カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(carbapenem-resistant Enterobacterales, CRE)病原体サーベイランス, 2022年
公開日:2024年7月31日
(IASR Vol. 45 p129-130: 2024年7月号)
カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)病原体サーベイランスは、 通知(健感発0328第4号、 2017年3月28日)に基づき実施されている。本稿では、 検体採取日が2022年1月1日~12月31日として病原体検出情報システムに登録された株のうち、 保菌例などCRE感染症届出患者以外からの分離株である旨が明記された株を除く1,426株(2024年3月8日現在)の概要を示す。1,426株のうち、 1,391株(97.5%)には発生動向調査届出患者由来であることを示す発生動向報告IDの記載があり、 CRE感染症届出患者1,376名由来と考えられた。残る35株(2.5%)にもCRE感染症届出患者分離株が含まれうるが、 その数は不明である。
1,426株の分離検体は、 尿(n=410, 28.8%)、 血液・髄液(n=355, 24.9%)、 呼吸器検体(n=240, 16.8%)、 腹腔内検体(n=142, 10.0%)、 皮膚・軟部組織検体(n=106, 7.4%)、 穿刺液(n=65, 4.6%)で、 菌種は、 Klebsiella aerogenes(n=568, 39.8%)、 Enterobacter cloacae complex(n=415, 29.1%)、 Klebsiella pneumoniae(n=137, 9.6%)、 Escherichia coli(n=76, 5.3%)、 Serratia marcescens(n=61, 4.3%)、 Citrobacter freundii(n=31, 2.2%)およびKlebsiella oxytoca(n=31, 2.2%)の順に多く、 検体の種類および上位5菌種の順は2017年以降変わらない。
表に、 通知に基づいて地方衛生研究所等で実施された各検査数と陽性数を示す。1,426株のうち、 いずれかのカルバペネマーゼ遺伝子陽性株は212株(14.9%)であった。この割合は、 2017年のCRE病原体サーベイランス開始以降、 最も低い値となった。カルバペネマーゼ遺伝子陽性212株におけるカルバペネマーゼ遺伝子型内訳は、 IMP型173株(81.6%)、 NDM型33株(15.6%)、 KPC型2株(0.9%)、 OXA-48型2株(0.9%)であった。その他の遺伝子型として、 GES型2株(塩基配列決定による遺伝子型別報告内訳GES-24, n=2)が報告された。
IMP型陽性173株の菌種内訳は、 全国ではE. cloacae complex(n=88, 50.9%)、 K. pneumoniae(n=35, 20.2%)、 E. coli(n=24, 13.9%)、 K. oxytoca(n=9, 5.2%)の順に多かった。ブロック別では、 関東甲信静と九州沖縄はE. cloacae complex(68.3%, 43/63および62.1%、 18/29)が、 近畿はE. coli(36.8%, 14/38)が最も多かった。IMP型陽性株の62.4%にあたる108株(20道府県)はカルバペネマーゼ遺伝子の塩基配列決定がなされた。IMP-1は66株(15道府県)で、 すべての地域より報告があった。IMP-6は39株(6道府県)であり、 うち4株が中国四国、 27株が近畿、 7株が東海北陸で、 1株は北海道東北新潟からの報告であった。その他の型として関東甲信静よりIMP-19、 中国四国よりIMP-11、 九州沖縄よりIMP-4がそれぞれ1株ずつ報告された。
図にIMP型陽性株の菌種別報告数およびCRE病原体報告数に対するIMP型陽性株の割合を年別に示す。2019年以降、 IMP型陽性株の割合は減少傾向がみられている。菌種別にみると、 全国のIMP型陽性株に占めるE. cloacae complexの割合は、 2017~2021年まで30-40%であったが1-5)、 2022年に初めて50%を超えた。E. cloacae complexのIMP型陽性株数は、 年による差があり、 2021年が最も少なかったが2022年は再び増加した。一方、 K. pneumoniaeとE. coliはそれぞれ2019年、 2018年をピークに減少傾向がみられており、 いずれも2022年は最も少ない検出数となった。2019年以降のCRE病原体報告数に占めるIMP型陽性株の割合の減少の一因として、 IMP型陽性のK. pneumoniaeおよびE. coliの減少が考えられる。
海外型カルバペネマーゼ遺伝子であるNDM型、 KPC型、 OXA-48型陽性株は合わせて37株であり、 全報告株数(n=1,426)の2.6%を占めた。37株は37名より分離され、 うち34名(91.9%)は海外渡航歴のない患者であった。海外渡航歴のない患者から分離された34株の遺伝子型内訳は、 NDM型31株(NDM-1, n=19; NDM-5, n=9; NDM-7, n=3)、 KPC型2株(KPC-2, n=2)、 OXA-48型1株であった。菌種内訳は、 NDM-1はK. oxytoca 12株、 K. pneumoniae 3株、 E. cloacae complex 2株、 C. freundii 1株、 E. coli 1株、 NDM-5はE. coli 8株、 Citrobacter koseri 1株、 NDM-7はC. freundii 1株、 K. oxytoca 1株、 E. cloacae complex 1株、 KPC-2はK. pneumoniae 1株およびE. cloacae complex 1株、 OXA-48型はE. coli 1株であった。海外渡航歴のある患者からは、 NDM-5陽性E. coli、 NDM-7陽性E. coli、 OXA-48型陽性K. pneumoniaeが1株ずつ報告された。
病原体検出情報システムに登録された1,426株を、 2022年のCRE感染症の発生動向調査届出(患者報告)数2,015例(感染症発生動向調査事業年報)で除した値を報告率とすると70.8%であり、 2020年以降横ばい状態が続いている。2022年のブロック別報告率は北海道東北新潟80.1%、 関東甲信静70.5%、 東海北陸32.2%、 近畿78.1%、 中国四国85.8%、 九州沖縄76.5%であった。
CRE病原体サーベイランス開始から7年が経過し、 着実にデータが蓄積されてきた。IMP陽性株の割合や菌種内訳に変化がみられており、 カルバペネマーゼ遺伝子保有状況やその推移を正確に把握するために、 引き続き全国的かつ継続的なサーベイランス実施が必要である。
参考文献
- IASR 39: 162-163, 2018
- IASR 40: 157-158, 2019
- IASR 42: 123-124, 2021
- IASR 43: 215-216, 2022
- IASR 44: 130-131, 2023
国立感染症研究所
薬剤耐性研究センター
感染症疫学センター
全国地方衛生研究所