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ボツリヌス症

概要

ボツリヌス症は、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)およびその他の一部のClostridium属細菌が産生するボツリヌス神経毒素によって引き起こされる感染症である。発症した場合は致命率が高く、予防と早期治療が重要である。 感染経路と臨床像によって、4つの病型がある。

病原体

ボツリヌス菌が産生するボツリヌス神経毒素により引き起こされる疾患である。ボツリヌス神経毒素により神経伝達物質の放出が抑制され、弛緩性麻痺が引き起こされる。ボツリヌス菌のほかブチリカム菌(C. butyricum)、バラチイ菌(C. baratii)など一部のClostridium属菌でも類似した毒素を産生する菌株がある。

疫学

日本では稀な疾患だが、真空包装食品や瓶詰食品等の摂取による食餌性ボツリヌス症事例や、乳児ボツリヌス症事例が散発的に報告されている。ハチミツの摂取は乳児ボツリヌス症の原因の一つとされる。

感染経路

感染経路は病型ごとに異なる。食餌性ボツリヌス症は毒素で汚染された食品の摂取、乳児ボツリヌス症および成人腸管定着性ボツリヌス症は芽胞の摂取によるが、とくに乳児ボツリヌス症は、ハチミツにしばしば混入しているボツリヌス芽胞を摂取することにより、腸内フローラが未成熟な乳児の腸内でボツリヌス菌芽胞の出芽と毒素産生が起こり、発病する病型である。創傷ボツリヌス症は創傷部位での菌の増殖、医原性ボツリヌス症はボツリヌス毒素製剤の不適切な使用による。

臨床像

潜伏期間は、摂取した毒素量や芽胞量によって異なるため明確ではないが、多くの場合、食餌性ボツリヌス症は数時間から48時間、乳児ボツリヌス症および成人腸管定着性ボツリヌス症は数日から数週間、創傷ボツリヌス症は数日から2週間程度とされる。眼瞼下垂、複視、嚥下困難などの麻痺症状(乳児では、泣き方が弱々しい、哺乳しないなどの活気低下に始まる、また、先行して便秘が認められることが多い)が徐々に進行し、重篤な場合には呼吸筋麻痺による呼吸不全に至る。

病原体診断

患者または、食品からのボツリヌス毒素の検出、または患者からのボツリヌス毒素産生菌の分離・同定による。

治療

呼吸管理などの症状に応じた対症療法、集中治療が必要となる。成人に対しては抗毒素の早期投与が重要となるが、乳児では血清病を避けるため使用しない。創傷型では抗菌薬と外科的治療が行われる。

予防法・ワクチン

個々の食品に表示された保存方法に従うことが重要である。乳児にはハチミツ入りの食品を食べさせないようにすることが重要である。 承認されたワクチンはない。

法的取り扱い

感染症法では四類感染症に定められている。また、食餌性ボツリヌス症の場合には、食品衛生法でも報告対象となっている。

病原体検出マニュアル

関連情報

IASR関連記事

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  •  IASR 21(3),2000【特集】ボツリヌス症 (PDF:9.1MB)
  •  IASR 29(2),2008【特集】ボツリヌス症 2008年1月現在 (PDF:11.1MB)

更新日 (last updated):2025年4月28日

最終確認日(last reviewed):2025年4月28日

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