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JANISデータから見たCREの疫学(2014~2023年)

(IASR Vol. 46 p35-36: 2025年2月号)

厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)の検査部門では, 参加医療機関で実施されたすべての細菌検査データを継続的に収集・集計し, 日本国内の主要な薬剤耐性菌の分離状況を明らかにしている。カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)については, 2014年に試験的な集計が開始され, 2015年から正式なJANISの集計対象となっている。感染症法に基づく感染症発生動向調査とは異なり, 保菌と発症を区別せず, 医療機関で分離されて基準を満たす菌の検査データすべてを集計対象としている点が特徴である。薬剤耐性の判定基準は感染症法に基づく届出基準と同じものを採用し, また集計に際しては30日以内に同一患者から同菌種が検出された場合は削除するなどの重複処理を行っている。

2014~2023年までのJANIS参加医療機関の中でCREの分離された患者数の推移を, 図1に棒グラフで示した。2018年以降の推移に関して, 2019年に9,721人だった患者数は, 2020年に一旦8,644人に減少した。これは, 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染拡大により, 日本の多くの医療機関で細菌検査の実施数が減った影響を受けた結果だと考えられる。その後, CRE分離患者数は, 2021~2023年にかけて増加している。ただし, JANIS参加医療機関は年々増加しており(https://janis.mhlw.go.jp/hospitallist/index.html), その影響を調整するために, CRE分離患者数を検体提出患者の総数で割った「分離率」を算出したところ, 図1の折れ線で示すように2018年以降は0.31-0.33%と横ばいであった。一方, 2014~2017年まで, 分離率は減少していた。ただし, 2015年に関しては, 前年に比べてCRE分離患者数は増加しており, それでも分離率が減少したのは, 分離率の分母である検体提出患者の総数の増加度が, 分子であるCRE分離患者数の増加度よりも大きかったことを示している。これは, JANIS検査部門への参加が医療機関の感染防止対策加算1の要件になり, JANIS検査部門の参加医療機関数が2015年に前年の1.6倍に急増した影響を受けていると考えられる。2016年と2017年は, CRE分離患者数と分離率がどちらも減少しており, JANIS参加医療機関の中で確かにCREが減少したといえる。なお, CREの分離された医療機関の割合については, 2017~2022年までは50%台を推移していたが, 2023年は45.2%と, CREの集計開始以来, 初めて半数以下となった。

なお, CRE分離率は例えば2022年, 2023年とも0.32%であるが, 腸内細菌目細菌の分離された患者の総数を分母とした場合, 分離率は1.16%(2022年), 1.09%(2023年)となる。このように, 分母によって分離率の値と解釈は変化する。

2023年にCREの分離された患者について, 菌種別の内訳を集計した結果を図2に示した(同一患者から複数のCRE菌種が分離している場合はそれぞれをカウントして集計した)。Klebsiella aerogenesが41.1%, Enterobacter cloacaeが29.1%で全体の7割を占め, 続いてKlebsiella pneumoniaeが9.0%, Escherichia coliが4.2%, Enterobacter spp.が3.1%であった。ただし前述の通り, JANIS検査部門のデータでは, カルバペネマーゼ遺伝子保有の有無についての情報は収集していない。

JANISでは, 集計対象医療機関すべてのデータを集計して作成した公開情報に加え, 都道府県別の公開情報(https://janis.mhlw.go.jp/report/kensa_prefectures.html)も作成している。これによって, 都道府県ごとにCREの分離患者数および分離率(分母を検体提出患者の総数としたもの)を知ることができる。2016年からは, 図3に示すように, 分離率の全国での分布と, その中での各都道府県の位置を見てとれる箱ひげ図も作成し, 上記の都道府県別の公開情報のページで公開している(なお, この箱ひげ図は, CREだけでなく, JANISで分離患者数を集計している11種類の「特定の耐性菌」すべてについて作成しており, 図3にはそのうちCREだけを示した)。この箱ひげ図の中には, 全国中央値, 75パーセンタイル, 90パーセンタイル, 最小値, 最大値が記載されており, 図3に示す2023年の場合, 全国中央値は0.30%, 75パーセンタイルは0.41%, 90パーセンタイルは0.45%, 最小値は0.06%, 最大値は0.85%である。90パーセンタイルを超える高い分離率を示す県は6つ存在するが, 分離率の高い都道府県に地域的な偏りはない。都道府県別の分離率の分布に関しては, 薬剤耐性(AMR)ワンヘルスプラットフォームのwebサイト(https://amr-onehealth-platform.ncgm.go.jp/home)で, 日本地図としてグラフィカルに把握することも可能である。これは, 世界保健機関(WHO)の方式で集計したJANISの公開データ(https://id-info.jihs.go.jp/diseases/route/antimicrobial-resistant/010/janis-glass-excel-jp.html)を取り込み, web上で描画したものである。

こうしたJANISの公開情報・データは, JANISが各参加医療機関にフィードバックしている還元情報とあわせて, CREの発生動向を監視するための最も基本的な情報として提供している。様々な場面で活用していただければ幸甚である。

 
国立感染症研究所薬剤耐性研究センター
 矢原耕史 川上小夜子 平林亜希 梶原俊毅 保阪由美子 安齋栄子
 藤村詠美 大木留美 瀧 世志江 奥田マキ 菅井基行

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