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2024/25シーズンにおけるインフルエンザに関連した学校等欠席者の動向

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2024/25シーズンにおけるインフルエンザに関連した学校等欠席者の動向

(IASR Vol. 46 p232-233: 2025年11月号)

日本学校保健会が運営している学校等欠席者・感染症情報システムには, システムに参加している保育園を含む学校等から児童および職員の欠席・欠勤数がその理由(症状や診断名など)ごとに毎日入力される。また学校での休業措置(例えば学級閉鎖や学年閉鎖)に関する情報も入力され, これらの情報がシステムを通して教育委員会や保健所など関係機関にリアルタイムに共有されている。2022年度は全国保育園の51.1%, 小学校61.7%, 中学校59.4%, 高等学校71.5%が本システムに参加し, 登録施設数は4万を超えている1)。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時には, 週ごとにCOVID-19による欠席者が集計されて, 厚生労働省(厚労省)新型コロナウイルスアドバイザリーボードで学校におけるCOVID-19の流行インパクトを評価する資料として活用された2)。発生届による報告数を集計する感染症発生動向調査に加えて, 様々な集団において継続かつ統一的に収集している情報を感染症サーベイランスとして活用し, 総合的に感染症リスク評価を実施する重要性は, COVID-19パンデミックにおける公衆衛生の重要な1つの教訓である。

わが国においてインフルエンザは, 例年冬季に流行する明確な季節性を有しており, 2022/23シーズンでの推定受診者数の47.7%を5~14歳が占めるなど, 学童での流行が大きいという特徴がある3)。またインフルエンザに罹患した児の出席停止や学校でのインフルエンザによる出席停止の集積を受けて, 学校医や保健所から技術的助言を受けつつ学校責任者が教育委員会と協議して学級閉鎖や学年閉鎖などの臨時休業をとることは, わが国の季節性インフルエンザ対策の特徴の1つである。

2024/25シーズンのインフルエンザは, 2024年第44週に定点当たり1.0を超えて流行期となり, その後大きく増加して, 2024年第52週には定点当たり報告数が64.4とピークとなった(図上)。2025年第1週は定点当たり報告数は38.8であったが, その後は漸減傾向となり, 2025年第18週に定点当たり1.0を下回った。定点当たり報告数のピーク値は感染症法に基づいてインフルエンザ定点から報告される体制となった1999年以降最も高い数字であり, 厚労省が流行に対応した予防策の徹底や保健・医療体制の確保などの注意喚起をするなどの対応がなされた4)

2024/25シーズンの学校等欠席者・感染症情報に登録されたインフルエンザの人口10万人当たり欠席者数を欠席週ごとにプロットしたものを図下に示す。2024年第51週にピークとなり, 2025年第2週に2024年第52週とほぼ同じレベルの欠席率が報告された。全体でみると, 欠席者のピークは1週早かったこと, そのレベルは2023/24シーズンと同等であったこと, 年明けにも年末と同じレベルの欠席率が観察されたことは発生動向調査に報告されたインフルエンザの動向と異なる。年末年始の冬期休業が欠席率に影響していることを考慮する必要があり, あるいは2024年第52週は冬期休業中のインフルエンザ罹患が欠席率として反映されておらず過小の可能性がある。保育園などの未就学では学校の冬期休業の時期にレベルは低いが欠席率が継続して報告されており, 地域におけるインフルエンザの動向把握として重要であると考えられる。また2025年第2週に未就学の欠席率はピークとなり, 各学校でも高い欠席率が報告され, 学校におけるインフルエンザの流行の継続が考えられた。ところで, 継続という観点でみると, 2023/24シーズンがむしろ長く継続しており, 学校への影響がより長期にあった可能性が考えられた。

学校等欠席者・感染症情報システムを通して, 休業措置の実施状況が把握できるとともに, 保育園から高等学校までの様々なレベルでの欠席者数の推移がほぼリアルタイムで把握できることは, 感染症サーベイランスとしての意義は非常に大きいと考えられ, 本情報を活用した継続的なリスク評価をシーズンにおけるインフルエンザ対策を実施していくことが重要である。

参考文献

  1. 弓倉 整ら, 日本医師会雑誌 153: 68-69, 2024
  2. 滝沢木綿, 神垣太郎, 公衆衛生 87: 500-507, 2023
  3. 国立感染症研究所, 厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部感染症対策課, 今冬のインフルエンザについて(2022/23シーズン)
    https://id-info.jihs.go.jp/diseases/a/influenza/090/fludoko2023.pdf
  4. 厚生労働省, 事務連絡, 今冬のインフルエンザ等の感染拡大に備えた注意喚起について, 令和6(2024)年12月27日
    https://www.mhlw.go.jp/content/001367067.pdf(最終アクセス日2025年9月13日)
  日本学校保健会       
   弓倉 整 嶋田晶子    
  国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所
   感染症サーベイランス研究部 
    神垣太郎 滝沢木綿    
  早稲田大学大学院政治学研究科
   田中優衣         
  国立健康危機管理研究機構臨床研究センター      
   椎野禎一郎        
  国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所
   感染症疫学センター     
    鈴木 基

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