降2022年まで, 前年比約10%の減少を示したが, その後はほとんど横ばいで1.4%にとどまっている(図1)。
わが国における新登録結核患者数のうち, 15歳未満の小児の届出数は, 2006年以降年間100人未満となり, 2014年以降は29-59人を維持しており, わが国における小児結核の根絶が間近に迫っていると考えられる。
2. 年齢階級別傾向:高齢化の進行
わが国全体の人口の高齢化傾向を反映して, 新登録結核患者においても高齢化が進行しており, 近年における高齢者の占める割合は, 約3分の2が65歳以上, 約半分が75歳以上, 約3分の1が85歳以上となっている(本号2ページ特集図2参照)。高齢者における人口10万対の新登録結核患者数は, 近年全年齢階層において減少傾向を認めており, 新登録結核患者全体に占める高齢患者の割合が大きいことから, 今後も全体の新登録結核患者の減少傾向は続くと推定される。
3. 出身国別の傾向:外国生まれ結核患者の増加
2023年の新登録結核患者10,096人のうち, 出生国が把握されていたのは9,825人(97.3%)で, そのうちの1,619人が外国出生者であり, 2022年の1,214人から405人増加していた。2023年における新登録結核患者のうちの外国出生者割合は16.0%と, 前年の11.9%から大幅に増加している。年齢階級別の外国出生者割合をみると, 20~29歳で最も高く84.8%(884人), 10~19歳では69.6%(71人), 30~39歳は61.6%(334人)を外国出生患者が占めていた(図2)。
外国出生新登録結核患者の出生国で最も多かったのはフィリピン(317人)で, 次いでベトナム(272人), インドネシア(231人), ネパール(229人), ミャンマー(155人), 中国(148人)が続き, 外国出生新登録結核患者数の約84%(1,352人)を占めていた。2023年の外国出生新登録結核患者のうち, 入国から結核診断までの期間が2年以内の者は53.1%を占めており, 入国から結核診断までが5年以内の者は70.5%を占めていた。
まとめ
わが国は, 2021年以降人口10万対の新登録結核患者数が10未満となり, 2023年まで結核低まん延状態を維持している。また, 小児結核については, 根絶を間近にしている状況である。一方, 結核患者における高齢化傾向が進行しているとともに, 外国生まれ結核患者の数と割合については, 特に若年層で増加傾向を認めている。
結核は空気感染を主な感染経路とする慢性呼吸器疾患であるため, その根絶は容易ではない。わが国で結核を根絶するためには, 国内における結核対策を辛抱強く継続・推進する必要があるとともに, 地球全体の結核根絶を目指した対策も同時に強化する必要がある。
参考文献
- 公益財団法人結核予防会, 結核の統計2024, 2024