2023/24および2024/25シーズンのインフルエンザの流行状況―沖縄県

2023/24および2024/25シーズンのインフルエンザの流行状況―沖縄県
(IASR Vol. 46 p216-217: 2025年11月号)
沖縄県における2023/24シーズンのインフルエンザは警報発令に至る流行が夏季および冬季にみられ, 2024/25シーズンのインフルエンザにおいては冬季に警報発令に至る流行がみられた。本稿では2023年第36週~2025年第14週までの2シーズンの流行状況の概要を報告する。
患者発生状況
2022/23シーズンの2023年第30週から増加傾向にあった定点当たり報告数が, 2023/24シーズンの最初の週である2023年第36週に13.4となり注意報発令基準(定点当たりの報告数10.0以上)を超え, 第40週には30.9となり警報発令(定点当たりの報告数30.0以上)に至った(図)。その後は減少に転じ, 第48週に8.2となり警報解除に至った(図)。しかし, 第51週に報告数が11.2となり再び注意報発令, 2024年第3週には32.3となり警報発令に至った。その後は第5週をピークとして減少傾向を示し, 第13週に報告数が8.6となり警報解除に至った(図)。その後, 2023/24シーズン終盤の第31週に報告数が11.6となり, 再び注意報発令に至った。
2023/24シーズンの報告数はいったん減少傾向を示したが, 2024年第35週からは再度増加に転じ, 2024/25シーズンの最初の週である2024年第36週は11.2であった。その後, 第41週(19.1)まで増加が続いた後に減少に転じ, 第45週に7.4となり, 2023/24シーズンから続いた注意報は解除された。しかし, 第50週から報告数は再び増加傾向となり, 第51週には10.4に達し再び注意報発令に至った。その後も報告数は増加し続け, 2025年第1週には37.0に達し, 警報発令に至った。報告数は第4週以降減少し, 第8週には8.7となり警報解除に至った。その後は報告数の減少傾向が続いたが, 第14週まで流行の兆しの指標とされる定点当たり報告数1.0を下回ることはなかった。
病原体検出状況
病原体定点医療機関(小児科3定点, 内科2定点)にてインフルエンザと診断された患者から採取された咽頭ぬぐい液を検査材料とし, real-time RT-PCR法によるインフルエンザの遺伝子検出およびMDCK細胞によるウイルス分離を実施した。
2023/24シーズンは105検体の検査を実施した。101検体(96.2%)でPCR陽性であり, 遺伝子型の内訳はA/H1pdm09亜型45検体, A/H3亜型28検体およびB/Victoria系統28検体であった。これらのうち100検体からウイルスが分離された。また, PCR陰性であった4検体のうち1検体からA/H3亜型インフルエンザウイルスが分離された。
2024/25シーズンは, 2025年第14週までに採取された77検体の検査を実施した。その結果, 75検体(97.4%)でPCR陽性であり, 遺伝子型の内訳はA/H1pdm09亜型57検体, A/H3亜型13検体およびB/Victoria系統5検体であった。これらのうち74検体からウイルスが分離された。また, PCR陰性であった2検体のうち1検体からA/H1pdm09亜型インフルエンザウイルスが分離された。
抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランスにおいて, 2023/24および2024/25シーズンに分離されたA/H1pdm09亜型44株および56株について, ノイラミニダーゼ(NA)遺伝子の変異箇所をreal-time RT-PCR法により調べた結果, 計110株すべてが275Hであった。また, 2024/25シーズン分離A/H1pdm09亜型56株について247位のアミノ酸変異を確認した結果, 247Nが3株, 247Sが53株であった。
まとめ
2023/24シーズンおよび2024/25シーズンは, ともに10月および1月にシーズン2度のピーク形成が認められた。それぞれ前シーズンの7月頃から持続する増加傾向のピークが10月頃に形成された。これら2シーズンに分離されたウイルス株の塩基配列比較を行うことで, インフルエンザウイルスの県内・国内流行動態について検討を始めた。
沖縄県衛生環境研究所多和田早紀 岡峰友恵 長嶺翔太 中村栄文 眞榮城徳之 石津桃子
柿田徹也 久手堅 剛 平良遥乃 高良武俊 喜久里昂哉 照屋盛実
喜屋武向子(現所属:沖縄県保健医療介護部地域保健課) 大西 真
