2024年の石川県における手足口病流行について
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2024年の石川県における手足口病流行について
(IASR Vol. 46 p251-252: 2025年12月号)
手足口病は乳幼児を中心として例年夏季に流行がみられる感染症である。感染症発生動向調査における5類感染症小児科定点把握疾患の1つであり, 小児科定点医療機関が週単位で報告を行っている。当県における手足口病の患者報告数は報告年ごとに大きく異なり, 数年おきに大きな流行を繰り返している。コロナ禍の2020~2023年は大きな流行はなかったが, 2024年には, 2019年以来約5年ぶりとなる大きな流行が認められ, 患者報告数は二峰性ピークを示した。そこで, 年齢階級別患者発生状況に着目し, 全国の状況とあわせて解析を行ったので報告する。
患者発生状況
2015~2024年における, 感染症発生動向調査による石川県および全国の手足口病の定点当たり患者報告数の週別推移を図1aに示した。石川県, 全国ともに2015年, 2017年, 2019年は患者報告数が多く, 一峰性ピークを示したが, 2024年には二峰性ピークがみられた。
2024年の二峰性ピークについて, 定点当たり患者報告数1.0を超えた週からピークを迎え, 一度ピークが下がりきった週までを第1流行期, その後再度増加し2回目のピークを迎えたのち, 定点当たり患者報告数1.0を下回る直前までの週を第2流行期とした。石川県の第1流行期は第19~33週, 第2流行期は第34~48週であり, 全国の流行期(第1流行期:第20~33週, 第2流行期:第34~50週)とほぼ同時期であった。また2024年の第1流行期は手足口病が大流行した2015年, 2017年, 2019年の流行期(定点当たり患者報告数1.0を超えた週から定点当たり患者報告数1.0を下回る直前の週まで)と同様の時期であった。
2015~2024年における, 石川県および全国の年齢階級別手足口病患者発生状況を図2に示した。大流行した年に着目し, コロナ禍以前の3年(2015年, 2017年, 2019年)とコロナ禍以降の2024年を比較すると, 石川県, 全国ともにコロナ禍以降の2024年では4歳以上の割合が増加していた。さらに, 2024年の第1流行期, 第2流行期別に年齢階級別患者発生状況をみると(図3), 石川県では第1流行期は3歳未満が半数以上を占めるのに対し, 第2流行期は3歳以上が半数以上を占めており, 全国でも同様の傾向がみられた。
病原体検出状況
2015年1月~2024年12月に, 県内の病原体定点である医療機関にて手足口病と診断された患者から採取され, 当センターへ搬入された咽頭ぬぐい液192検体について, RT-PCR法によりウイルス遺伝子検出を実施した(図1b)。その結果, 2015年, 2017年, 2019年の流行期ではコクサッキーウイルスA6型(CA6)が主に検出されていた。2024年は検査した検体数は少ないものの, 第1流行期に搬入された検体からはCA6, 第2流行期に搬入された検体からはコクサッキーウイルスA16型(CA16)が複数検出されていた。なお, コロナ禍の2020~2022年ではCA16の検出は少なかった。これらの検出状況は全国でも同様の傾向であった1,2,3)。
なお, 石川県において2024年の第1流行期に搬入された検体のうち, CA6が検出されたのは5検体であり, このうち3検体は3歳未満の患者から採取されていた。一方, 第2流行期に搬入された検体のうちCA16が検出されたのは3検体であり, すべて3歳以上の患者から採取された検体であった。
今回の解析により, 2024年の大流行では, コロナ禍以前の大流行時に比べ, 高い年齢層の患者数が増加していた。さらに二峰性ピークを流行期別に解析してみると, 第1流行期に比べ第2流行期において高い年齢層の割合が増加していた。また, 主流な病原体も第1流行期から第2流行期にかけてCA6からCA16に変化していた。このことより, 第1流行期は3歳未満を中心としたCA6の流行であり, コロナ禍以前の大流行年同様の傾向があったが, 第2流行期は, コロナ禍において検出が少なかったCA16が, 例年よりも高い年齢層の, 免疫を持たない感受性者を中心に感染が広がったと考えられた。コロナ禍以降, 様々な感染症において以前と異なる流行が確認されていることから, 今後も引き続き, 検出されるウイルスに加え, 患者の年齢階級別も踏まえた動向を注視していく必要がある。
参考文献
- 国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト, IDWR 2019年第29号
- 国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト, IDWR 2021年第43号
- 国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト, IDWR 2024年第27号
石川県保健環境センター
城座美夏 上田陽子 小橋奈緒
児玉洋江 北川恵美子
