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インフルエンザウイルス流行株 抗原性解析と遺伝子系統樹 2025年 6月 9日

公開日:2025年 6月 9日

インフルエンザウィルス研究センターの画像

国立感染症研究所
インフルエンザ研究センター 第1室
全国地方衛生研究所

流行株抗原性解析

国立感染症研究所(感染研)では、国内で流行するインフルエンザウイルスの性状を把握し、インフルエンザ対策およびワクチン株選定に役立てるため、全国地方衛生研究所(地研)で分離・同定されたウイルス株総数の約10%を無作為に抽出し、解析を行っている。

流行株とワクチン株の抗原性を比較する目的で、フェレット感染血清を用いた赤血球凝集阻止(HI)試験または中和試験による抗原性解析を実施した。

現行の季節性インフルエンザワクチンは、ワクチン原株として選ばれたウイルスを鶏卵で継代して製造している。そのため、継代の間に、ウイルスが鶏卵に馴化することでアミノ酸置換が起こり、抗原性が変化(抗原変異)することがある。その結果、流行株とワクチン製造株の抗原性が一致しなくなる場合があり、世界的に問題となっている。

2024/2025シーズン抗原性解析結果(データ更新日:2025年 6月 9日)

A(H1N1)pdm09(図1)(PDF:240KB)

2025年2月から4月までに分離された国内の流行株について抗原性解析を実施したところ、解析した多くの株が、2024/25シーズンのWHOのワクチン推奨株である細胞分離A/ウィスコンシン/67/2022株および卵分離A/ビクトリア/4897/2022株に対するフェレット感染血清とよく反応した。ワクチン推奨株の細胞および卵分離株の両方の血清に対して反応性が大きく低下した株には、いずれもHAの抗原部位にG155Eのアミノ酸置換が認められた。

2024年9月から2025年1月までに分離された国内および近隣諸国の流行株について抗原性解析を実施したところ、解析した多くの株が、2024/25シーズンのWHOのワクチン推奨株である細胞分離A/ウィスコンシン/67/2022株および卵分離A/ビクトリア/4897/2022株に対するフェレット感染血清とよく反応した。ワクチン推奨株の細胞および卵分離株の両方の血清に対して反応性が大きく低下した株には、いずれもHAの抗原部位にG155Eのアミノ酸置換が認められた。

A(H3N2)(図2)(PDF:263KB)

  • 2024/25シーズンのWHOのワクチン推奨株血清との反応性について:

2025年2月から3月までに分離された国内の流行株について抗原性解析を実施したところ、解析した多くの株は、2024/25シーズンのWHOのワクチン推奨株である細胞分離A/マサチューセッツ/18/2022株と卵分離A/タイ/8/2022株に対するフェレット感染血清と比較的よく反応した。ワクチン推奨株の細胞および卵分離株の両方の血清に対して反応性が大きく低下した株には、HAの抗原部位にN158KまたはK189Rのアミノ酸置換が認められた。

2024年9月から2025年1月までに分離された国内および近隣諸国の流行株について抗原性解析を実施したところ、解析した多くの株は、2024/25シーズンのWHOのワクチン推奨株である細胞分離A/マサチューセッツ/18/2022株と卵分離A/タイ/8/2022株に対するフェレット感染血清と比較的よく反応した。ワクチン推奨株の細胞および卵分離株の両方の血清に対して反応性が大きく低下した株には、HAの抗原部位に共通したアミノ酸置換は認められなかった。

  • 2025/26シーズンのWHOのワクチン推奨株血清との反応性について:

2025年2月から3月までに分離された国内の流行株について抗原性解析を実施したところ、解析した多くの株は、2025/26シーズンのWHOのワクチン推奨株である細胞分離A/ディストリクト オブ コロンビア/27/2023株とはよく反応したが、卵分離A/クロアチア/10136RV/2023株に対するフェレット感染血清との反応性はあまり良くなかった。

2024年9月から2025年1月までに分離された国内および近隣諸国の流行株について抗原性解析を実施したところ、解析した全ての株は、2025/26シーズンのWHOのワクチン推奨株である細胞分離A/ディストリクト オブ コロンビア/27/2023株とはよく反応したが、卵分離A/クロアチア/10136RV/2023株に対するフェレット感染血清とは反応性はあまり良くなかった。

B(ビクトリア系統)(図3)(PDF:324KB)

2025年2月から3月までに分離された国内の流行株について抗原性解析を実施したところ、解析した全ての株が、2024/25シーズンのWHOのワクチン推奨株であるB/オーストリア/1359417/2021(細胞および卵分離株)に対するフェレット感染血清とよく反応した。

2024年9月から2025年1月までに分離された国内および近隣諸国の流行株について抗原性解析を実施したところ、解析した全ての株が、2024/25シーズンのWHOのワクチン推奨株であるB/オーストリア/1359417/2021(細胞および卵分離株)に対するフェレット感染血清とよく反応した。

B(山形系統)

2020年3月以降、自然界で流行している山形系統の株は検出されておらず、解析されていない。

 

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