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本邦における外国生まれ結核患者の疫学

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本邦における外国生まれ結核患者の疫学

(IASR Vol. 46 p50: 2025年3月号)
 

2023年に本邦で届出のあった結核患者数は10,096人であり, うち1,619人は外国生まれであった。本稿ではこれら外国生まれの結核患者について, 時, 場所, 人の事項に分け, 疫学的に概括する。

外国生まれ結核患者数は, 2000年に837人であったが, 2023年には1,619人と増加してきた。図1に年齢階層別外国生まれ結核患者割合の推移を示す。2000年には全年齢で2.4%であったものが, 2023年には16.0%と約7倍となった。特に, 20~29歳の年齢階層では, 2023年には84.8%が外国生まれの患者で占められるようになった。

場 所

図2に都道府県別の全結核患者に占める外国生まれの結核患者の割合の地理的分布を示す。群馬県(38.5%), 福井県(33.3%), 岐阜県(29.0%)などでその割合は高い。

図3に外国生まれ結核患者の出身国を示す。上位はフィリピン(317人), ベトナム(272人), インドネシア(231人), ネパール(229人), ミャンマー(155人), 中国(148人)の順となっている。図4に2023年の外国生まれ結核患者の性・年齢階層別報告数を示す。20代の外国生まれの結核患者数は, 男女それぞれ400名以上と圧倒的に多い。

イソニアジドおよびリファンピシンは, 抗結核薬の中で特に作用が強力な薬剤であり, これら2剤に耐性の結核(多剤耐性結核)は, 治療が長期にわたったり, 副作用の頻度がやや多い薬剤を使用しなければならず, 治療に難渋する。多剤耐性結核については, 日本生まれの結核患者においては2023年に16人(0.4%)であったが, 外国生まれの結核患者においては19人(2.8%)と, 7倍の頻度であった。

結 論

本邦における結核患者は, 特に20代を中心に外国生まれの結核患者が大部分を占める。多剤耐性結核についても, 日本生まれの結核患者ではその割合は極めて低いが, 外国生まれの結核患者では無視しがたい程度の割合を占める。今後, 結核対策の中心は, 外国生まれの患者対策にシフトしていくことになると考えられる。

 
公益財団法人結核予防会結核研究所対策支援部
 太田正樹

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