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5類感染症定点把握疾患移行後のCOVID-19に関する国立感染症研究所実地疫学研究センターでのEpidemic Intelligence活動

公開日:2024年6月28日
(IASR Vol. 45 p95-96: 2024年6月号

国立感染症研究所(感染研)実地疫学研究センター(CFEIR)では、懸念される公衆衛生上の問題に迅速に対応するための人材育成を、実地疫学専門家養成コース(FETP)として、国際的に標準なOn the job training(日常実務)を通じて行っている。CFEIR(FETP含む)の活動として平時から毎日実施しているEpidemic Intelligence(EI)活動の実務では、公式・非公式の複数の情報源から、国内あるいは国外で発生した感染症・食中毒(原因不明の段階を含む)等による公衆衛生上の健康危機事象(感染症発生動向調査として指標に基づき報告された情報を含む)の情報をイベントベースサーベイランス(EBS)1)として探知、追跡監視、評価している。さらに、必要時には関係機関と連携しながら調査・対応、対策に関する提言等の還元を行っている。

2022年1月28日以降、EBSとして年間1,000-1,500件程度の事象を探知してきた()。

2020年1月に国内で初めて確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規患者報告数は従来株に始まり、主な変異株として、2020年12月にアルファ、2021年4月にデルタ、11月にオミクロンが国内で確認され、感染拡大や置き換わりを経ながら増減を繰り返してきた。パンデミック中のEI活動のうち、変異株の出現やその影響と推察される感染性や重症度の変化の兆候を迅速に捉えるべく、国内外の事象の探知と確認、追跡監視、リスク評価、対応を実施してきた2)。COVID-19に関するイベントの定量的な監視は感染研の役割として行われ、週報として還元された3)

EI活動あるいは自治体とのコミュニケーションにより探知した新たな変異株の出現、小児の患者数の増加等の際に、CFEIR(FETP含む)が自治体とともに事例の特徴や疫学情報等の整理を目的に実地疫学調査を実施することもあった4-6)

感染症法上の5類感染症の定点把握疾患となって以降、COVID-19については、国内の新規患者報告数、検査陽性割合、入院患者数、下水サーベイランス、国内外のゲノムサーベイランス、クラスター発生状況、などの複数の情報源を用いた解析を行い、通常と異なる重症度や発生パターンはないか、拡大していく恐れはないか等、事象のリスク評価と追跡監視を現在も継続している。

CFEIR(FETP含む)により探知され、その後の情報収集や分析が検討された国内・国外のCOVID-19に関するEBS件数/総数(全体に占める割合%)としては、2022年は360/1,052(34%)、2023年は197/1,436(14%)であり、年々探知情報数や、その割合は減少傾向にある()。ただし5類感染症の定点把握疾患移行後も、クラスターの発生や新規患者報告数の急増がメディアなどにより伝えられることがあり、国内EBSとして、2023年6月(埼玉県、福岡県、沖縄県)、2023年7月(北海道、福岡県)、2023年9月(東京都、埼玉県、岡山県、石川県)等に探知された事例については、事象の確認や分析、追跡監視が行われた。これらのクラスターの特徴は、全国で最も早く大きな流行を認めて医療施設のひっ迫が伝えられた沖縄県の事例を除き、すべて学校でのクラスター発生であった。なお、沖縄県の事例は、自治体の要請により、CFEIR(FETP含む)による実地疫学調査支援に至った。沖縄県内の医療施設のひっ迫状況や背景に関する情報を収集し、保健行政や医療機関におけるCOVID-19対策の構築に寄与するための解析が行われた7)。他にも、公表や事例調査まではいかないものの、クラスター発生時に事例単位での状況の確認や、感染管理面など必要に応じた支援態勢を継続している自治体はあり、CFEIRが技術的な助言等を実施することもあった。

EBSにおける事例単位のリスク評価は、一般的にはpossibility(発生あるいは拡大する可能性)とimpact(主に重症度)を勘案する8)。重要な点として、これらの評価を感染症法上等の類型にかかわらず、発生している状況に基づき、事例単位で行っていくことで、新興感染症(変異株含む)等、の萌芽を捉え、感染拡大や重症者発生を最小限に抑える等、の対応をより早く確実なものにしていくことにつながるということである。

EI活動を通し、リスク評価、新しい知見の集積、そして対応・対策へつなげていくことが重要である。今後もEI活動を継続し、公衆衛生に寄与していきたい。各自治体においてもEI能力を有する専門家の育成・配置の必要性が高まっており9)、FETPにおけるリスク評価実務のノウハウの蓄積や、実務研修の強化を通して貢献していけるものと考えられる。

謝辞: 日頃より感染症発生動向調査に御協力いただいている医療機関や各自治体の皆様に深謝いたします。

参考文献

  1. WHO, A Guide to Establishing Event-based Surveillance
    https://www.who.int/publications/i/item/9789290613213(外部サイトにリンクします)
  2. 国立感染症研究所, SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)について(第9報)
  3. 国立感染症研究所, 新型コロナウイルス感染症サーベイランス速報・週報: 発生動向の状況把握
  4. 平良勝也ら, IASR 43: 37-40, 2022
  5. 国立感染症研究所, SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)の潜伏期間の推定: 暫定報告
  6. 国立感染症研究所, 新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例に関する積極的疫学調査(第二報)
  7. 椎木創一ら, IASR 44: 185-186, 2023
  8. European Centre for Disease Prevention and Control, Operational tool on rapid risk assessment methodology, 2019
    https://www.ecdc.europa.eu/sites/default/files/documents/operational-tool-rapid-risk-assessment-methodolgy-ecdc-2019.pdf(外部サイトにリンクします)(PDF:441KB)
  9. 角野文彦ら, 「自治体における新型コロナウイルス感染症対策に関する調査研究」報告書, 2023
    http://www.jpha.or.jp/sub/pdf/menu04_2/menu04_2_r04_01.pdf(外部サイトにリンクします)(PDF:11.0 MB)

国立感染症研究所

実地疫学研究センター
砂川富正 塚田敬子 池上千晶 加藤博史 福住宗久 小林祐介
中下愛実 黒須一見 山岸拓也 八幡裕一郎 土橋酉紀 島田智恵

実地疫学専門家養成コース(FETP)一同

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